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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第48話 その一歩の一歩①(師匠の場合)

「そうか、ようやくか」



 元職場だった、『更紗』のオーナーに報告をしたところ……何故か、肩の荷が下りたかのような対応をされてしまった。


 余程、拓馬は他人から心配されるような態度を取っていたのかと思ったが違うらしい。周りからみて、ハラハラドキドキしていたのは自分たちだったと、蓮実に言われたからだ。



「そんな、わかりやすかったですか? 俺たちは」

「芽衣ちゃんの表情や仕草で察してやれとか、何度言いたかったか! ま、腹くくってんなら、これから先のこともちゃんと考えろよ?」

「……精進します」

「まずは、そんでいい」



 人生の先輩とも言える、蓮実の言葉は少し重みを感じた。芽衣との交際はまだ始まったばかりでも、一歩一歩距離を縮めて共に歩んでいく速度はゆるやかにしていきたい。


 今までの軽い恋愛のように、自然消滅にはさせたくないのだ。本気で向き合いたい相手だからこそ、慎重にいきたい。


 ちょっとしたいざこざで別れるなんてこともしたくなかった。それくらいに、拓馬は芽衣への思慕を大切にしたい気持ちでいる。


 蓮実に打ち明けたのも、経営者としての先輩込みで相談に乗ってもらいたかったからだ。先に芽衣への気持ちがバレていたということもあるが。



「生半可な気持ちで、彼女との繋がりを持ったつもりはありません」

「だな? お前、ヘタレだし」

「……そこは、俺も自覚してます」

「だったら、大学卒業したら嫁さんにもらいな?」

「よ、嫁!? ……まずは、店の正社員になるとかしか」

「……変なとこで仕事ひと筋か?」

「……お互いに」



 芽衣自身、拓馬への気持ちはそれこそ拓馬と同時期くらいから抱えていたらしいが。


 告げるかどうか、それなりに悩んだ結果……拓馬から、告げてくれたことで相当安心したそう。


 就職活動も、一応するとは言っていたが第一希望は変わらず『シルキー』であると強く言ってくれた。


 だから、お互いの気持ちは恋愛もだが、店の存続を希望しているのもある。



「……変なとこで、お互いにズレてねぇか?」

「……仕事好きと言いますか」

「まあ、お前は『更紗』に居た頃から、好意的に見ていた客からのアピールもスルーしてたもんな」

「……いましたっけ??」

「自覚しとらんかったのか! ……それはまあ、いいとして」

「??」

「秀一にもな。彼女が出来たんだ」

「……それは、おめでたいですね」

「しかも、バイトのひとりとだ」

「……似てますね」

「結局、若い連中はどうも似た感じが多いんだよ。とにかく、大事にしてやんなさい」

「はい」



 秀一とは今後もまだ微妙な距離感があるかもしれないが、それもゆっくりと修復していけばいい。


 人付き合いに上手い下手があって当然だ。それがどうしようもないことだってある。


 今はまだそれでいい。距離を縮めるのは一歩一歩でいいのだ。無理煮詰めようとして、修復も難しいところまでいったら本末転倒でしかない。


 拓馬は『更紗』から出る前に、ちらっと厨房を覗いてみたが。秀一が少し年若い女性スタッフの指導をしているところだった。雰囲気的に彼女が蓮実の言っていた秀一の相手かもしれない。とても穏やかでいい感じだった。


 もう、この喫茶店には拓馬のいる場所はない。だけど、それでいいと言える安心感は持てた。


 自分のいる場所は、あのジェラート屋そのものだから。そこに、いるサックと芽衣がいれば百人力と言っていいくらい心強いもの。


 店を出たあとに、誰もいないことを確認してから……拓馬は大きく深呼吸して、心を落ち着かせ。


 一歩、歩き出した。

次回は月曜日〜

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