第39話『新作ジェラート』①(アップルパイ編)
アップルパイと言っても、通常のパイシートをクランチにしたものを入れるわけではない。
タルト生地をクランチにしたものと、カスタードクリームを少し改良したものにしようとしていたのだ。
「アーモンドプードルを入れて、少し香ばしく焼いてみるか」
だいたいの仕上がりの予想はつくのだが、こればかりは作ってみないと何も結果が出ない。
サックにはリンゴの甘煮を頼み、拓馬はクリームの試作を繰り返してみた。ジェラートは温泉水と乳製品を使用するため、味のバランスが難しい。
自宅、店、の繰り返しを何日か続けてみて。
芽衣に試食させる前に、何度か自分でも試食してみたが納得のいく味が出来ない。
となると、味の変化が必要かと調味料を足してみたところ、いい感じの仕上がりになったのだ。
「シナモン入りなんですね?」
五回くらい試作を繰り返し、納得がいったところで出勤してきた芽衣に試食してもらうことになった。気に入ったのか、味の考察をしながらもぱくぱくと食べてくれている。
「カスタードとアーモンドプードルで勝負したかったけど。どっちも自己主張するから、間を取り持ってくれるのなら……ってね。安直な考えかもだけど」
「そんなことないです。美味しいですよ?」
「商品としては問題はないと思っているけど。シナモン入れると好みが、ね?」
「あ、わかります。ラムレーズンとか、子どもが食べにくい味に近いですしね?」
「でしょう?」
こういう会話はすらすらと出来るのに、恋情に関してはからっきし前進できないのが拓馬の悪いところだ。
しかし、今は仕事。
店の経営のためにも、新商品と通常商品の入れ替えは常に考えなくてはいけないことだ。私情を挟んで、仕事をおろそかにしてはいけないのでそこはそこ、と今は切り離している。
「ん~。私は大丈夫ですけど。シナモンの量を少し減らすのは、よくないです?」
「そうだね。俺も少し食べ慣れている人間だから、多めにかけちゃいがちかも。少し調整してみるよ」
香辛料として、シナモン単体だと辛みとえぐみがほんの少しの量の違いで変わってくる。本職のパティシエほどではないが、研究熱心な拓馬なのでそれから売り出すまでほかの材料との調整も合わせて、また試行錯誤してみた。
販売まで、数日かけて繰り返し。新商品として売り出してみると、常連たちは早速と言わんばかりにフレーバーのひとつとして選んでくれたのだ。
「あ、意外とさっぱり?」
「パイ生地じゃなくて、タルトのクランチか~? これ、いいね?」
「シナモンちょっとあるけど。温泉水とケンカしてない~。これ、期間限定なの惜しいなー」
などと、それなりの評価をもらえた。もちろん、あくまでひとつの意見としてなので、常連全員が受け入れてくれたわけではないと思っている。新商品と言えど、いきなり購入しない客も結構いたのは売り場にいるのでよくわかるからだ。
「果物系は、本当に改善点が多いな……ソルベ系も、結構あまりがちになるし」
経営を続けて、そろそろ四年目にもなる。
完売する日もあれば、そうでない日だって出てき始めてきた。
商店街の顔として売り出しているわけではないが、新しい店もちらほら出てきているのだ。競争店に負けないためにも、新商品の試作はこの日から色々しはじめることにしたのだった。
次回は月曜日〜




