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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第4話 テナント準備期間中は

 サックの育成も順調に進んでいると判断できる頃になれば、拓馬が用意したのは『ジェラート屋開店』のチラシ配布とかだ。


 テナント工事になどの契約も順次行っていたため、ほかに出来ることと言えば『宣伝活動』とか。喫茶店の頃は特にしていなかったが、それなりに広い商店街の中の一角に埋もれぬよう……オープニングについてはきっちり活動しなくては。



「ジェラート屋『シルキー』、今度南側でオープンしまーす」

『よろしくお願いします~』



 甘いもの。


 暑いときにほしいもののひとつに、アイスっとなれば気になる客は結構多く。用意したチラシはすぐになくなったりと多かったが。せっかくなので、保冷バッグ片手にサックと手作りしたジェラートをスプーンひと匙分味見してもらうサービスもしてみたのが一番の宣伝効果だったかもしれない。



「へぇ? ほんのりしょっぱい?」

「ソルトジェラートじゃないんですが、温泉水を使っているんです」

「まあ。北側で見つかった? 飲めたり出来るのねぇ?」

「そこは市が保証していますので、ご安心を」

『美味しいですか~?』

「美味しいわ~」

「ロボット?? じゃなくて、AI??」

「うちの大事なスタッフです」

「「まあ、可愛い」」

『えへへ~』



 と言う感じで、毎日とまではいかないがときどき宣伝しては自宅でジェラートのレシピを確認。


 専門店なので、最低十種類くらいは安定して提供し、ときどき期間限定や旬の食材を使った変わり種を盛り込んでいくのを忘れない。喫茶店でも、ドリンクやデザートでそのパターンを任されていたから思ったより苦ではなかった。



「開店まであと二ヶ月ちょっと。……思ったより、早かったな」



 企画を立て、テナントとの契約をどうするかまではすぐに行動できても。そこから、サックを購入して育成するまでが大変だったと思う。合間合間に、まだ無職になったわけではないので喫茶店の業務をしつつ……サックには接客を覚えてもらうために、ホールの担当になってもらったりもした。オーナーの許可も得ていたし、なにより、AIの需要を高めるためにも『こんな子です』をアピールしたかったのだ。


 そんな日々を繰り返していたら、店舗開設数か月前など……本当にあっという間だった。



『店長~。明日のジェラートはなに持っていくの~?』



 性格の構成がだいたい予定通りの状態になったサックは、拓馬がレシピを考えている間は家の掃除をしたりしてくれている。電力を燃料にはしていても、あのショップ店員の説明によれば『質のいい電力』は節電しているとなかなか循環しないそうなので。電気代は少しかかるが、その分家が綺麗になるのならとサックは作業がないときはちょこちょこと動いているのである。


 しかし、思考回路の展開がここまで育ったのだから、嬉しさ倍増と自分を褒めていいかもしれない。



「そうだなあ? 抹茶は好き嫌い別れるし、果物のソルベ……キウイにするか」

『それ、作り方書いてくれたら! 僕が作っていーい?』

「お? いいのか?」

『味見第一号は、店長~~』

「期待してる」



 なので、さらさら、とメモ書き程度に書いて渡してやる。材料の判別くらいは出来るようになっているはずだし、牛乳をつかわないジェラートの作り方も覚えさせたから……問題ないと思っていたのが、少し甘かった。


 次のレシピを考えている途中、サックの『ほぎゃ!?』という声が聞こえてきたため……少し心配になってキッチンに行けば。キウイで床がべとべとになっている惨状が出来上がっていた。



『……ごめんなさい。強く握り過ぎて』

「……いや、俺もキウイを握りつぶす予感はしてなかったよ。片付け、手伝う」

『はぁい』



 AIに覚えさせても、失敗はまだまだ可愛らしいものだったが。これが、、店の厨房だと温泉水を無駄にしてしまってそれなりの赤字になるため……慎重に教えないとと、油断禁物の言葉を思い出すくらいだった。


 そして、約二か月後の七月下旬。


 世間では夏休みの頃に、『ジェラート屋・シルキー』は湊星商店街でも南側のストリートでオープンしたのだった。

次回はまた明日〜

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