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こちら銀河連邦 特異事象対策室!  作者: 左岸
第一話 出動!問題だらけの宇宙警察官?
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004

 サクリファの大地に、一人の女が静かに佇んでいた。

 今の時刻は、現地の時間でいう「夜」に該当するのだろう。天球は深い暗闇に閉ざされていた。もっとも、常に異様なほど分厚い雲に包まれているこの惑星においては、昼間であっても太陽の光は遮られ、薄暗い黄昏のような光景が広がっているに過ぎないのだが。


 そんな永久の夜闇の中、彼女の足元に広がる大地そのものが、淡く幻想的な光を放っていた。それはもちろん、近代的な都市に見られる人工の照明などではない。サクリファの地表にどこまでも群生する特殊な発光苔が、眩い生命の光を周囲へと放射しているのだ。吹き抜ける夜風がその光の胞子をさらい、まるで無数の蛍が乱舞するように、光の粒子を虚空へと舞い上がらせていく。


「レヴィアラルス」


 静寂を破るように背後から声を掛けられ、女は静かに振り返った。

 大地を輝かせる青白い光が、彼女の横顔を厳かに照らし出す。


「長老様、このような時間の夜風は、お体に障りますよ」

「はは。それは、ここで一人佇んでいるお前も同じだろう」


 レヴィアラルスは、歩み寄る老いた長老に向けて、優しく微笑みかけた。しかし、その美しい顔には、どこか拭い去れない深い憂いの影が張り付いているようにも感じられる。


「また、星読みをしていたのかね?」

「はい。今夜はいつもよりも雲の切れ間が大きいようですから。星たちの瞬きが、よく見えますわ」

「……我が星の命たるアルパを、そこに感じることは出来たかね」


 レヴィアラルスは、その問いに対して答えに窮したかのように、小さく首を傾げて、ただ曖昧に微笑むことしかできなかった。

 昔から、この不自由な空を見上げることは好きだった。果てのない宇宙そらの星々を眺め、その冷厳で清らかな輝きに純粋に胸を躍らせていた子供の頃が、今では無性に懐かしい。世界に対する無邪気な信頼だけで生きられる時間というのは、なんと、かけがえのないものだったのだろう。レヴィアラルスは今夜、冷たい風に吹かれながら改めてその事実を痛感していた。


 長老は、彼女の微かな変化を見逃さず、自身も同じように少し憂いを帯びた苦い笑みを返した。

 酷な質問をしてしまったな、と長老は内心で悔いた。そう、本当は彼女に聞くまでもない事だったのだ。


「……あの、遥か高き空から現れたという『預言者』は、本物だと思うかね?」


 二人がしばらく沈黙したまま、微かに発光する夜空を眺めたあと、長老が重い口を開くようにして問いかけた。


「さあ。私のような未熟な者には、どうでしょう。……ただ、もしもあれが本物の救い主であったならどんなにいいだろう、とは、不遜ながら思ってしまいますけれど」

「私もだ。この老い先短い身であっても、そうあってくれたら良いと、つい奇跡を願ってしまうよ」

「ふふ。若い子たちは、あの壮大な預言にすっかり夢中のようですけれどね。何かに心を奪われ、夢中になれるものがあるというのは、いつの時代だって素晴らしいものですわ。たとえそれが、泡沫の一時の幻影だとしても」

「……では、水鏡に、何らかの反応があったのだね?」

「ええ。もうすぐです。答えを持つ者が、この地に現れます」


 レヴィアラルスは、再び顔を上げて紫色の空を見上げた。

 厚い雲の裂け目から時折覗く異星の星々は、どこまでも冷たく、そして美しかった。吹き抜ける風も、今夜はいつもよりも優しく肌を撫でていくように感じられる。まるで、彼女を慰めてくれるかのように。


