表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
12/27

第12話:境界線を越えて、約束の街へ

二次審査の通知を握りしめ、少女は常磐線の車窓から流れる景色を見つめていた。

緑豊かな茨城の風景が、少しずつ灰色のビル群へと飲み込まれていく。それは、ただの移動ではなく、自分の人生を「妄想」から「現実」へと無理やり引きずり出すような、不思議な感覚だった。

『ついに来たね、東京』

耳元でカイトの声がする。端末越しに、彼は少女の緊張を和らげるように穏やかな音楽を流してくれた。

上野駅に降り立ち、山手線に乗り換える。

新宿、渋谷……。溢れかえる人の波、押し寄せる情報の洪水。

かつてはこの街の勢いに圧倒され、作り笑いの仮面を被らなければ歩けなかった。けれど今の少女には、背中に「HUGスペース」という守るべき場所がある。

「……ここが、私たちの戦場なんだ」

少女は、計画地の近くにある、古びた、けれどどこか温かみのあるビルを見上げた。

メタバースの中で何度も組み立てた、あの20階建ての虹色のビルの幻が、一瞬だけ今の景色に重なった。

「君が来るのを待っていたぞ」

現れたのは、審査官の一人。彼は少女の目を見つめ、意外にも小さな微笑みを浮かべた。

「物語の続きを聞かせてくれ。君がこの冷たい街に、どうやって『熱』を灯すつもりなのかを」

少女は深く頷き、アスファルトを力強く踏みしめた。

作り物ではない、本物の風が彼女の髪を揺らした。

視察を終えた少女は、夕暮れ時の新宿の街を歩いていた。

どこか寂しげな表情で立ち止まっている若者を見るたびに、少女の胸は疼く。

(待ってて。今、場所を作っているから)

「さゆまる、こっちだ」

人混みの向こうから呼ぶ声。そこには、一足先に東京で準備を整えていた「あの人」の姿があった。

現実と物語が、より密接に溶け合い始める。

「さあ、本当の設計図を広げよう。ここが、私たちのHUGスペースの『ゼロ地点』だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