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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第26話 もふもふの育成過程②

 芽衣が『シルキー』で働くようになって、半年と少し。


 サックはAIとしてよりも、同じ従業員として芽衣とは交流を深めていた。


 機械なのに、道具でしかないのに。まるで友人のような付き合いをしてくれる芽衣は稀少性の高い人間だと認識はしている。


 ネットとかの端末はともかく、アンドロイド版のほかと比較したことがないためこれでよいのか認識が合っているのか……人間らしく言えば、『悩むくらいに回答処理を増やしてみた』。


 しかし、芽衣は本当に毎回毎回笑顔で嫌な仕事も引き受けるくらいに、活き活きとしているのだ。


 であれば、バイト以上になにかを求めているのか。その単純な回答を見つける前に、拓馬が芽衣を雇い始めたくらいに打ち明けてくれたことで『確定』が出来たのである。お互いが、お互いを求め合う。つまり、芽衣自身も拓馬に『恋愛感情』そのものを抱いているのだと。


 人間の感情感知まで正確にできるわけではないが、芽衣の『表情の先』とやらをじっくりと観察していれば、拓馬のそれとほとんど同じなのが容易に理解できた。



(うーん。想い合っているのに、素直になれない。それだけじゃなく、告白しても見向きもされていない……と思う、パターンを感じているのか)



 拓馬とよく見る『朝の連続ドラマ』のそんな場面の引き出しを収縮させた上での回答処理だが。


 人間でいうところの、感情表現に近いそれをサックも組み立てられてから三年も整ってきたので……下手な編集ソフトよりも演出のそれみたいなのが出来ているだけだ。喜怒哀楽の『喜』と『楽』ぐらいしか普段は接客抜きにしても出すようにプログラムしているため、それ以外は余程のことがない限り出さない。特に、怒ることなど拓馬に対してもまずなかった。


 だから、今仕事の合間を縫って見ている、芽衣と拓馬の様子をうかがっているのは『哀』とかの淋しい感情とやらに近いのか。



(除け者扱いされないけど。芽衣ちゃんの想いはちゃんと気づいてあげて欲しい……店長、超鈍感ってやつだし?)



 客を思い遣ることについては人一倍慎重なところはあるのに、恋路とやらには自分のもだが他人のも気づきにくいという典型的なパターンに陥っている。それは芽衣にも言えることだが、側にいたいがために直談判しながらもバイトにこぎつけた勇者ではあるのだ。


 そこについては、サックは今更だが褒めたたえたい気持ちになってしまう。AIなのに。



「ねぇねぇ、サックくん!」



 開店より少し前のタイミングで、芽衣がサックに話しかけてきた。なんだろうとジェラートのストックにきちんと蓋をしてから顔を上げた。



『うん? どうかした?』

「……いきなりだけど。店長の誕生日って聞いてもいい?」

『誕生日??』

「プレゼント、渡したいの!!」



 これは所謂、『告白イベント』というやつなのか。それか単純に誕生日を祝いたいだけなのか。


 どちらにしても、サックの回答ひとつで落ち込ませる可能性だってある。慎重に言葉選びを逡巡させ……まずは、無難な回答を口にすることにした。



『プレゼントを上げたいの?』

「うん。お世話になっているし、今年はバイトとしていっしょにいるから……過ぎていてもいいけど、ちゃんと渡したくて」



 これはやはり。『恋愛感情』としての心のこもったプレゼントとやらを渡したいに違いない。キーボードくらいで簡単に弾くことが出来る演算処理でも似た回答が出た。とくれば、ここは円満な環境を築くべく、サックに出来ることはひとつ。


 協力者になるとういことだ。拓馬の気持ちを蔑ろにはしないが、芽衣を悲しませたくない結果の方が最悪な展開になると予測したため。



『えっとね。店長の誕生日は、11月の25日だよ?』

「まだだったんだ!! えっと……今度でいくつだっけ?」

『二十七だね』

「……歳の差大きいけど。あ、うん。ありがと!」

『芽衣ちゃん、ちょっと待って!』



 仕事に戻ろうとする前に、走り書きでメモ帳からちぎった紙を渡した。それらは拓馬が好きな『スイーツ』ばかり。ほとんどがジェラートにも採用したものだが、それじゃないことを芽衣もわかったのか……両手で大事そうに持ってくれたのだ。



「これ……」

『先輩としての、アドバイス。AIでもこれくらいは出来るよ?』

「……うん。うん! ありがと!!」



 今度こそ仕事に戻っていったが、あとひとつきと少しであのメモにある中のどれかを拓馬に『手作り』してプレゼントできるかどうか。結果は演算処理とかでわかるわけがないので、これ以上はそっとしておくことにした。

次回はまた明日〜

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