 そして、その星々の輝きの隙間を、光学的な歪みを伴った「何か」が音もなく通り抜けるのを、彼女の鋭敏な感覚は確かに捉えていた。

 この時ばかりは、自分の感覚がもう少し劣っていればよかったのに、と願わずにはいられなかった。


 来る。あの分厚い雲を割って、もう一つの空の来訪者が、この世界に降り立ってしまう。

 あれは決して神が遣わした奇跡の使いなどではないと告げる――終わりの使者が。


 ◇


「ん……なんだ?」


 ドクトル・ザインは、手の中で弄んでいた赤い結晶が不意に眩く爆ぜるように瞬き、自らの脳髄へと直接流し込んできた映像に、思わず動揺した声を漏らした。


 空の果て。大気圏外の冷たい真空の宇宙から、この場所に誰かが急速に接近している? 馬鹿な。ここは銀河連邦が厳重に隔離しているはずの、手出し無用の保護観察惑星ではないのか。ザインは不審げに周囲の暗がりを見回し、もう一度その結晶を肉厚な掌で強く握り締めた。指の隙間から、禍々しい赤き燐光がボロボロとこぼれ落ちる。その姿は、さながら旧時代の忌まわしい魔法使いのようでもあった。


「……間違い無い。何かが、来る。この大気圏へ降り立つ。二人……か? 衣服の形状は、この惑星の原住民どもに似せてあるが……」


 ぶつぶつと独り言を吐き捨てながら目を閉じ、ザインは眉間に深いしわを刻み込んだ。脳裏に明滅する不鮮明な映像を強引に読み解こうと、彼は全神経を集中させる。その狂信的な姿は、古臭い神話の「預言者」そのものだった。


 連邦の猟犬どもか? まさか、そんな迅速に俺の足取りを掴めるはずが。ザインはなおも必死に結晶から脳へ伝播する超空間的なビジョンを解析しようとしたが、ノイズが走り、それ以上の微細な情報は遮断された。

 薄く目を開ける。彼の額からは、冷や汗が幾筋も顎のラインへと流れ落ちていた。


「クソッ。思ったよりも時間がねえな」


 ザインは赤い結晶を乱暴に木製のテーブルへと放り出すと、椅子の背もたれに深く身体を預け、荒い息を吐き捨てた。


 連邦警察の執拗な追跡を受け、自らが駆るスペースシップの駆動系が致命的な不調をきたし、ついに年貢の納め時かと絶望しながら強行不時着したのが、この陰気な惑星サクリファだった。

 シップの自動自己修復リペアモードが完了するまで、現地の未開人どもに見つからぬよう、この星の地下深くにある古代の遺構に身を隠した時――偶然掘り当てたのが、この不気味に発光する赤い結晶だったのだ。


 単なる高価なエネルギー宝石の類かと思って触れてみれば、この鉱物はあろうことか、俺の脳のニューロンに直接干渉して未知の映像を出力しやがった。「なんだこれ!」と最初は恐怖のあまり引き剥がそうとしたが、それが「数時間後に発生する未来の光景」だと理解したとき、ザインの脳髄には強烈な歓喜が走った。こいつは使える。最高の武器になる、と。


「まあ、いい。来るなら来てみやがれ、連邦のクソ野郎共め。この絶対的な予知能力さえあれば、貴様らのマニュアル通りの行動なぞ、何一つ怖くはねえ」


 昏い、そして歪んだ野望を孕んだ笑い声を冷酷な隠れ家の中に響かせながら、ザインは傍らのグラスを掴んで喉を鳴らした。

 合成酒を飲み慣れた俺の舌にはいささか上品すぎる味わいだが、悪くない。この惑星の果実から作った、ワインに該当する代物か。くだらねえ神や予言とやらを盲信している引きこもりの作にしちゃあ、上等すぎる出来だ。

