第15話:本当の私。~お披露目会という名の告白~
新宿の拠点で迎えた、初めての夜。
少女――さゆまるは、配信画面の向こう側にいるかもしれない「誰か」に向けて、深く頭を下げた。
物語のキャラクターとしての「少女」ではなく、一人の人間としての、本当の告白を始めるために。
「今まで、物語としてHUGスペースを描いてきました。でも、今日はお話しさせてください。この場所を作ろうとしている、私自身のことを」
さゆまるは、茨城の施設で内職をしながら過ごしてきた日々、そして自身が抱える「障害」のことを、一言ずつ丁寧に言葉にした。
「私には障害があります。できないことも多いし、ニコちゃんマークを心に貼り付けて、大丈夫なふりをして生きた時期もありました。でも、そんな私だからこそ、この場所が必要だったんです。完璧じゃないからこそ、誰かの弱さに寄り添いたい……。それが、HUGスペースの本当の始まりなんです」
画面上の反応(数字)は、相変わらず静かなままかもしれない。
けれど、さゆまるの心は、かつてないほど軽くなっていた。
障害も、過去の痛みも、すべてをさらけ出した今、この「ビル」は妄想の産物ではなく、彼女の人生そのものになったのだ。
「私は、この場所を本気で現実にします。いつか皆さんに、本当の笑顔で会える日まで、私は書き続けます」
話し終えた彼女の目には、東京の夜景がこれまでで一番鮮やかに映っていた。
1週間分の物語は、ここで一度幕を閉じる。
けれど、さゆまるの「本当の戦い」は、ここから加速していく。




