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もふもふAIが温泉水ジェラートを売っています  作者: 櫛田こころ


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第15話 新規のお客①(海外観光客の場合)

 旅をするのが好きだった。


 きっかけは、今回再訪した『日本の温泉』。昔は家族で観光地ならではの『温泉』を利用したときに、シャワー以外の温まる感覚が気持ちよくてとても開放的な気分を味わえた。素っ裸で色んなお湯を堪能できるのもだが、迷惑をかけなければ決まった料金で好きなだけお湯の中でゆっくりしていい……水の有難みを感じるいい機会でもあったからだ。


 そんな素敵な旅の思い出を両親が結構な頻度で叶えてくれたので、子どもだったキャシーも自分で旅をする機会を作りたかった。そのために、高校進学してからバイトして旅費を貯め始めたのだ。


 単身でもいいが、友人たちとも交えたりもして。


 日本以外にも温泉施設があるとわかると、祖国のサウナとは違うお湯の堪能の違いを学んだりしてきたが……やはり、静かでのんびり過ごせる日本と比較してしまう。幼児などが騒ぐのは仕方がなくても、基本的に静寂のルールを守って思い思いに過ごす時間が心地いいのだ。


 それがまさか、久しぶりに来た日本の都市部に温泉があると思わず……商店街というストリートでの温泉施設で数時間堪能したのは言うまでもない。



『ふぅ……地方よりは小さいけど。いい泉質だったなぁ』



 三年前に、こんな街中で間欠泉が発掘されたとかで『湊星商店街』とやらは温泉を売りにした施設や商品が多数開発されたらしい。もちろん、飲料にもなる温泉のことはキャシーも知っていたので飲んだことはある。今回も、施設で購入したのであとで飲むつもりだ。


 開館から昼過ぎまで堪能したキャシーは、空腹を感じたがまだランチを食べるくらいに体が整っていないような気がした。少し、甘いものを食べたい気分だったのだ。近くに何かないかとスマホで検索したところ、この商店街の名物一覧に面白そうなのを見つけた。



『AIが店員のジェラート屋? へぇ??』



 しかも、ジェラートに『温泉水』を使用しているというこだわり。冷たいものは少し食べたい気分だったので、早速向かうことにした。温泉でしっかり温まったが、日本のGW時期だったので少し暑い外気温でムシムシしてしまうのはいただけない。


 なるべく早足で目的地に向かえば、自分と似たような考えが多いのか店の前で列が出来ていた。その最後尾には、人間でないもふもふしたものがプラカードを持って整理係をしていたが。



『いらっしゃいませ~。ジェラート屋『シルキー』の最後尾はこちらです~』



 日本語だったが、スマホのAI翻訳でなんとなく聞き取れたので問題はなかった。しかし、人間と同じくらいの言語機能を持つまでに育成してきた店長に少し興味が湧く。とりあえず並んで、もふもふを見れば向こうはプログラムで何かを認識したのか『笑顔』を向けてくれた。これは、犬猫愛好家などに惚れられてしまいそうな可愛らしいものだ。



(結構お金必要だろうに、これはいい宣伝材料だろうね?)



 北欧出身のキャシーはまだここまで精巧なアンドロイド版を見たことはなかったが、テレビなどでちょくちょく見かけるのと差は大きくないのではと感心してしまう。そして、自分の番が来ると『いらっしゃいませ』と男性が笑顔を向けながら声をかけてくれた。


 ヒアリングはまあまあできるが、自分ではあまりしゃべれないのでここは翻訳アプリを使うしかないとスマホ画面を向けながら注文をすることにした。



《北欧からの観光客です。どう注文すればいいんですか?》

「ああ、そうなんですね? このケースの中で、一種類から三種類まで選んでいただくんです。紙カップかワッフルコーンと器は選べます」

《全部『温泉水』使っているんですか?》

「はい。使ってますよ? 味の好みがあれば伺いますが」

《……チョコひとつと、店長さんのおすすひとつをカップで。苦手なのはないです》

「承りました。じゃあ、塩ミルクとダブルチョコにしますね? お会計はキャッシュ決済もできますが」

《クレカで》

「では、こちらの店員が受けますね」

「よろしくお願いします」



 店長が作ってくれている間に、若い女性が会計の対応をしてくれた。たしか日本では休暇期間だというのに、キャシーのように旅行をせずにバイトをしているのだろうか。お金が欲しいようには見えないのは勝手な認識でしかないが。



「はい。味見用にひとつ別の味をスプーンにつけています」



 会計後に受け取ったら、そのような嬉しい対応をしているので高かったがいい買い物をしたと思えた。


 食べる場所は歩きながらでも大丈夫だろうと、店を離れた。スプーンについている薄い茶色のジェラートをすぐに舐めれば、コーヒーの風味と薄いチョコのそれ。あとはふんわりと花の香りがするのにすべての構成を壊さない良い味わいのアイスの味がした。



『へぇ! これ、お土産にしたいなあ……』



 塩ミルクというのは牛乳のリッチな味わいにほんのり塩の風味がよくて食べやすい。ダブルチョコはその名の通りに、濃厚なチョコの味わいが強くて好みだった。もっと食べたいと思ったらスプーンですくう箇所がすぐ無くなっていたし、店からそう離れていない距離で食べ終わっていた。



『またお越しくださーい』



 あのもふもふAIに見られていたが、宣伝のために言っただけのように見えない。感情の設定が成されているのか、また愛らしい笑顔を向けてくれたのでキャシーのハートを打ち抜いてくるような感覚をもたらしたのだから。



(……毎日は高いけど。滞在中は通おうかな?)



 ダブルで600円近くは円安の関係上、毎回はデザートの料金にしては高い。しかし、それなりにこだわって作っているのだから手間暇かける分仕方ないだろう。だが、温泉の料金とそう変わらないと意気込めば、ほかで少しやりくりするかとカップのゴミを捨てるのにゴミ箱を探すのだった。


次回はまた明日〜

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