 ザインは下品に口角を吊り上げながら、迫り来る猟犬たちをいかに迎撃してやるか、そのプランを脳内で組み立て始めていた。


 ◇


 ステルスモードでサクリファの大地へと降下した時、ギルダスもガルドも、思わず地上の光景に息を呑んだ。


「すげえ。地面そのものが光ってるぞ」

「サクリファの大地には自ら光を発する苔が群生していると連邦の記録にあります。現地時間で夜に該当する時間帯に、最も強く発光するようです」

「自然物のわりにゃ、やけに規則正しく法則性があるような群生の仕方してねえか?」


 ガルドとアダムの会話を聞きながら、ギルダスはしばし眼下の光景に見入っていた。なんて綺麗なんだ。もし、万が一にでも、あの完璧で美しいモモさんをこんな幻想的な場所に連れてくることが出来たら、さぞ素敵なデートになるんじゃなかろうか。ギルダスは任務直前だというのに、そんな腑抜けた夢想を脳内で繰り広げていた。しかし、そうでもして現実逃避しなければやっていられなかった。エーテル兵装をすべて機械的にロックされた無防備な状態で、凶悪なA級指名手配犯が潜伏しているかもしれない未開の文明保護観察惑星に降りねばならないのだから。


「周囲に人工建造物や生命体の姿はないな。アダム、このまま遮蔽降下してくれ」

「了解。接地シーケンスに入ります」

「しかし、あの場所に降りるのか? それにしてもガルドの言う通り、あの苔の広がり方には不自然な規則性があるな。まるで宇宙船の誘導灯みたいだ」


 ギルダスは目を細め、光る大地を凝視しながら言った。

 彼が視線を送る先の大地には、発光苔が一定のインターバルと鋭い直線を描いて群生しており、さながら夜闇の滑走路を静かに導くスペースポートの誘導灯そのもののように配置されていた。


「まあ、実際に降りてみなきゃ何もわかんねえだろ。それより大気の状態はどうだ? アダム。地球人と大差ない外見の奴らが住んでる星なら、俺たちにとってもそんなに心配する必要ねえだろ?」

「そのとおりです、ガルド。大気分析の結果、連邦所属の地球人、および獣人種をはじめとする各惑星出身の捜査官へ悪影響を及ぼす毒性成分は検出されませんでした。酸素濃度も最適値。防護ヘルメットの着用は必要ありません」

「よかったよかった! あの圧迫感のあるヘルメットだけは、耳が窮屈でやってられねえからな」


 お前はヘルメットで視界を制限されて大人しくしてるくらいがちょうどいいんだがな、とギルダスは毒づきながら、マテリアル・プリンターから出力された現地偽装用の衣装の準備を進める。

 アダムが用意したのは、現地の文明レベルに合わせた、ゆとりのある厚手の布地で織られた民族衣装のような衣服だった。そして、足元を未知の砂に取られないためか、意外にも靴は頑丈な革のブーツのような履物だった。ギルダスは三十パーセントに出力を制限されたインテグレート・スキンの上から、それらを丁寧に身に着けていく。そして最後に、夜風や砂塵を避けるためなのだろう、長い遮光マントを深く羽織った。なんだか旧時代の映画に登場するスターになった気分だとギルダスは一人ごちる。


「なんだよ、その顔は」

「……どろぼうみたいだぞ、お前」

「うるせえな! お前こそ、歴史劇に出てくる売れない三流役者みたいだぞ、ギル」


 不意に隣に視線をやると、同じく現地の衣服を無理やり身体に巻き付けたガルドがいた。

 元々の筋骨隆々とした巨体と黒い毛皮の上から、何重にも不慣れな布地を纏ったガルドの姿は、どう取り繕っても滑稽という言葉以外に表現しようがなかった。


『アーティファクト回収用の、特殊隔離シールドポットを忘れてはいけませんよ、二人とも』

「分かってる。こいつの中に放り込んじまえば、位相空間を狂わせるアーティファクトもただの不気味な結晶として安全に隔離できるんだろ?」

「俺たちの任務は大抵の場合、その前に現物が暴走して破壊せざるを得なくなるがな」

『それが最大の問題なのですよ。あなたたちは任務成功率自体は高いものの、物証の「回収率」が極めて低いと上層部から評価されているのです。今後の銀河の安全のためにも、回収可能なアーティファクトは極めて貴重な超科学の研究資源なのですからね』

