おまけの俺、結界の攻略法を探る
修一は地図の一点を指で押さえ、口を開いた。
「現在こちらで把握している情報と、確認したい点があります。
まず──王都には“魔術を阻害する結界”が張られています」
悠真が広げた地図には、
王都の中心から広がるように赤い線が引かれていた。
「この範囲内では、魔術は使用不能。
そして問題は──」
修一は視線を上げる。
「この結界内で魔術、あるいは“神からのスキル”を使った場合、
術者が感知される仕組みがあるかどうかです」
オフィーリアがわずかに眉を寄せた。
「……魔術阻害だけでなく、感知まで併用された結界、ということですか」
「可能性の話です」
修一は静かに続ける。
「結界内では、ステータス上で魔術が“使用不可”として表示されていました。
そのため、実際に発動はしていません。
ですが──」
一枚、別の地図を広げる。
「仮に感知されると仮定した場合、
敵はこちらに反応して出てくるはずです。
それを利用して──釣る」
地図上の一点を叩く。
「結界の境界付近で魔術を発動。
敵が動いたら、この地点まで誘導する。
ここなら結界外、つまりこちらは自由に魔術が使える」
美琴が軽く頷いた。
「四元素魔法も使えるね。火力で押し切れる」
「多人数で来た場合は、さらに奥の森へ誘導。
地形を利用して各個撃破する」
修一は一度言葉を切り、全員を見回した。
「この作戦の成否は一つ。
“結界が感知機能を持つかどうか”です」
静かな沈黙。
オフィーリアは顎に手を当て、思案する。
「……結界の性質次第ですが、
感知機能を付加すること自体は可能ですわ」
「やはりか」
修一は小さく息を吐いた。
「ならば、実地で確認するしかありませんね。
皆さんは長旅の直後ですし──明日、結界の確認に向かいましょう」
オフィーリアは穏やかに微笑む。
「ええ。その方が確実ですわね」
横ではイリアがそわそわと落ち着かない様子を見せ、
悠真はそれに気づかぬふりをしている。
美琴とひよりは、完全に面白がっていた。
だが──
作戦は確実に前へ進んでいる。
ひとまず顔合わせと情報共有は終わり、場は解散となった。
イリアの周りには、美琴、ひより、そしてリュミナが集まり、
楽しげに何やら話し込んでいる。
……まあ、青春だな。
一方で、当の悠真はオフィーリアと向き合い、真剣な表情で話していた。
気になって声をかける。
「悠真くん、オフィーリア様。何を話しているんだ?」
悠真は振り返り、少し照れたように答える。
「オフィーリア様に、魔術の基礎を教えていただけないかお願いしていました」
なるほど。
まだ一か月も経っていないのなら、基礎固めは必須だ。
「それはいい判断だ。お願いできますか?」
オフィーリアは柔らかく微笑んだ。
「ええ。先ほども申し上げましたが、構いません。
学ぶ意思がある方は歓迎しますわ」
ありがたい話だ。
「悠真くん、美琴たちにも声をかけてこい。
ここで基礎を固めれば、戦いの幅が広がる」
「はい、行ってきます」
そう言って悠真は、イリアたちの方へ向かっていった。
……ああ、あれは絶対に顔が赤くなるやつだな。
そんなことを思っていると、
オフィーリアがこちらに視線を向けた。
「──一つ、よろしいかしら?」
その声音は、先ほどまでとは違い、
わずかに真剣さを帯びていた。




