かあさまにあいたい。
幼児編、これにて最終話になります。
お付き合いをありがとうございます。
いつもならまぶしい朝日も、夜ふかししすぎたわが家ぞくの目には入らず、いつもよりおねぼうさんな目覚めとなりました。
ねむたい目をこすりながら、おとぅと、おにぃと朝ごはんをもそもそと食べました。今日はだれ1人口をひらかず、わが家ではありえないほどしずかなごはんです。
お日さまが、ま上に登るころ、ルキウスさまのおむかえが来ました。
いつもの荷台付き馬車ではなく、4人の人がてんがい付きのベットのようなものを肩にかかえてはこんでます!人力車?です!そして、てんがいの布のすきまから、ひょっこりとルキウスさまがお顔をだしました。
「迎えにきたよ」
とひらりとベットからとびおりると、プリューラに向かってにかけよってこられました。
ま、まさに王子さまそのものです。かっこいいです!
プリューラはルキウスさまに見とれていましたが、ルキウスさまはプリューラをみてニコリとほほえまれると、スッとおとぅの前に行きました。
「お父上、それではプリューラを頂いていきます。これまで大切に育てて来られたであろう彼女を、これから僕が大切にまもります。そして、必ず幸せにします。」
「……あぁ……。」
おとぅはブスっとした顔で、にがにがしくへんじをしました。たいどがわるいです。
ルキウスさまのりりしさと比べてしまうと、みっともないのでやめてほしいです!
でも、おにぃたちはつぎつぎと泣きだしました
「うっうっ。頼んだよ」
「せっしゃもついて行きたい」
「ぐぬぬ、プリューラばっかりずるい!兄である俺も行きたい!」
なんて、言ってます。
そして、ルキウスさまは苦笑いをかくしながら、やさしく『うんうん』とうなづきながら、おにぃたちに「かしこまりました」とか、「ぜひおいでください」とか、お返事をしています。
ルキウスさまには、おにぃたちまで大切にしてもらって、かんしゃ、かんしゃです。
一とおりあいさつがおわると、ルキウスさまは
「それじゃあ、行こうか?」
と、プリューラに手をのばしてくれました。
「はい!」
とルキウスさまと手をつなぎ、人力車とでも言うべきそれにのるよう、うながされました。
が、おにぃたちが全員ついてきます。
さすがに全員はのれません。むりです。むりだと思います。
ので、ルキウスさまとプリューラと、おとぅとおにぃと、人力車の4人の人と、ごえいの方々と、とぼとぼとそれぞれ歩いて行くことにしました。
行き先はかあさまのお墓にです。
最後のオネダリとして、お願いしたのです。
かあさまのお墓は、ちょっと歩くけど、小高い丘にあり、けしきがばつぐんの野原にあります。
そう、ルキウスさまと初めて会った場所です。
ルキウスさまとは、もっと前からお会いしていた気もしますが、あの時あの場所にいなければ、ルキウスさまとはお会いできなかったかもしれないとしみじみです。
お墓の前までくると、みんなたてひざになり、思い思いのあいさつをかあさまにつたえます。
プリューラもおにぃたちに負けじとつたえます。
「かぁさま、プリューラは、ルキウスさまのお嫁さんになります!お嫁さんになれることは、とっても幸せなことです。だから、かあさまもがんばって、お星さまになってくださいね。」
それを聞いてか、ルキウスさまが、プリューラの横にじんとり、たてひざになっておいのりをしてくれました。
「プリューラの母上さま、僕はプリューラをローマに連れて行きます。必ず幸せにします。ので、天空からどうか見守りください。」
「はい、プリューラは必ず幸せになります。だからどうかかぁさま……。お星さまになって、プリューラたちを見守ってくださ……。」
とその時、カタカタと小さくお墓が揺れました。
「プリューラ!」
と、ルキウスさまはまたプリューラの上におおいかぶさりました。
でも、今日はお墓がカタカタゆれただけです。
そのゆれは、じめんからゆれているようで……
「おとぅ……。」
「ん?なんだ?」
「もしかして、かぁさまは、お星さまになれなかったですか?」
「なんだ?どうしてそう思った?」
「だって、お墓の下から、なにかが出てくるように、カタカタお墓がゆれたです」
「そんな、まさか……」
おにぃたちもザワザワとなにかを言っています。
「かぁさま、お星さまになれなくて、帰ってこようとしてますか!?」
「馬鹿だなぁ、プリューラは。かぁさまはとっくにし……モゴモゴ」
おにぃがなにか言いかけて、それを別のおにぃがあわてて口をふさぎました。
プリューラは、いっしょうけんめい、いっしょうけんめいかんがえてます。
もし、かぁさまがお星さまになれなかったら。
もし、帰ってくるのなら。
お出むかえを、プリューラはしたいです!
