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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第16話 新規のお客②(小学生の場合)

「今日はちょっと、贅沢なアイス食べに行こっか?」


 小学生になって、はじめての夏休みに入ったばかりの頃。


 晴海の母が、下の妹をあやしながらそんなことを言ってくれたのだ。晴海はちょうど宿題のドリルを半分近く終わらせたから……そのように、ご褒美を提案してくれたかもしれない。もちろん、晴海に異論はなかった。


「行く! コンビニ?」

「ううん。ママがずーっと気になってたアイス屋さん。パパも起こすから、いっしょに行くわよ~」

「はーい」



 夏休みに入って会社に行くことがなく、家で寝だめしている父親を無理やり起こしての……久しぶりのおでかけ。上の妹もまだ小さいが、下の妹はもっと小さい。晴海もまだ体が小さいのでだっが出来ないからベビーカーを押すことも出来ない。


 はぐれないように注意しながら、家族総出で商店街に行くことになったが……どこにアイス屋さんがあるのか気になった。学校帰りじゃ寄れる場所ではないし、子どもたちだけで遊びに来たことはほとんどない。駄菓子屋に行くのは少し遠い位置なので、コンビニの方がまだまだ買いに行きやすいからだ。



「ママ、わざわざこんな暑い日にアイス食いに行くのか?」

「もうずっと行きたい行きたいって言ってた南側の方よ? 子どもたちにも喜ぶものがアイス意外にもあるから連れてってみたかったんだもの」

「「喜ぶ??」」

「ほら、見えてきた。もふもふしたの見えない??」



 母親に言われて前の方を見てみると、たしかにもふもふした『何か』が動いているように見えた。大きなぬいぐるみとかのそれではない。細いけど、もふもふしているし耳が垂れている。近づくにつれて、声のようなものも聞こえてきた。



『いらっしゃいませ~。温泉水ジェラートのシルキーへお越しの人はこちらへお並び下さ~い』



 しゃべっている。もふもふが大人のようにしゃべっている。思わず、近くにいってみるともふもふがさらにもふもふした動きで触りたくなる欲求が晴海の中に生まれた。



「もふもふさん! さわってもいいですか!!?」



 両親らがびっくりするくらいの大声で叫んでしまったが、あとに引き返せないし、もふもふも札を持ちながら晴海を見下ろしてくれていた。お互いにじーっと見つめ合うと、もふもふは片手で札を持ち換えて。



『ふふ。僕はサック。ちゃんと名前で呼んでね?』

「サックさん! さわっていーい?」

『ん~。いいけど、おかあさんたちびっくりしてるよ?』

「! ママ、汚さないから!!」

「え? あ……そうじゃなくて、そのもふもふさんはお仕事してるから邪魔にならない??」

『いいですよ? ちょっとだけなら』

「やった!」



 もふん、と抱きつきに行けば。暑く感じないし、触り心地のいい犬のような猫のような毛並みが癖になりそう。わしゃわしゃと少しだけ手で撫でていっても、くすぐったくないようだがこのもふもふはいったいなんなのだろうか。


 そして、前に並んでいる列の人たちは何を求めに来ているのか気になった。


 すると、後ろから脇に手を挿し込まれて抱き上げられてしまう。この手は父親だとすぐにわかったので振り返れば、少し困った顔をしていた。



「こら。店員さんに抱き着いていいって言われても。お仕事の邪魔しちゃダメだろ?」

「てーいんさん?」

『大丈夫ですよ~。子どもさんとかに触られるのはしょっちゅうなので~』

「ありがとうございます。……アンドロイドとかのAI?」

『そうでーす。ジェラート屋の店員してまーす』

「……ママ。これ知ってた?」

「知っていたけど……こんな流暢な言葉遣いするまでは」



 どうやら、目的地はこの場所で会っていたらしい。父親の抱っこから下ろしてもらうと、いっしょにごめんなさいと謝ることになった。いいって言ってもらえても、邪魔をしたことに変わりはないので晴海でも少しは理解出来たのだ。



『お客さんなら、どうぞこちらに並んでくださーい』



 そして、サックは仕事に戻るためにも晴海たちに列へ並ぶかどうかを問いかけてきた。それはもちろんだと皆で並んで順番を待つことにした。暑いが、ここのアイスはひょっとしたらすごく美味しいかもしれない。わざわざ並ぶくらいというのは、『人気がある』『美味しい』というのを晴海は少ない家族とのおでかけで学んでいたからだ。


 そして、自分たちの番が来ると大きなケースがあったが中身が見えない。



「いらっしゃいませ」

「こんにちは、いらっしゃいませ」



 別の店員らが対応してくれるのはわかったが、どんなアイスなのか見えない。きょろきょろしてほかの客を見てみると色味の薄いものから濃いものまでのアイスを食べている客がいた。サックも作ったのか少し気になったが、後ろに客がいるので早く注文しなくてはいけない。ここは抱っこしてもらおうと父親にお願いして抱き上げてもらった。



「わぁ!!」



 ケースの中には、アイスクリームがたくさん。色とりどりに加えて、可愛いトッピングがいっぱいされていたりですぐに食べたい意欲が出てきた。晴海は小さいからひとつしかきっと選べない。けど、家族で来ているからあとで両親たちのをひと口くらいはもらえるからそれでいいのだ。



「はるちゃん、一個だけよ?」

「うん! てーいんさん、サックさんが作ったのってありますか??」

「「え??」」

「ああ。向こうにいるサックが作ったの? そうだね……このクッキーチョコチップが今日作ったのかな?」

「じゃあ、僕それ!」

「コーンにする? カップもあるよ?」

「ママ、コーンでいーい??」

「え、ええ。いいけど」



 決めたら地面におろしてもらい、両親らが選ぶ番の間……晴海はサックの様子を見ていた。ほかの客が来ても笑顔で接しているのがカッコ可愛くてすごいなと思ったのだ。人間じゃないらしいが、それでも晴海の知る『大人より大人』な性格が好ましく、また会いたいなと思えるくらいに。


 そして、父親から受け取ったジェラートをひと口食べたら物凄く美味しかったので。落とさないようにダッシュしてから、サックのところに行ってすぐに感想を言いに行くのだった。



「サックさん! アイス美味しい!!」

『ありがと~。あ、それ僕作ったやつだね?』

「てーいんさんに教えてもらった! ちょっとしょっぱいけど、美味しい!!」

『温泉が入っている効果だからね? そういう味らしいよ?』

「サックさんは食べれないの?」

『僕、機械……ロボットみたいなのだからね?』

「でも、作れるんだ?」

『うん。またおいでね?』

「うん!!」



 それから、お小遣いじゃ毎回買えないのを知ったため。友だちと行くときは協力して大きいのを変えるように出し合って、分けて食べることになったのだった。


 あと、サックのもふもふを皆で堪能しているといい宣伝効果になっていると彼から逆にお礼を言われたので、行く度にもふもふすることにしている。


次回はまた明日〜

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