第47話『新作ジェラート』③(塩キャラメル編)
浮足立っていると言ってもいい。それくらい、拓馬は機嫌が良かった。良過ぎると豪語してもいいだろう。
念願の恋が成就したのだから、多少どころか上機嫌になるのも仕方がない。
かといって、業務に支障をきたすことをしてはいけない。
拓馬は、今日もまた新作への試行錯誤を繰り返していた。
最近気づいたのだが、アイスなのに作っていなかったフレーバーがあることに気づいたのだ。
「キャラメルは入れていたけど、『塩キャラメル』はまだだったな……」
定番のひとつに、『塩ミルク』を入れていたからうっかりしていたかもしれない。
甘さのの中に、ほんの少しの塩気。少しずつ春が引っ込んで夏の顔を出し始めてきたここ最近……ジェラートの売れ行きも絶好調なので、特に塩ミルクの注文は多かった。
なら、少しでもフレーバーを増やそうと挑戦してみたのである。
「ん! キャラメルはいつもの味ですけど。ちょこっと、濃さが増している気がします」
今日も講義が終わってから出勤してくれた芽衣に試食してもらった。気に入ったのか、器の中のジェラートをぺろりと完食してくれたのである。
「組み合わせだと、チョコ系とケンカしないとは思うんだけど」
「いいと思います! むしろ、私はほしいです」
「少し食べてみる?」
「いいんですか?」
『こーら、店長。まるごとは食べさせちゃダメだよ~?』
「……わかってるって」
つい、恋人になりたてだから甘やかしてしまいがちになっている。サックに注意してもらわないと、どうもあれやこれやとしてしまい……結果、いちゃいちゃこそしないでも甘々な空気になってしまっている。
まったく、恋とは恐ろしくもあり、輝かしいものでもある。
とりあえず、少量で組み合わせを確認したところ。たしかに、チョコレートの味を引き立たせている組み合わせになったので問題ない。
さっそくだが、仕入れの調整をしてから新商品として売り出すことにした。
「こーんにちは~!!」
夕方になる前に、わらわらとやってきた小学生たちがいた。出会いたてはコロコロ小さいイメージだった晴海は成長期なこともあって、会うたびにどんどん大きくなっていく気がする。
今日も小遣いを手に、わざわざジェラートを購入しにきてくれたのだろう。早速、今日からの新作を伝えてみることにした。
「今日からの新作があるよ? 塩キャラメルっていうんだ」
「キャラメルに塩?」
変声期の始まった、少しハスキーな声で疑問に思う様子は可愛らしい。しかし、知らないフレーバーだというのなら、おまけのひと口スプーンにしてあげた方がいいかもしれなかった。
「塩ミルクとは違うけど、ちょっと濃い味のキャラメルって感じかな? ひと口の方にする?」
「ううん! 今日はチョコチップとそれにします!!」
「かしこまりました」
芽衣が会計をしている間にコーンで頼まれたので盛り付け、ひと口スプーンには比較させてあげるのに塩ミルクにしてやった。
「ありがとうございます!」
「次お願いしまーす」
晴海のキラキラした笑顔を見ると、こっちもつられて笑いそうになってしまう。すぐあとに、よくいっしょに来てくれる同級生らしい子どもたちが順番に注文してくれる。彼らの会計が終わったあと、ベンチで待っていた晴海に彼らがこんな質問をしていた。
「はるちゃん、将来の夢の作文書いたー?」
「書いたー。僕、ここみたいなアイス屋さんで働きたいんだ~」
「え~? ここの店長さんに言ったら?」
「それはダメだよ。小学生はアルバイト出来ないもん」
なんともこしょばゆい内容だったが、それくらい経営維持できるように頑張ります……と、内心、決意を固めることが出来たのだった。
それに、芽衣との将来も『シルキー』は大きな役割を持っているのだから店長としてきちんと努めなくてはいけない。
ただ自営業をやりたかった、というだけでは済まないのだ。
次回は金曜日〜




