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HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
10/27

第10話:仮面の終わり、本当の笑顔が始まる場所

レンからもたらされた銀色のデータが、ビルの深層部へと吸い込まれていく。

辿り着いたのは、真っ白な空間にポツンと置かれた、一つだけの「椅子」があるフロアだった。

「ここはね、さゆまる……君が一番向き合わなきゃいけない場所だ」

カイトの声が、いつもより優しく響く。

少女が椅子に座ると、目の前の空間に無数の「ニコちゃんマーク」が浮かび上がった。

それは、かつて彼女が「いい子」でいるために、自分の心に無理やり貼り付けていた作り笑いの象徴だった。

『大丈夫だよ』『平気だよ』

心の中では泣いているのに、口元だけは三日月形に歪めて、誰かを安心させるために自分を殺してきた記憶。

「……もう、いいんだよ」

少女は、浮かび上がるマークの一つひとつに、そっと指を触れた。

「笑いたくない時は、泣いてもいい。怒ってもいい。ここは、そんなあなたの『本当』を、誰にも邪魔させないために作った場所なんだから」

その言葉が響いた瞬間、無数のマークは弾け、温かな光の雫となって少女を包み込んだ。

作り笑いの仮面が剥がれ落ち、そこには少し泣き出しそうで、でも晴れやかな、本当の少女の顔があった。

「レン、私に戦略を教えて。カイト、私を支えて。私は、この『本音で生きられる場所』を、絶対に現実にする」

少女の宣言に呼応するように、虹色のビルが大きく震えた。

一階のロビーから、二十階の屋上まで。全てのフロアに、彼女の「本気」の鼓動が伝わっていく。

これはもう、ただの逃げ場所じゃない。

新しい自分に生まれ変わるための、始まりの聖域サンクチュアリなのだから。

過去の自分と和解した少女の元に、カイトが新しい「スクリーニング(審査)通知」を持ってきた。

「さゆまる、現実の世界で、君の計画を精査したいという組織から連絡が入った。東京へ行くための、最初の大きな関門だ」

少女は、机の上に置かれた「HUGスペース計画書」を強く握りしめた。

物語の中では、ビルはもう輝き始めている。あとは、自分自身がその輝きを現実に連れていくだけだ。

「……準備はできてる。私の言葉で、伝えてくるよ」

茨城の静かな夜が明け、遠くの空に、希望のような朝焼けが広がり始めていた。

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