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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第38話 寒いがジェラートは売れる

 アイスの売れる時期。


 明確にあるとすれば、あるかもしれないが。拓馬はこの仕事を始めてから疑問に思っていた。


『夏も冬も関係ない』、と。



『あんまり気にしたことないねぇ?』



 サックに告げても、演算処理では特に問題がないように弾き出されたらしい。



「……いいことだけど。どこかで連休も作らないとな?」

『うん?』

「芽衣ちゃん、定休日以外ずっとシフト出てくれているし……疲れてないとは言い切れないからさ?」

『……付き合ってないの?』

「だから! 俺みたいなおっさんになんかじゃなくて」

『好意を持っているのはバレバレなのに。アタックしてみなよ~』

「……その言葉、古くない?」

『朝ドラに出てた』

「……はぁ」



 バイトに恋愛感情を持つのを、AIにも相談するくらいなのに。拓馬は未だに臆病な考えしか持てないでいた。


 likeとloveの違いくらいとっくにわかっている。付き合いこそはすれ、自然消滅ばっかりの子どもみたいな恋愛を繰り返してきた。


 性接触もまともにして来なかった、『大人の余裕』なんてまったくない。ただ年を食った男だけの建前で芽衣に嫌われたくないのだ。本当に余裕のない大人の心情ばかり。



『まあまあ。芽衣ちゃんが仕事嫌がっていないんだし? 休みを設けてもあんまり喜ばれないんじゃないかな? この仕事好きって言ってくれているし』

「……それはそうなんだけど」



 それくらい、温泉水のジェラートを好きでいてくれるのは非常に有難い。働き手としても、気が利くし役立つ以上の働きぶりを見せてくれている。けれど、彼女はまだ大学生。あと三年後には、就活を始めて企業に就職する可能性だってある。


 それまで、『シルキー』が続いているかは拓馬の手腕次第なところもあるが、芽衣の将来を勝手に決めつけるのは良くない。


 かと言って、告白して拒絶され、しまいには『辞める』ことだって考えられる。それはあってはならない結果だ。経営者としては、私情の都合で採用したバイトを手放すことだけは避けたい。


 なので、今日も今日とて、告白は出来ずにジェラートの新作を芽衣も入れて話し合うことくらいしか出来なかった。



「冬のアイスって、チョコ系をイメージしちゃうんですよねぇ」



 今日も大学の講義をきちんと終えて、出勤してきた芽衣の意見はそういうのが出てきた。



「チョコ系か。うちの定番もチョコが多いけど」

「あ。そうなると、コーヒーとかでしょうか?」

『モカチョコも既にあるけど。コーヒーなら、アイスのフレーバーでダブルコーヒーとかあるよ~』

「コーヒーを意識したやつか。子どもには食べにくいけど……」

「フルーツだと、ラズベリーはありますもんね?」

「さっぱりよりは濃厚が好まれるからね? ラズベリーはパイとかレアチーズケーキで既に人気だし」



 嬉しい悩みではあるが、なかなか新メニューには至らない。これは一日や二日どころで決まる内容ではないので、午後休憩が終わってから業務再開しつつも拓馬はしっかりと頭の中ではメニューを考えていた。


 シルキーは女性客が多いと思われがちだが、甘党男子も結構来るので男女関係なく買いに来てくれるのが嬉しいことだ。だから、どちらにも目に留まりやすいフレーバーを考えるにはどうすればいいのか……難しいが、楽しい悩みでもある。


 ひとまず、和系統よりも洋物にした方がいいのは確実なので……一度作ってみたかった『アップルパイ』を試作してみようと決めたのだった。

次回は金曜日〜

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