おまけの俺、突破の糸口を掴む
アジトへ戻った俺たちは、
王都に張られていた“魔術禁止結界”について報告した。
悠真が腕を組み、唸る。
「このメンバーだと……結界に詳しい人がいませんね」
ひよりが首をかしげる。
「賢者の悠真くんでも分からないんだ?」
悠真は苦笑した。
「魔術を覚え始めて、まだ一か月も経っていませんから。
使える魔術を増やすことに集中していて……
結界の解析までは手が回っていません」
美琴がぽつりと呟く。
「そもそも、向こうじゃ魔術なんて“物語の中の話”だったしね」
ひよりがくすっと笑う。
「中二病、ってやつだね」
「うん、それそれ」
軽口が交わされるが──
状況は軽くない。
美琴がシロガネに視線を向ける。
「シロガネさん、詳しい人っていない?」
「いるにはいる。エルドだ。
だが今は王の護衛で不在だ」
悠真がため息をつく。
「王城の図書館に行ければ手がかりはあると思うんですが……
そこに行く手段が魔術頼りなんですよね」
美琴が肩を落とす。
「正面突破は無理ゲーだしね」
ひよりが静かに問いかける。
「王城の兵力ってどれくらい?」
シロガネが即答する。
「城内に近衛が約二百。
周囲を含めれば二千規模だ」
空気が重く沈む。
(……兵を減らし、結界を突破しなければ
ヴェルナスには辿り着けない)
考えれば考えるほど、
道が閉ざされていく感覚があった。
そのとき──
そっと、手を握られた。
リュミナだ。
「……シュウイチ」
その表情は、不安ではなく“信頼”。
俺は小さく息を吐き、頭を撫でた。
(……そうだな。止まってる場合じゃない)
「打開策を考えるか」
全員の視線が集まる。
ここからが本番だ。
俺は腕を組みながら口を開いた。
「結界ってのは、“魔術を止めるだけ”なのか?」
悠真が首をかしげる。
「どういう意味ですか?」
「例えば……
中で魔術を使ったら術者の位置がバレるとか。
“感知機能”がある可能性は?」
悠真は少し考え、頷いた。
「結界に感知機能を付与すること自体は可能です。
ただ……あの結界にそれがあるかは分かりません」
俺はにやりと笑った。
「なら、試せばいい」
全員がこちらを見る。
「結界の中で一度発動して、すぐ外に出る。
もし反応があれば……敵が動く」
美琴が指を鳴らす。
「釣り出しってことね。悪くない」
ひよりが眉を寄せる。
「でも……危険じゃない?」
美琴は肩をすくめた。
「どうせ戦うなら、有利な場所でやる方がいいでしょ?」
俺は頷く。
「その通りだ。
まずは結界の範囲を正確に把握する」
悠真が手を挙げた。
「それ、僕がやります。
外に出れば入れ替わり魔術が使えるので──」
そこまで言って、止まる。
「あ……入れ替え先、変更してないや」
美琴がじとっと睨む。
「ゆ・う・ま・く・ん?」
悠真、青ざめる。
「い、今すぐ変更します!」
慌てて部屋の隅に移動し、ねずみを召喚し始めた。
ひよりが呆れたように言う。
「緊急時に使えなかったら意味ないよね?」
さらにぽつり。
「うっかり発動したら……裸のイリアさん出てくるし」
「えっ」
俺の口から素直な反応が漏れた瞬間──
リュミナの視線が突き刺さる。
「シュウイチ……なに想像したの?」
「してませんすみません!」
反射で謝罪した。
美琴とひよりは爆笑。
悠真は耳まで真っ赤。
シロガネは呆れ顔。
リュミナは頬を膨らませる。
だが──
空気は確かに前へ進んでいた。
(よし……まずは結界の性質を掴む)
そこから、突破口を見つける。
俺は深く息を吸い、
次の一手を思考し始めた。