かぁさまにもう一度、『ぎゅっ』てしてもらって、お話とお歌を聞かせてもらって、それから、それから……!!
気がつくと、プリューラの目からおおつぶのなみだがぽろりぽろりと落ちていました。
「プリューラ……」
ルキウスさまが、心配そうにプリューラの顔をのぞきこんでいます。
でも、プリューラは、ルキウスさまのお顔が見られません。
頭の中が、かぁさまのことでいっぱいです。
「……」
「……」
ことばが、でません。
そんなプリューラたちを、おにぃたちも見守っています。
「プリューラ?母様に挨拶がすんだのなら、そろそろ行かないと。皆様お待ちだよ。」
と1番上のプリムスにぃが言いました。ですが、プリューラはそれに答えられません。
他のおにぃたちも、思い思いのことをなにか言っているきがしますが、プリューラには聞こえません。
その時、ルキウスさまが口を開きました
「プリューラは、僕のこと、好き?」
「はい!もちろんです」
「良かった。僕もプリューラが大好きだよ。」
「プリューラだって、大、大、大好きです!」
「うん。じゃあ、僕と、必ず結婚してくれる?」
「はい!もちろんです!プリューラは、ルキウスさまと結婚したいです!」
「うん。約束、したもんね。」
「はい、やくそく、やくそくです!」
「分かった。安心したよ。」
「はい、あんしんしてください。プリューラは、ルキウスさまが大好きなので、ルキウスさまと結婚するのです!」
「そうだね」
「そのとおりです!」
「じゃあ……。」
「……」
「今回は、僕1人でローマに帰るよ」
「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」
「プリューラは、母君のお出迎えをしたいんだもんね?だから、今回は僕1人でローマに帰るよ。」
「……ルキウスさま」
「うん。それでね?必ず迎えに来るから。」
「ルキウスさま……。」
「その時は、絶対プリューラをローマに連れて帰るよ。それでいい?」
「はい……。はい!」
「うん。いい返事だね。」
「はい!」
「僕もね、僕のかあさまに、会えるものなら会ってみたいから、プリューラの気持ちが分かるんだ。だから、今日はプリューラを連れていかない。もし、ちゃんとプリューラのかあさまにまた会えたら、めいっぱい甘えて、次は僕とローマに行く覚悟を決めておいてね」
「はい……!」
プリューラも、ルキウスさまも、おおつぶのなみだをボタボタ落としながら、だきしめあいました。
「僕たちは、もう二度と会えない訳じゃない。この先の人生を、ずっとずっと一緒に歩んで行くんだから、たかだか1ヶ月、2ヶ月会えなくても、僕は我慢が出来る。だから、プリューラも浮気しないで、ちゃんと僕の迎えを待っていてね」
「プリューラはうわきしません!大好きなのは、ルキウスさま、だけです!!」
「うん。知ってる」
そういうと、ルキウスさまはなみだでぐしゃぐしゃになった顔をぬぐうと、さびしさをかくすようにほほえんで、プリューラのオデコにキスしてくれました。
「約束。大好きだよ、プリューラ。」
そういうと、ルキウスさまはかあさまのお墓にもう一度顔をむけ、しずかになにかをねがうと、すっと立ち上がりました。そして、プリューラに背中をむけたまま、その場を立ち去ろうとしました。
その時
「あ、じゃあ俺がプリューラの代わりにローマに行く!」
とプリューラの一個上のセクストゥスにぃが、自分をゆびさしながら、はいっ!はいっ!と手をあげました。
「なんてったって、俺はルキウスの兄上になる男だからな!見た目だって、プリューラにそっくりだし、プリューラに代わって、ローマを下見してきてやるぜ!」
と、嬉しそうにルキウスさまの肩を抱きました。
セクストゥスにぃよりも、ルキウスさまの方が背が高いので、ルキウスさまは中ごしです。
「は、はぁ……???」
「それじゃ、行こうかルキウス!みんな、またなー♪」
「「「「「「「………………。」」」」」」」
あっという間の出来事に、ツッコミふざいのまま、ルキウスさまとセクストゥスにぃはてんがい付きベットの人力車にのりこみ、お供の方々や荷馬車と合流し、イザローマへとたびだったのでした。
プリューラは、なんだかくやしいなぁという気持ちと、かぁさまのおむかえができるといううれしい気持ちと、とてもふくざつなきもちでしたが、ひとまずおとぅたちと、自分の家に戻ったのでした。
だって、ルキウスさまのおうちは、もう誰もいない、荷物もない、もぬけのからです。
それに、ちょっとまてばルキウスさまがお迎えに来てくれて、今度こそ一緒にローマに行くのだと、この時はのんきに思っていたのでした。
誰だってあんなことが起こって、もうルキウスさまに会えなくなるなんて、思ってもいなかったのです。
次回、エピローグへとつづきます。
最終回作業すみません汗




