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第23話:五月の風、動き出す巨塔(HUG)
カレンダーが5月に変わった瞬間、さゆまるの視界はさらに大きく開けた。
4月までの「自分をさらけ出す戦い」を経て、今、HUGスペースは具体的な形となって、東京の空にそびえ立とうとしている。
「さゆまる、いよいよ5月だね。スクリーニングの結果を待つ間、僕らは次のステップに進むよ」
カイトが差し出したのは、HUGビルの内部構造のホログラムだった。
妄想だなんて言わせない。そこには、24時間絶望を食い止めるためのコールセンターと、命をロボットに引き継ぐための最新ラボが、精密に描かれていた。
「ねえ、カイト。5月のうちに、あの『エベレスト・トレーニング』の一般公開も始めたいの」
さゆまるは、リハビリ用の重い靴を履き直しながら言った。
自分が頂上を目指す姿をリアルタイムで共有することで、五月病や、なんとなく心に影を抱えている人たちに、「一歩踏み出す力」を届けたい。
障害があることも、内職で一人戦ってきたことも、すべてはこの「5月」という新しい始まりのための伏線だった。
少女は、爽やかな風が吹き抜ける窓を開け、遠く新宿のビル群を見据える。
「さあ、5月の物語を始めよう。ここからは、誰も見たことがないスピードで進むから」