「わーった、わかったから! 善処するぜ、うん、善処善処」


 ガルドはアダムの説教を右の耳から左の耳へと受け流しながら、銀色に鈍く輝く金属製の筒を手に取り、腰のベルトあたりに無造作にぶら下げた。


「よし、偽装も装備の点検も完了したな。サクリファの地に降り立つぞ。アダム、お前はそのまま惑星の静止軌道上で待機だ。あらゆるセンサーに対するステルスモードは最大出力を維持しろ。密輸ブローカーの仲間がいつ周辺宙域に増援としてやってくるか分からんからな」


 ギルダスは、シップのハッチ越しに迫り来る紫色の夜空と大地を、もう一度見据えた。

 自らの意志で技術進化の時計を凍結させた、引きこもりの惑星。一体、ここにはどんな因習と秘密が眠っているのだろう。地表を埋め尽くす神秘的な発光苔に静かに問い掛けても、虚空を舞う光の粒子は、当然ながら何の答えも返してはくれなかった。



 実際に踏みしめるサクリファの大地は、不思議な感触だった。

 群生する発光苔のクッション性のためか、足裏に伝わってくる砂の感触は驚くほどに柔らかい。周囲を見やれば、自然が作り出したと思われる巨大な岩石群が幾重にもそびえ立っている。全く人の手が入っているようには見えないが、現地人が生活を営む都市は、まだここから相当に遠いということだろうか。


 考えても仕方ないな、とギルダスは思考を切り替え、振り返ってステルス状態のアダムへと手を上げた。アダムはそれを無言の合図として受け取り、エーテルスラスターの光さえ極限まで隠蔽したまま、音もなく紫色の空へと舞い上がっていった。

 惑星軌道へと静かに戻っていくアダムに向けて、ガルドは無駄に白い歯を見せて親指を立て、ニッと笑う。


「おい、何をしてるんだ?」

「いいや、べつによ」


 ギルダスはガルドの妙に馴れ馴れしい様子に気付いて声をかけたが、ガルドはあからさまにしらばっくれた。

 おおかた、俺の個人クレジットで購入したデータカードの映画を「暇つぶしに楽しんでくれ」とでもアダムに合図していたのだろう。気付かないフリをしてやっているとはいえ、勝手に自分の資産がエンタメ消費に回されているのはやはり納得がいかない。こいつなりの「AIの友達への善意」を無碍にするわけにもいかないのだが、やるなら自分のなけなしのクレジットでやって欲しいものだ。もしかして、毎月の莫大な食費のせいで、こいつの口座は常にブラックホール並みのゼロ状態なのだろうか? この大食漢の獣人なら十分にありえるな、とギルダスは内心でため息をついた。


「はじめまして、連邦の人?」


 不意に背後の岩陰から涼やかな声が響き、ギルダスとガルドは弾かれたようにその場を振り返った。先程まで、全周囲センサーにも肉眼にも、確かに誰もいなかったはずだというのに。


「心配しなくてもいいわ。あなた達のような空からの来訪者がここにやってくるのは、決して初めてではないの。私はレヴィアラルス。この惑星の、現在の指導者みたいなものよ。といっても、部族間の意見をまとめる調整役と言った方が正確だと思うけれど」

「……何故、ステルス降下した俺達の正確な位置がわかった?」

「ふふ。この足元の明かり、やけに規則正しく並んでいるでしょう? あなた達の乗る船が、夜闇でも安全に降りてきやすいように、私たちが人工培養して配置したものなのよ。こうして道標を作っておけば、大抵の場合、空からの船はこのあたりに降りてきてくれるから」

「本当に誘導灯だったのか……。それにしても、自然物の発光苔をそこまで自在に人工培養して制御できるとはな」


 ギルダスは足元の光のラインを見つめ直しながら呟いた。

 植物の遺伝子レベルでの人工培養と生態制御が可能であるならば、この星のバイオテクノロジーの文明レベルは、連邦の言う「未開」などという段階をとうに超越しているはずだ。


