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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第20話 新規のお客④(上司の場合)

 甘いものは嫌いじゃないが、進んで食べる方ではないでいたの……だが。



「では、お疲れ様です!!」



 部下のひとりが、直帰する仕事のたびに行くという少し離れた商店街の『ジェラート屋』とやらが気になっていた。話を聞いてみたのだが、ただのアイスではなく『温泉水』を使用した少し高価格のアイスだそう。


 味も抜群。毎度行くたびにそこそこの列が並ぶほどの人気。


 最近は宣伝にも少し力を入れたのか、彼が昼休みにSNSやホームページでメニューを確認していたのを覗き見て、自分もちょっと行きたくなってきたのだ。



(けど、定時で上がったら閉店に近いだろうし……)



 夕飯前にわざわざデザートを先に食べるほど、甘いものを頻繁に食べたりしない。糖分を欲しいのなら飲み物がもっぱらで、会社の自販機とかで済ませることが多いのだ。


 気になってはいても、なかなか行けない。そんな日々が続いていると、部下の伊東ではなくて自分が直帰する機会が、夏の暑い日に巡ってきた。


 世間は夏休みという時期もあり、商店街も活気づいているのか子ども以外に若い世代が出歩いていることも多かった。こんな機会でなければ、自分も商店街に行くことなんて早々ない。だからこそ、話には聞いていた『温泉水ジェラート』を商談が終わってから食べに行こうと意気込んでしまうのだった。



(美味しかったら、家族と次来る理由にも出来るし)



 しかしながら、スマホで位置を確認したあとに向かえば……列の長さに少し困ってしまった。若い女性スタッフがプラカードを上げていたが、最後尾から見える店先が少し以上に遠く感じたのだ。


 ここで帰ることは簡単にできる。


 しかし、気になり過ぎていたことに変わりないのだから、並ばないと後悔してしまう。


 一分くらい、じっくりと考えた上で並ぶことを決意した。その間にも列が少し長くなったが、もう気にしないと最後尾に並ぶことにしたら。



『芽衣ちゃ~ん。交代するよー』

「ありがとう、サックくん」



 なにかの電子音のような声らしきものが聞こえたと思ったら。もふもふしたタレ耳うさぎの大きな人形が『歩いて』きたのだ。毛並みは人工毛だろうが、とても白くてもふもふしていて思わず触ってみたくなるそれに……手を伸ばしかけていたので、ひゅっと手を引っ込めた。



『いらっしゃいませ~、ジェラート屋の『シルキー』でーす。最後尾はこちらですよ~』



 アンドロイドにしても、ロボット技術はまだ未発展の多い日本。つまり、中身はAIを搭載している可能性が高い。会社の自販機にも簡易的にだが組み込んでデータ収集をしている企業がいるのを、自分はよく知っていた。


 それにしても、わざわざ商店街の店に起用するとは。ローン返済も大変だろうに、人件費削減も兼ねてなのだろうか。ネタとしては非常に面白いが。



「サックく~~ん!!」

「こんにちは~~」



 名前はわかったが、夏休みなので馴染の子ども客が彼にダイブするようにして抱き着きに行った。少しうらやましい気もしたが、三十も後半のおっさんが公衆の面前で出来るはずもない。それに、少しずつ列が進んで彼らから距離を置く理由もあったので触れるのは諦めることにした。


 目的はジェラートなのに、意識が逸れてしまっていたので気温が暑いことも忘れかけていたのだ。



「お待たせ致しました。ご注文どうぞ」



 さっきの女性店員だけではなく、店長らしき若い男性が対応してくれるようだ。ケースの中には色とりどりのジェラートが。これらすべてに北側では温泉施設になっているところと同じ『温泉水』が使用されているのか。そして、味は部下が通い詰めるくらいの折り紙つき。


 注文は三種までで、カップかコーンで選べるそうだ。


 なら、と蒸し暑い感覚を吹っ飛ばしたいメニューを選ぶことにした。



「えっと、パイン、レモンクリーム。あと、チョコチップで……カップでお願いします」

「はい、お会計は隣でお願いしますね?」

「バーコード決済出来ます?」

「はい。QRコードをお願いしますね」



 AI搭載していることもあり、キャッシュレス決済が出来るのも非常にありがたい。黄色味が強い組み合わせにはなったが、試食にもと塩ミルクとやらをおまけしてもらったスプーンから舐めてみたが。



(塩ミルクの名前以上に、少し塩気が強い。けど、さっぱりしているし食べやすいな? 不思議な花の香りぽいものも……)



 香りはあとづけではなく、単純に温泉の硫黄に近いそれにしては爽やかなものだった。ゴミ捨てのこともあったので、列から逸れて食べていたが……最後尾は相変わらず遠い。あのサックとやらをもう一度拝むくらいはあとで出来るが、わざわざ触りに行くことは家で寝ている幼い我が子を理由にでもしないと多分無理だろうと思った。



(犬猫アレルギー持ちには、もふもふ憧れるんだよな……。おっさんでも好きなものは好きだし)



 部下が通い詰める理由の中に含まれているかはわからないが、自分としてはそっちの理由も込みで通いたくなってしまった。ただし、中間管理職なので直帰はあるようでなかなかない。なので、休みの日とかに家族と散歩がてらに来るかと帰宅後に提案してみようと決めた。


 ジェラートは数分で完食するくらい美味しかったし、高いがたまの家族サービスくらいにはいいだろうと上機嫌にもなる。甘い物が、少しずつ好きになるきっかけにもなった。

次回はまた明日〜

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