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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第43話 想いが交差する

 きっかけは、ひとつの『出来事』だった。



「……すみません」

「いや、大した怪我じゃなくてよかったけど」



 サックも見ていたが、芽衣がストッカーに指を挟んでしまい……内出血を起こしてしまったのだ。


 盛大ほどではないが、それなりに青白く皮膚の内側が変色して腫れた。まだバイトの業務時間ではあるが、商店街にある皮膚科に行っておいでと拓馬に言われたため……大人しく、退勤していった。


 サックと拓馬だけで、閉店まで業務は進めたが芽衣無しなだけでかなり労力がかかったのか、拓馬はシャッターを閉めたと同時に大きく息を吐いた。芽衣からの連絡も見てないので、心配なのもあったらしい。


 SNSで確認したところ、利き手のため一週間は労働禁止と医師に言われたのだそう。つまり、最低一週間は芽衣が来る前のように業務を進めなくてはいけないことになった。



『……大変なことになったね』

「……俺が、気を付けていれば」

『後悔しても仕方ないよ、店長。とりあえず、最後尾のプラカードだけは無しにする?』

「それくらいしか、対策は取れないな」



 代わりに、三角コーンに案内板をつけたものを行列の最後あたりに置くくらいはした。


 翌日から通常どおりに業務を始めたが、やはり芽衣がいないだけでジェラートを売るだけでなく会計も追い付かない。


 常連からも、芽衣は休みかと聞かれればそうだと答えたが、少し寂しそうな表情をされた。逆に、拓馬の表情が曇っている以上に落ち込んでいたからだ。恋する少女に怪我をさせたのはほかでもない拓馬自身だから、余計に堪えているのだろう。


 なんとかしなくては、と言っても。


 たった一週間、されど一週間。


 それに、芽衣は一応学生が本業。


 土日も難しいだろうし、待つしかないのだが……拓馬の元気を回復するには芽衣の笑顔と元気が必要。これにはどうしたものか、とサックは演算処理でいろいろ回答を弾き出してみたが、無難なのしか出てこない。


 すれ違いの、片想い同士。


 こんなにも離れていては、拓馬の感情のコントロールがうまくいくかどうかなんて、結果が目に見えている。拓馬自身も休んだ方がいいだろうと答えは出てきても……仕入れの関係で、仕込みもあるし定休日以外はそうもいかない。


 定休日になると、ぼんやりしたまま一日が過ぎるとか酷い状況だった。


 これはもう、芽衣の力が必要だ。


 その答えしか弾き出せなかったので、サックは買い出しついでに専用のスマホで芽衣にメッセージを送った。



『店長が元気ないんだ。今調子はどう?』

『腫れは引いたし、色も落ち着いたよ。明後日くらいには行けるかな?』



 などと、好感触な返答をもらえた。


 だが、拓馬に言うと、有頂天になるか逆に心配性が増すかもしれないのですぐには言わない。


 買い出しも終えてから、芽衣に何回か連絡を取ってシフトの変更を受理したのだが。


 途中で、久しぶりの相手と対面することになった。



「あら? サックくん」

『芽衣ちゃんのお母さん!』



 芽衣の母親も買い出しなのか、自転車を引きながら歩いていた。籠には荷物がパンパンのマイバックがふたつも入っている。



「今日はお買い物?」

『シルキーが定休日なので、店長のご飯の買い出しです~』

「えらいわね? あ、うちの子のことは大丈夫だからね?」

『あ……落ち込んでいました?』

「ええ。店長さんがすっごく謝ってくれたから……わざわざ、家にまで電話くださったのよ」

『店長らしいですね』

「そうね。若いのにいい店長さんだわ」



 だから、と、彼女は言葉を続けようとしていたが、サックに話していいのかとか考えて、一度口を閉じた。


 そのあと、ふふっと、何故か笑い出したが。



『?』

「いえね? 君は人間じゃないのに、昔漫画とかでみたような……本物の、AIロボットのような存在だもの。だから、つい人間相手のように話してしまったわ」

『ふふ。僕は接客の経験値も高いので、余計にそんな感じになるんでしょうね?』

「店長さんがきちんと育成し続けてきたお陰ね? あんな人だから……うちの子も、惹かれたんでしょう?」

『……わかりやすいですよね?』

「というか、ケーキ作りのときに相談されたのよ? 初々しいけど、進展なかったの??」

『どちらも、気恥しさが全面に』

「……なんとか、ならないかしらね?」

『こればかりは、僕の演算処理でも回答がうまく出ないですよ』

「そうね? 機械も曖昧な答えになるくらいだもの。あとは、見守るくらいかしら?」

『そうですね』



 世間話をするAIと人間の光景。端から見れば微笑ましい光景になるだろうが、実際は井戸端会議状態だ。


 芽衣の母親とそのあと適当に会話をしてから、別れて自宅に戻ったサックだったが……拓馬の様子は相変わらずだった。


 なので、買い出しの片づけを終えてから軽く小突くことにした。


 うじうじしていたら、せっかくの芽衣の復帰も逃すのかっと告げて。



「芽衣ちゃん、来るの?」

『SNSで元気なのは確認取れたよ? ちゃんとシフトも確認してくれたから、明後日から来るって。あ、解雇とか絶対ダメだよ? 人手不足じゃなくて、芽衣ちゃんを傷つけたくないから』

「……けど」

『大学生活も入用なも多いんだし。芽衣ちゃんのお小遣い不足させる気?』

「それは、良くない……」

『あと、ほかのところでバイト始めて……男に取られたら、どうするの?』

「う……」

『それだけショックになるくらいなんだから。大人なんだし、ちゃんとけじめつけなさい』

「……はい」



 AIに叱責されるくらい、気落ちしているのは仕方ないにしても。


 こうも周囲がやきもきするくらいじれったいのは、そろそろ終わりにしてほしかった。AIの処理能力でもそれくらいは簡単に弾き出せるくらいに。

次回は水曜日〜

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