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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第37話 新規のお客⑤(大学生の場合)

 気になっている人がいる。


 と言っても、千早(ちはや)の場合は目当ての男性がいるのではなく、同性の女子生徒が気になっているのだ。


 武藤芽衣という同級生。同じ一年で学部も同じ文系。


 可憐な容姿に加え、人付き合いもよくて校内ではアイドル的存在だともてはやされている。本人はそんなつもりはないのかで、高校時代からの友人とよく行動を共にしているだけだが。


 なので、ごく普通の一般人と変わらないのでバイトをしていることも知っている。たまたま、千早が商店街に行ったときに見かけたのだ。プラカードを持って、店の案内をしているところを。



(ジェラート……屋さん?)



 つまりは、アイス屋さんということ。湊星商店街は温泉が有名な商店街なので、アイスくらい売っていてもおかしくはないのだが、その店はどうも『温泉水』を材料に使ったジェラートを販売しているらしい。


 芽衣がバイトをするくらい人気なのか、それから何度見かけてもプラカードを持つのは彼女か着ぐるみっぽいスタッフが交代で仕事をしていた。もふっとしていて、触り心地がよさそうな着ぐるみ。寒いこの時期にはさぞ温かくていいものだと思っていたが……店のHPを見ると、『彼』は着ぐるみでないことがわかった。SNSともリンクしていたため確認出来たが、アンドロイド版のAIらしい。


 ほかには経営者の店長だけ。バイトは芽衣のみ。三名で切り盛りするにも、あの行列を待たせてでも美味しいジェラートなのか、と、気になってきた。



(……武藤さん。あんなに楽しそうに働いているんだ)



 芽衣の表情が、大学と違うのが一番気になったところだ。友人といるとき以上に、笑顔がまぶしくて直視できないというくらい。なにか意欲的になる秘密でもあるのか。そんなにも、ジェラートが美味しいのか。


 千早はその都度用事があったのでなかなか並べないでいたが、今日こそは……となんとか列に並んでみた。そのときにプラカードを持っていたのはAIの方だったけれど。



『いらっしゃいませ~。最後尾はこちらです~』



 流暢な日本語を口から出すくらい、AIの育成プログラムはかなり整っていると言っていい。ふんわりとした毛並みに、触りたい欲求が出てきてしまうが……そこは一応成人しているので我慢だと自分に言い聞かせた。


 列の様子を改めて見たが、老若男女関係なく色んな年代の人が並んでいた。それだけ味がよく、値段が高めでも何度でも来たいということか。



「サックくんのチョコチップもいいわよねぇ?」

「それなら、芽衣ちゃんのクランチ系も捨てがたくない?」

「店長の抹茶系もいいよね~」

「「悩む~~」」



 AIの呼び名はたしか『サック』とHPにも書いてあったので、彼もジェラートづくりを手掛けるのか。そして、芽衣も多少は業務に携わっているらしい。なら、是非それを……と、順番を待っていたら意外と早く回ってきて。



「あ」



 芽衣がこちらに気づいたのかで、少し驚いた声を上げたのだ。



「……どうも。武藤さん」

「堀江さん、こんにちは。来てくれたんだ?」

「……頼んで、いいです?」

「もちろん。三種類まで選べて、カップかコーンに盛り付けられるの」

「……じゃあ」



 前に並んでいた客の話を聞いていたのを踏まえ、芽衣が作ったクランチが入っているらしいレアチーズケーキのラズベリーとチョコチップを選ぶことにした。せっかくなので、コーンに。支払いはキャッシュレス決済も出来ることだったので、店長の方が会計を担当してくれた。



「また大学で」

「あ、はい」



 ただの同級生だと認識があるようでないくらい、大学の人数は多いはずなのに。芽衣はきちんと千早のことを覚えてくれていた。これだから、好かれる人間は好印象を持ったそのままだと思わずにいられない。


 ジェラートは本当に少し塩気があるものの、花の香りが爽やかさを増していてとても美味しかった。価格はそれなりにするが、すべて手作りで『温泉水』をふんだんに使用しているからこその価値があるのだと納得できる。


 これに魅了されて、あそこのバイトをするのもわからなくもないと千早は最初思ったが。店長もなかなかのイケメンだと気づいたときには、『あ』と自分なりに納得したのだった。


 恋は、仕事のやる気をさらに倍増させるものなんだと。

次回は水曜日〜

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