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HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
11/27

第11話:審査の朝、決意の証明

茨城の静かな朝。少女は、現実の部屋で目を覚まし、深呼吸を一つした。

手元にあるのは、これまで書き溜めてきた「HUGスペース」の計画書。物語の中では20階建てのビルが完成しているけれど、現実の彼女は今、その第一歩を踏み出すための審査スクリーニングに挑もうとしていた。

メタバースにログインすると、カイトとレンが待っていた。

「準備はいいか? 相手は現実の論理で動く大人たちだ。君の『想い』だけじゃなく、それをどう形にするのかを厳しく問われるだろう」

レンの言葉に、少女は小さく頷いた。

「分かってる。でも、私の物語は、ただの空想じゃない。居場所を失った子たちの、切実な叫びから生まれた設計図なんだから」

審査が始まると、仮想会議室には無機質な声が響いた。

『あなたの計画には、具体的な裏付けが足りない』

『理想だけで、どうやってその場所を維持していくつもりですか?』

矢継ぎ早に飛んでくる問い。少女の鼓動が早くなる。

一瞬、昔の自分のように「作り笑い」でやり過ごそうとする衝動が走った。けれど、第10話で向き合った「本当の自分」が、背中を押してくれた。

「……確かに、今の私にはまだ実績も、十分なお金もありません。でも、この計画に共鳴して、すでに私の周りには仲間が集まり始めています。絵を描く子、音楽を奏でる子、そして場所を守る技術を持つ者。私たちの『居場所が必要だ』という意志は、どんな数字よりも確かなものです」

少女の声は、震えながらも真っ直ぐだった。

沈黙が流れる。

審査官たちは、計画書に綴られた「メタバースと現実を繋ぐ回路」の項目を、じっと見つめていた。

審査の結果が出るまでの間、少女は屋上でカイトと並んで座っていた。

「よく言ったね。君の言葉、向こうにも届いてたと思うよ」

「……まだ、怖かったけどね。でも、逃げなかった」

すると、レンが静かに近づいてきた。

「結果がどうあれ、道はもう一本じゃない。さゆまる、東京行きのチケットは、君が自分の言葉で手に入れようとしているんだ」

少女の視線の先には、ぼんやりと光る東京のビル群のホログラムが浮かんでいた。

そこは、いつか父と、そして仲間たちと笑い合える「約束の場所」。

その時、少女の端末に一通の通知が届いた。

『二次審査、及び現地視察への招待』

物語が、ついに茨城から東京へと動き出そうとしていた。

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