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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第27話 常連その⑥(母親の場合)

 今年の春から大学生になった娘がいるのだが。その春から、アルバイトを始めるようになって半年と少し。


 昔から自分が買い出しなどで通い慣れている、『湊星商店街』の南側に位置する『ジェラート屋・シルキー』の接客店員として……社会経験も含め、店長の我孫子に採用されて楽しく働いているそうだ。


 親としては他所での経験をきちんと積み重ねているのと、学業を疎かにしていないところを見る限り、常連だった店でのバイトをとやかくいうつもりはない。楽しんで働いているようだし、たまの近況報告でどのような業務を任されたかも伝えてくれるのも嬉しいものだ。



(……ただ、この子。店長さんが初恋らしいのよね?)



 笑顔でシルキーのことを話してくれるが、AIのサックのこと以上に店長の我孫子についても『凄い』とか『丁寧に教えてくれる』とかについて……年齢は成人していても、まだまだ子どもを卒業したばかりの垢ぬけてない表情は少女そのもの。


 如何にも、『恋してます』があからさまにわかるくらい。悪いことではないのだが、それなりに恋愛感情を持って四年くらい経つのなら……真剣に考えた上で、バイトにも採用してもらえたのだろう。我孫子自身にはジェラートを買いに行く以外は軽く挨拶されるくらい。深い話はしたことはないが、芽衣の事情を知っているのか。


 それなりに年齢が離れているし、恋愛関係もこれまで誰かとあっただろうが……経験値が上かはわからない。そこはどうしても個人差があるから。


 そんなことを考えつつ、今日も湊星商店街の八百屋や魚屋などで買い物をしていく前に『シルキー』に向かう。


 荷物が多いと最後のご褒美には集中できないし、なら最初に自分へのご褒美を堪能した方がいい。


 そのルーティンが出来たのも、芽衣の様子をときどき見に行くついでにしているので娘も特に気にしていなかった。


 芽衣はプラカードを持って最後尾の案内をしていたので、『お疲れ様』と言ってから少し会話をすることにした。



「疲れてない?」

「秋だし、夏よりは平気かな? 今日のご飯なに?」

「そうね? かぼちゃのシチューとかでいいなら、付け合わせはパンにするけど」

「うん! 母さんのご飯、美味しいもん」

「ありがと。じゃ、家でね?」

「あ。話したい事あるの! 帰ってから」

「はいはい」



 なんだろうと思いつつも、列が動いたので適当な相づちしか出来なかった。前半の列が団体客かで動くのがスムーズだったのだ。そのまま流れに乗って歩けば、ジェラートのストッカーと我孫子らの姿が見えたので、目が合えば互いにあいさつをするのもいつものこと。



「こんにちは。これからお買い物ですか?」

「ええ。いつも娘がお世話になっています。頑張っているようで」

「即戦力で本当に助かっています。あ、ご注文は?」

「そうね。今日はモンブランタルトとモカショコラのコーンで」

『畏まりました!』



 サックがすぐに作ってくれたので、受け取るのも早い。支払いはまだ慣れないがキャッシュレス決済でやってみた。中年にさしかかる女性でも使える使えないと今後が大変とか、芽衣にも言われているので出来る限りはスマホを使うようにしている。


 今日のひと口スプーンはかぼちゃかさつまいものジェラートのようで、食べてみればいつもの独特の風味以外にかぼちゃの濃厚な甘みが口いっぱいに広がっていく。



(チラシ配りから宣伝頑張ってた、あの喫茶店の店長さんが……ここまで、成長するなんてね?)



 我孫子を最初に知ったのは元勤務先だった喫茶店の『更紗』だが。常連ほどじゃなくても、ときどき利用することで顔くらいは知っていた。若い青年が自分の夢を叶えるのに必死でも笑顔でいるのが眩しいと感じたくらい。そこに、当時は中学生終わりだった芽衣もいたが、それが今では看板娘のようにはりきってバイトをしている。


 ジェラートの味は文句なし。芽衣も生活が色々潤っているならよし。


 ただ、恋路については下手に口出しできない分、どう応援してよいかわからない。その疑問が、帰宅してからしばらくして……バイトを終えてきた芽衣からの提案でびっくり仰天しかけたが。



「……お菓子作り。したい??」

「……気づいているだろうけど。店長に、誕生日プレゼント……として、手づくりしたくて」

「あ、ええ。あなたがわざわざバイトしたいって言うくらいだから、なんとなくは」

「お願い!! 母さん、この中だと初心者にはどれがいいかな!?」



 どうやら、サックが協力者として我孫子の好きなスイーツをメモ書きしてくれたとか。一覧をみたが、共通しているのは『タルト生地』。芽衣が少し前から業務内容に『クランチ作成』を任されることから、パイ生地ではなくアーモンドプードルを使ったタルト生地を作ることが出来るようになった。


 AIであれ、感情のプログラムがそれなりに育っている上での……的確な提案とくれば。


 母親として、武藤祥子も下手に娘が育ててきた恋心を壊したくない。仮に玉砕しても、バイトを辞めたとしても、それはひとつの結果だ。打ち砕かれた経験を学ぶのも大事に変わりない。



「……そうね? タルト生地がちゃんと出来るなら、レアチーズケーキのがいいんじゃない? 冷やして固めるだけだし」

「! アレンジしない方がいいよね?」

「いきなりは、ね? レシピとにらめっこしてから、材料買ってきなさい。母さんは見守るくらいしてあげるから」

「ありがと!!」



 年齢差はあれど、恋する相手に誕生日プレゼント。告白するかはともかく、世話になっているのなら迷惑は多少のことで済むはず。


 ただ、出来ることならいい結果であってほしいと思う。それは常連でしかない祥子には踏み込み過ぎてはいけないので、これ以上は手を差し伸べないが。

次回はまた明日〜

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