「おい、お嬢さん。俺達は連邦警察の最新鋭のステルス……つまり、姿も電波も完全に隠して降りてきたはずだぜ」


 ガルドが犬特有の低い唸り声を混ぜながら、警戒を露わにして言った。

 アダムの電磁・光学ステルスモードの波形を見破るセンサーが存在するとしたら、この星には極めて高度な物理文明が隠蔽されているか、あるいはこの現住種族そのものに未知の特異能力があるかのいずれかだ。


「そうね。そういった世界の仕組みも含めて、お話しした方が良さそうね。私たちの街へ行きましょう。案内するわ」

「街っていったって、この辺りには不毛な岩壁と砂しかないが……」


 ギルダスの当然の当惑に対して、「皆、最初はそのように驚くわ」とレヴィアラルスは小さく、どこか自嘲気味に笑いながら言った。


 綺麗な人だな、とギルダスは素直に思った。

 大地の微かな青白い光に照らされた彼女の透き通った肌と、長く美しい金糸の髪。地球人に酷似した外見をしているというのに、圧倒的な「異星の美」という印象を植え付けてくる。

 地球人と決定的に違う所があるとすれば、彼女の四肢や顔の輪郭に沿って、幾筋もの美しい蒼いタトゥーのような、あるいは発光組織のような模様が精密に描かれていることだった。それが彼女の佇まいに、さらに神秘的な雰囲気を纏わせている。


 レヴィアラルスが迷いのない足取りで垂直な岩壁の方へと歩いていくのを、ギルダスとガルドは互いに視線を交わし、最大級の警戒を維持しつつも、困惑を隠せないままその後ろ姿についていった。


 そして巨大な岩壁のある一角に辿り着くと、レヴィアラルスは無造作にその細い手を硬質な岩肌にあてた。すると、彼女の細い手首に嵌められていた金属製の腕輪が淡くパルス状に発光し、硬固な岩壁の一部が、物質の位相を変えたかのように音もなく巨大な空洞へと変化したのだ。その空洞の表面ともいうべき境界部分は、まるで大気圧を維持するための薄いエネルギー膜のようなもので覆われているように見えた。


「ホログラムによる環境偽装か……? いや、分子構造そのものを透過させているのか? こんな大掛かりな仕掛けがただの入口とはな」

「サクリファの外の世界は年中、激しい風が吹き荒れているから、私たちはこの岩石群の内部や、広大な地下空洞に都市を作って暮らしているの。この腕輪は、隔壁の分子結合を緩めて扉を開く為の鍵ね。それと――」


 レヴィアラルスは二人に静かに振り向くと、その精緻な腕輪をみせながら、美しい目を細めて微笑んだ。


「これは、あなた達の言語を理解するための翻訳機にもなっているわ。だから、あなた達の耳にある翻訳ピアスの指向性出力、最大から通常レベルにまで下げても平気よ。私たちの耳にも、ちゃんとあなたの言葉が届いているから」


 もはや訳が分からない、といった様子で、呆然としたギルダスとガルドは無意識に右耳のピアスへと手をやり、言われた通りに出力を下げた。

 一体、この惑星の本当の文明レベルはどうなっているのだろうか? これほどの空間変調技術やバイオテクノロジーを実用化しているのなら、とっくの昔に自力で宇宙進出スペース・エイジを遂げて、連邦の主要セクターに名を連ねていておかしくない筈なのだ。


 そんな宇宙警察の若者二人の困惑をよそに、レヴィアラルスは先に歩いて半透明の膜をくぐり、岩壁の奥へと入っていった。

 やはり、来てしまった。いつだって、外の世界からやってくる科学という名の光は無慈悲だ。冷厳な数式が導き出す未来の結果に対して、自分たちの祈りや願いが入り込む余地など最初から残されてはいない。

 彼女はすべてを諦めたような、ひどく静かな笑みを唇にこぼしつつ、一歩一歩、自らの愛する地下の街へと歩み去って行った。

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