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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第24話 常連その③の選び方

 伊東裕次郎は、あるスイーツ屋に定期的に通っている。


 市内にある温泉地としても有名になってきた、湊星商店街の南側ストリート。


 そこの『ジェラート屋・シルキー』。温泉水を使う特殊なジェラートなのだが、食感も味も抜群。毎度毎度食べても飽きが来ないくらいに通い続けて、約二年。


 しかも、今はひとりじゃない。


 シルキーに通い出してから、付き合うことになった恋人ともよく行くようになったのだ。今日は休日ということもあり、彼女とも行く約束はしている。少し遅めの夏休みということで、日程の合うときにふたりで向かうことにした。


 オフィスのときのフォーマルな服装とは違い、少し甘めなフォルムを思わせるも私服は彼女の良さをうまく引き出していた。



「裕次郎くん、今日も楽しみだね」

「そうだな。今日はどのメニューにしようかだよな」



 同僚と言っても、少し歳の差はあるが敬語は気にしない。もともと上司の部下としての連携を取るのに、教育係としてよく話す関係でいたこともあったからか。社外では敬語無しと決めたら、すんなりと受け入れてくれたのだ。



「デートで行くのは久しぶりだもんね? そろそろ、秋っぽいメニューとか出てそうだけど」

「栗とか、かぼちゃに芋?」

「いいね~。出てたら、わけっこしよ?」

「もちもち」



 彼女の香織は初デート以降からシルキーのファンになってくれた。もともとスイーツは好きだったが、ひとりで買い食いには抵抗感があったらしく。裕次郎が誘えば安心して楽しめるという感覚を覚えてからは、自分だけでも買いに行くようだ。


 そして、互いに日程が合えば、それぞれ三種類頼んで交換し合う。


 裕次郎たちだけではないが、カップルなどの客たちはこぞってし合うので別段気にすることはない。



「サックくん、今日はどっちかな~?」



 それと、あのもふもふAIにも好印象を持っている香織は、彼氏の前でハグこそはしないものの……サックのもふもふを堪能するのに、彼のタレ耳を触っているのはほぼ毎回。プラカードを持っているときは、裕次郎の前だろうがお構いなしだ。


 人形でもないし、ロボットとも違う彼の人工毛はとても触り心地がいいらしい。裕次郎は少し迷惑になるかなと、一歩引いて触ったことがない。子どものように好き勝手触るのに抵抗感があるし、香織のように素直な性格でないところがあるからだ。


 手を繋いで商店街に行けば、今日はサックの担当なのかでプラカードを持っていた。



「……行ってくる?」

「うん! サックく~ん!!」



 二個下と言えど、香織はまだ新卒から少し離れたくらいの若い女の子だ。アミューズメントパークの着ぐるみにも進んで写真を撮りに行く性格であるし、素直で可愛い。そこも好きだが、同時に羨ましくもある。素の自分を何故そんなにも簡単に表に出せるのか。


 今も、サックとツーショットで自撮りしたあとは、ありがとうと腰を折っていたし。



「……敵わないなあ」



 可愛いものには彼氏がいても関係ないとまでは言わないらしいが。どうしても『推す』ものがあるとつい近寄りたくなるのは、香織のサガとやららしい。犬猫が近くに来たら触りたくなるそれと近いものだと。そのたとえを出されたときは、裕次郎も共感しかけたが。


 とりあえず、裕次郎が先に並んでおけば。彼女もこちらに気づいてサックから離れた。サックは今日も持ち前の可愛らしさで笑顔を作っていた。三年くらい経つのに、メンテナンスが行き届いているのか今日もふわふわで人工毛でも触り心地がよさそうになっている。繋ぎ直した手と反対側の手を伸ばしかけたが、驚かせるだろうとやめておく。


 下手に人工知能の優れた相手を、初見じゃなくても印象を悪くしたいとまでは思わない。裕次郎の目当てはここのジェラートなのだから。



「いらっしゃいませー」

「お待たせしました。どうぞ」



 店長と若い女性アルバイト。


 アルバイトの方は春先からいるので、まだ大学生くらいだろうが。毎回思うが、モデルになった方が稼げるだろうという容姿なのに……よっぽど、ここで働きたかったのだろうと感心してしまう。


 接客も数か月経てば板についてきたのかで、まずは香織の注文を受けていた。裕次郎は聞き逃さずにしてから、店長の方に注文をすることにした。



「小豆ミルク、クッキー&クッキー、アサイーヨーグルト……コーンで」

「はい、承りました」



 物凄いビビットカラーの仕上がりになってしまったが、香織の分の支払いもしてからふたりで空いていたベンチに座った。お互いの試食フレーバーは今日は同じなのか、モンブランタルトだった。



「栗の味濃いね! 普通のモンブランより美味しいかも!!」

「タルトのクランチもいいな……。これ、手づくりか?」

「だとしたら、すっごい手間だよね? 私作ったことあるけど、何回も冷蔵庫で寝かしたもん」

「へぇ?」



 付き合って一年くらい経つが、香織の手料理の腕前は知っている。プロには及ばずとも、どこかほっとする優しい味わいが多い。それを気に入っているので、今度作ってほしいなとは言いたいが……店先でいうと恥ずかしいので、食べ終わってから言おうと決める。


 香織の注文したのは、フルーツ系が多く。どれも牛乳と温泉水のバランスを壊さない程度に、フルーツの香りが強い逸品ぞろい。


 毎週末とまではいかないが、この楽しみは得られたときの特権だといつも思うのだ。


 願掛けをしたつもりはないのだが、シルキーに来た経緯もあって香織と交際が出来るようになったのだから。



次回はまた明日〜

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