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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第9話 味の種類を決めていくのは

 ジェラート屋『シルキー』のジェラートには『温泉水』が使用されている。アイスクリームの一種であるジェラートだが、乳製品以外にも『水』が大事とされていた。


 そのまま投入するレシピもあれば、『氷』にして使用する方法もある。すると、温泉の結晶のようなものが浮かび上がって風味以外に独特の食感が生み出されているのだ。


 そして、その日その日の味の種類を決めるのは店長の我孫子拓馬だけでなく、相棒のもふもふAI『サック』も加わっている。AIなので食事は不可能だが、情報提供として天気や気分などでの『味わい』を拓馬に教えてくれることは可能。


 それは、開業してから二年目の今日も変わらない出来事だ。


 人員は結局増やさず、利益のほとんどをサックの購入費に使ったローンに当てているので……赤字ではないが、店の家賃と自分の給料分くらいしかまだまだ賄えない。それなら、でスタッフを雇おうにも人件費で頭を抱える自分が目に浮かぶのが拓馬の悪い癖だ。


 だから、せめてローンの目処が立ってからにしようと自分を律している。



「明日の天気は……くもりのち、晴れか」

『気温は27℃まで上がる予報だね? 塩ミルクは二ケース仕込む?』

「うちの定番が一番組み合わせとして多いからね。それは採用」



 次に、果物関連は仕入れた材料で残っているものを確認。その日の営業と片付けが終わってから厨房に移動し、朝確認はしても改めてストックしている材料は再確認するのを大事にしていた。


 生の食材を扱うことが多いので、特に売れる初夏から夏場にかけては食中毒に気を付けている。冬場の方が食中毒にうるさいとされているが、売れ行きを考えると夏場の方が圧倒的に上だ。まだ開業して若い店舗なので、売れ行きのグラフをデータで確認しても一年目と二年目はだいたい同じだった。


 ホットドリンクくらい出せれば違うかもしれないが、機材購入以上に提供が間に合わない。それでも食べに来てくれる客がいるだけで、十分有難いと思うしかないのだ。


 それなので、夏の今は稼ぎに稼いで、次の季節への研究データを集めなくてはいけない。



『チョコチップ、ダブルチョコ』

「それもマスト」

『果物はブルーベリーパイ?』

「ブルーベリーの季節だしね? ……在庫は、あるな。ちょっと熟成が進んでいる」

『今から下準備しとく?』

「頼んだ」



 仕込みによっては早朝から取り掛かるだけでは間に合わないので、前日に仕込むのも普通だ。その手順をサックが力加減以外でここまでスムーズに言い出せるようになったのは……拓馬や関係者の助言と育成のお陰だろう。ときどき失敗はするが、まだ許せる範囲になってきている。



『パインは人気だから、明日かな?』

「キウイは日によって左右されるし……まだ二日くらいもつから、明日はパス」

『ケーキ系はどーするぅ? レアチーズケーキだとブルーベリーパイと被るし』

「ん~……ラズベリーが残っているから、それで試作してみるとか?」

『ありあり! いいと思う。ジャムにしたら、甘酸っぱさが増すと思うし~』

「じゃ、その試作は俺がやってみる」

『は~い』



 だいたい十から十五くらいの種類をケースに並べられるようにはなったが。AI込みとはいえ、ほとんどひとりで仕込むのだから三十が近くなると体力的に少し堪えるようになってきた。ときどきもみほぐし屋に行ったりするが、利き手が少し使いすぎだと注意されるので……そういうときは、自宅にも引いた商店街名物の『温泉』を湯舟に張って堪能するまで。


 サックは人工毛でも水には少し弱いので、その時間はご飯タイムもとい、充電時間に当てている。



「……うん。砂糖は少し多めにしたから」



 手元に集中し、ラズベリージャムの砂糖を加減して入れ……ほんの少し味見。酸味が強く、甘味が少し控えめになった。これをレアチーズケーキ風に味付けしたクリームに直接入れたりはしない。専用のミキシングマシーンでジェラート状になってから少しずつ投入していくのだ。



『クランチ用のタルト生地持ってきたよ~』

「ありがと」



 これまでのレシピと比較したうえで、少し付け合わせる食材のチョイスが絶妙なのだ。最初は何度か失敗しても、ここ半年ではその失敗もほとんどない。そろそろ出来上がったジェラートを少し器に盛り付け、仕上げに受け取ったクランチも振りかけてみた。



『可愛い見た目~』

「いちごと似てるけど……うん。これは風味が面白い」



 少しクセのある甘酸っぱさを感じるが、レアチーズケーキをクリームのベースにしているので……その独特のクセを落ち着かせてくれるようだ。ラズベリーの味に慣れていない人には温泉水の味と思わせてしまいそうだが、これはいつもの試食のスプーン用にしようと保管することに決めた。


 変わり種が定番になることはままあるが、選んでくれるのは訪れる客が決めていく。拓馬たちは求める商品をどれだけ提供できるか……販売者として、日々意気込みながらも努めていくのだ。


 そして、明日から夏休み期間のはじまり。売り出したラズベリーのレアチーズケーキが意外に好評だとはこのとき知るよしもなかった。


次回はまた明日〜

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