セラエノ図書館
「まじかよ……」
洋館に入ったタツヤは絶句した。
図書館という言葉を聞いて彼が想像していたのは広々とした館内、明るい照明、整頓された書物の数々だった。
しかし洋館の中はひどいありさまだった。
まず広い館内、というのは正しい。
洋館に入ってタツヤは野球場ではないかと感じたほどだ。
しかし、しかしだ。
照明は電灯のようだが半分以上は何かしらの理由で消えており館内は薄暗い。
また書物は乱雑に積み上げられ、図書館というよりは書庫と呼ぶにふさわしい惨状だ。
「……セラエノ、手伝え」
「はい? 」
「掃除と整頓だ、この惨状は捨て置けない。
というかそれを理解したうえでここに連れてきたんだろう」
「ばれてましたか」
セラエノはタツヤの性格を神から聞いていた。
その中でも【本を愛してやまない性格】【素直すぎる一面がある】という情報を聞いて、ここの整理整頓を任せられないかとも考えていた。
神にもその事を伝えると、構わないとのお許しが出たためこの亜空間に連れてきたわけだが、セラエノの読みは少しずれていた。
もともとの計画では本を読み終えてタツヤが、本棚に本を戻してくれればそれでいいと考えていた。
時間はかかるだろうが、床に置かれたままになるよりはよほどいい。
しかし、今回タツヤが言いだしたのは管内全域の大規模な清掃だった。
「……せっかくだ、【屍食鬼の召喚】」
タツヤはセラエノを掴み、召喚の魔法を口にする。
その魔法によって館内には500を超える屍食鬼が呼び出された。
多少匂いがするものの今までもカビのにおいが充満していたためにさほど気にならない。
「これより本の整理を開始する。
まず版を5つに分ける。
1班は本の運び出しだ、カーテンを引いて天日干しにする、干し終えた本は順次作者毎にグループを作り置いておけ。
作者不明の場合はタイトル順だ。
2班は開いた本棚の清掃、それを終えたら床の清掃だ。
3班は1・2班の手伝い、頃合を見計らって天日干しした本を運び込め。
4班は館内の探索、その際に地図を作成しろ。
5班は俺とともに行動、個室の清掃をするぞ」
タツヤの言葉にその場にいた食人鬼たちが一斉に敬礼をし、すぐさま5組に分かれて行動を開始した。
それぞれが言われたとおりに本を運び出したり、本棚を拭いたりしている。
「さてと、じゃあ現場監督に後は任せた」
「は? え!? 」
タツヤはセラエノを地面に下して100名近い屍食鬼を連れて洋館の奥深くに進んでいった。
後ろからはセラエノの叫び声が聞こえていたが、タツヤは始終気付かないふりを決め込んだ。
こうしてセラエノの罠は、見事にセラエノ自身を巻き込んでしまった。




