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HUGスペース物語  作者: さゆまる
妄想編
13/27

第13話:ゼロ地点の誓い、独りじゃない歩み

夕暮れの新宿、巨大なモニターが放つ光の渦の中で、少女は立ち止まっていた。

かつての自分なら、この街の孤独に飲み込まれていたかもしれない。けれど、今は違う。

「さゆまる、こっちだよ」

雑踏をすり抜けて現れたのは、メタバースでずっと隣にいたカイト、そしてレンの「現実リアルの姿」だった。

画面越しではない、初めて交わす視線。そこには、物語の中で育んできた確かな信頼があった。

「驚いた? 私たちも、君の覚悟に当てられちゃってね。茨城で頑張る君を見ていたら、じっとしていられなかったんだ」

カイトが笑う。レンは少し照れくさそうに、けれど真剣な顔で分厚い資料を差し出した。

「ここが、君が見つけた『ゼロ地点』だ。これからこのビルを、あの虹色の設計図通りに塗り替えていく」

少女は、提示された場所をじっと見つめた。

誰かに用意された道じゃない。お父さんや家族の力でもない。

自分の手で物語を書き始め、自分の足で東京まで辿り着き、そして自分の言葉で引き寄せた仲間たち。

「……ありがとう。私、本当にこの街に、居場所を作れるんだね」

少女の瞳から、一粒の涙がこぼれ、アスファルトに落ちた。

それは「弱さ」ではなく、現実を変え始めた「強さ」の証だった。

三人で歩き出した新宿の夜。

高層ビルの隙間から見える月は、茨城で見ていたものと同じ、優しい光を放っていた。

拠点となる場所が決まり、いよいよ具体的な「入居」の準備が始まる。

「さゆまる、まずはネット上の仲間たちに伝えよう。物語が現実になったことを」

少女はスマートフォンを取り出し、震える指で投稿画面を開いた。

『HUGスペース、東京に誕生します。居場所がないと感じている全ての人へ――』

その投稿が、かつての少女と同じように暗闇の中にいた誰かの画面を、静かに照らし始めようとしていた。

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