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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第36話 小学生だって夢がある

 晴海には夢が出来た。


 小学生だから、という『らしい』感じの将来の夢だが。ひとつの目標とも言えるかもしれない。それが具体的に浮かんできたのは、春休みを迎える頃だった。



「『シルキー』さんみたいなアイス屋さんになりたい」



 行きつけのジェラート屋を目指すという、実に単純な職業への憧れだが。それはたしかに、と両親らにも頷いてもらえたのだった。



「美味しいもんねぇ?」

「まだあの店長さん若いし。はるちゃんが高校生になったら、バイトに雇ってもらえるんじゃないかしら?」

「ないとは言い切れないけど。店舗拡大とかいろいろあると、働きやすいかも」



 などなど、晴海にはまだわからない言葉が多く出てくるが、反対されてないことがわかると嬉しくなった。



「いくつになったら、僕あそこではたらけるかな?」

「うーん。高校生だから……あと、十年? そこまで営業していなかったら、店舗つくるのって難しいわよね?」

「AIのあの子もだろ? 自営業の金遣いは大変だしな?」

「……大変なんだ?」

「パパだって、会社は大変だ。でも、皆がいるから仕事は頑張れる。はるちゃんも将来の目標が決まったなら、簡単に諦めちゃいかんぞ?」

「うん!」



 すぐに大人になれないことは、幼い晴海でもなんとなくわかっている。たくさん勉強をして、卓さん遊んで、食べて寝てを繰り返しても……『毎日』というのはとても長い。


 『シルキー』に行けるだけの小遣いが貯まったのは、そこからまた二日後。母親のお手伝いと妹のお世話を頑張ったご褒美を合わせて、ようやく貯まったのだ。実に半月ぶりに、自分だけ食べに行けるご褒美おやつ。


 そういうときだけは、家族じゃなくて単独で行くようになった。都合が合えば、同級生たちと行くこともあったりする。今日は後者の方で、近所の幼馴染みたちと行くことになった。



「今日なに食べる?」

「チョコは外せないよな!」

「うんうん。あたしもあそこ大好き!」



 双子の兄妹の茜と桜。茜が兄だが、妹との差があまりないので小学生の今だと女の子に間違えられやすい。なので、口調と髪の毛だけでなんとか差をつけようとはしているのだが、本人が言うにはあまり意味がないそう。


 生まれたときからの幼馴染みである三人は、湊星商店街にも親と一緒に買い物によく行くから徒歩くらいでなら移動しても苦じゃない。双子は晴海よりあとにあの店のジェラートを食べに行ったのが初めてだったが、味の良さに子どもでもすぐに虜になった。


 それに、もふもふアンドロイド版のAIである『サック』にも夢中になってしまっている。着ぐるみじゃなくても、ふんわりふわふわの毛が病みつきで列に並ぶのを忘れるくらい。晴海は今でもそれは変わらないので、三人で行くたびに抱き着くとよく目立つが気にしていなかった。


 だから、今回も。



「「「サックく~~ん!!」」」

『はぁい~?』



 迷うことなく突撃して、三人分の重さを軽々と抱えてしまう彼に感心するのだ。



「今日何作ったの~?」

「小遣い貯まったんだ! 絶対買うよ!!」

「僕も買いに来たんだ!」

『ありがと~。今日も色々あるけど……レアチーズケーキ系とかチョコクランチかな?』

「「「わ~~!!」」」



 ひとしきりもふもふを堪能してから列に並び、三人でどの種類を買うか悩みに悩むのも楽しみだ。晴海はそれを考えながらも、父親に言われた『仕事の大変さ』を少し振り返っていた。


 途切れない行列。


 笑顔で対応する店長と店員。


 列の最後尾を案内するサックのこと。


 どれもが簡単のようでいて、実は違う。


 子どもだからとわからない理由にはならない。将来、こんなお店を自分でも作れたら……と、漠然な感情しか湧かないが、その決意はまだ揺らぐところはあっても固まりつつはあった。


 たった、7歳程度の決意と言われるかもしれないが、晴海だってそれなりに考えて決めたことだと思っている。


 夢があるとか、だったらいいねとか、曖昧にはしたくはない。


 きちんと、叶えたい夢だと、まだ店長には言わないでおこうと決めて……今日のジェラートを選ぶのだった。


 その夢は少し遠い先に、叶うだろうとはまだこのときは誰にもわからなかったが。

次回は月曜日〜

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