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セラエノの中身

「私の材料ですか?

主に人間ですけど接着剤なんかにはちょっと危険な植物の樹脂を使ってますね。

それにも手を加えてありますけど」


 セラエノはそこから細かい材料について説明を始めた。

 タツヤは耳をふさぎたくなるようなおぞましい内容だったが、どうにかすべてを聞き終えるに至った。

 その内容は凄惨なものだったが、セラエノの一言によりタツヤの心境は一変した。


「まぁ材料というのは私自身でしたから」


「……どういうこと? 」


「いえ、インクに使った血液は私のです。

血を抜いて固まらないように薬を入れて、一年間月の光を浴びせて作った特別なインクです。

それから脚の皮を剥いで、薬草とか貼り付けて回復を促進して無理やり一晩で皮を修復、それを毎日繰り返して集めること3年ですね。

剥いだ皮はなめして薬液に浸して本のページと表紙の装飾に。

それが終わってからは足を切断して骨を粉末にして、肉はひき肉にしました。

それらを薬と混ぜ合わせて防腐処置して表紙に使いました。

あとは……あぁ髪の毛なんかも使いましたし完成時には心臓をささげたりもしましたね」


「……おぞましいな」


「いやーまさか私が完成させた本があんなことになるとはね」


 セラエノはぽつりと言葉を漏らしたがそれをタツヤが聞き逃すことはなかった。

 あんなこと、というのは通常であればろくなことではない。


「あんなこと? 」


「えぇ、実は私は精魂込めて作った本に、精魂が宿ってしまったみたいなんですよ。

その中で見ていたんですが、私は邪悪な本として燃やされそうになったのですが焦げ目さえつかず、剣で切ろうとしても逆に剣が折れる始末。

しょうがないから有効活用しようとしたら内容が邪悪すぎて使えず持て余していたら邪心信仰者たちの手に渡ってしまい最終的には世界が滅んでしまいました。

その後はもっとひどいことになりまして、世界が滅びた後も私は滅びることなく別の世界へ流されて……と繰り返して500の世界を滅ぼした後は数えてませんね」


「凶悪どころか極悪だなおい」


 タツヤの言葉は辛辣だったが、それでもセラエノは臆することはない。

 それどころかそれほどでも、と言いながら冒涜的な触手を伸ばして背表紙をポリポリと掻いている。


「褒めてないからな」


「そんなわけで、神様が私を鹵獲した頃にはすっかり破壊をもたらす魔道書としての私が存在していたのですよ。

それをどうにかしようにも世界を滅ぼせる程度の力を持った私に対抗するには木端な神様では荷が重いですからね。

かなり高位の神様が出てきましたがそれでも内容の加筆が精いっぱいだったそうです。

何せ私は当時ちょっとした裏技で無限の魔力を誇っていましたからね。

こうして私は破滅の魔道書からセラエノ図書館へと生まれ変わったのです」


「……ちなみにセラエノの中にはその破滅の魔道書の内容は残っているのか? 」


「残ってますよ、何せ加筆ですからね。

内容を増やして危険な内容を薄めようと頑張ったのでしょう。

墨汁をこぼしてしまったので水をまいて隠そうとしたみたいな話です」


「神様ってのも大変なんだな……」


 タツヤはセラエノを見ながらしみじみとつぶやいた。

 それから、改めてセラエノという本の危険さを理解したような気がした。


「それでは私の危険度が分かったところで魔法の練習に行きましょうか。

うっかり加減間違えたら世界が滅びますよ」


「恐ろしいことを言うな! 」


 セラエノの言葉は、その性質を知った今のタツヤにとっては冗談では済まないものだった。

 更にセラエノ自身冗談のつもりはなく、少しでも加減を間違えれば世界とまではいかなくとも陸地を一つ消し飛ばすくらいは起こりうる。

 タツヤもそのことは重々承知していたため魔法の練習をしている間は冷や汗が止まることなく、セラエノからは男の人の体液で汚されちゃいました、と言われ何度か炙っていた。

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