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【完結】もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第34話 もふもふAIのサポートを受けて

 芽衣は今日も、『シルキー』のアルバイトとして仕事に励んでいた。


 もう少しで、勤務一年になるが。仕事内容に飽きることもなく、健気と言えるくらいに懸命に働いてくれている。


 その働きぶりは、ひとえにある人物のため。恋い慕う、店長の我孫子拓馬のためだ。


 AIのサックが演算処理で見抜けるくらいの間柄にも関わらず、拓馬の方は気づいているようでその想いを微妙に避けてしまっている。歳の差のこともあるが、万が一のことで芽衣を傷つけたくないという感情が前に出てしまっているのだ。


 その万が一、はきっとない、とAIで弾き出す答えの中には確実に明記されない。人間の感情は作り出したAIよりも、複雑で不安定なもの。それを『確定』しても、サックには答えを教えたら『お終い』の可能性だって簡単に弾き出せた。


 だからこそ、間に挟まれながらも見守っているしかない。だが、手助けを一切しないわけではないのだ。


 今、芽衣から相談を持ち掛けられているのを黙って聞くだけの機械でないように。



「……脈無しかなあ?」

『うーん。僕の答え、聞きたいわけじゃないんでしょう?』

「そこまで、お見通し?」

『演算処理の練習に、店長と色んな動画とか見てきたしね?』



 例え、を出しても正しくは返さない。この場合、知ったところで芽衣のためになるとは限らない。


 この子の場合、きちんと自分で納得した上で、拓馬に想いを告げるタイプだとサックの演算処理では認識しているからだ。



「……断られ、たら。が、ずっと頭の中でぐるぐるしてるんだ」

『言っていないことが、延々と渦巻くって感じに?』

「そう。言われてもいないことが、『本当』に思えちゃうの……」

『人間の感情はひとつに絞れないからね?』

「サックくんは、違うの?」

『うーん。僕の場合、感情が『育ち過ぎない』ようにセーブされているから』

「そうなんだ?」

『そうなの』



 誰もが望む、完璧な道具であってはいけない。科学の法律によって、そこは一部きちんと定められているのだ。組み込まれているチップの中に、『性格』と呼ばれるものは購入者たちによって左右されても……望んだ相手そのものにはならないように、セーフモードが常に働いているのだ。


 だから、とか。


 その程度の会話で済むように、相手にインプットさせすぎるのも、実はよくないとされているが。結局は機械なので、なんとでもなるような回答しか出来ないのが一番いい。そのため、拓馬の回答を知っていても、素直に『YES』と答えてはいけないように、サック自身のチップがセーブしているのだ。



「人間が思い描いたものを作ったように、感じてたけど」

『そう見えるように、僕たちも会話技術を会得してるだけだよ? 全部が正解じゃないかもしれない』

「難しいね?」

『芽衣ちゃんは、自分でちゃんと言える時が来るまで……ゆっくり、考えた方がいいと思う』

「それも、訓練で出た答え?」

『かもしれない。ちょっと、笑えたね?』

「あ、ほんとだ」



 遠回し遠回しに会話を誘導することで、安心してもらえる言葉選びも……実は、AIとて瞬時に選び出すことは出来ない。ほんの一秒以下の時間をかけないと、演算処理がヒートアップし過ぎて部品に影響を及ぼすからだ。過去、拓馬とやり過ぎて、部品交換の出費が少しかかったことは懐かしい思い出だ。


 とりあえず、この会話を拓馬に聞き取られていないかの注意も払いながら……なので、『内心』という言葉が合っているなら、サックの部品が少しヒートアップするくらいひりひりし出していた。


 今のところ、足音も心音も感じないので大丈夫だと思う。それにしても、人間たちの感情は簡単に表に出せるものとそうじゃないものに、毎回不思議に思ってしまうのは……やはり、人間ではなくAIという存在だからだろう。



(早く、仲良くなってほしいのになぁ……)



 経営者との恋愛がうまくいくかどうかは、すぐにわからずとも。互いに慎重になり過ぎて、周囲の目で観察したら気づかれているのを知らないのが気の毒だと思わずにいられない。


 これが『親心』のような感情の手前だとしたら、一番年下であるはずのサックの性格はかなり成長してしまっているのでは……と、少しずつ情報システムを自分なりにいじって解除モードをしてみるしかなかった。


 途中で、『疲れた』『ほっとした』と感じたのだから、それはそれで正解だっただろう。


 AIもサポート係のはずなのに、自分をサポートしなくてはならないのも、なかなかに大変だ。


次回は水曜日〜

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