おまけの俺、王都の異変に気づく
話は少しさかのぼる。
王様たちがガルドのもとを出発した直後のことだ。
護衛にはライルたちがついているとはいえ、人数は多くない。
(……無事にヴァルハインへ辿り着いてくれればいいが)
そう願うことしかできない。
だが──
俺たちには俺たちの役目がある。
ルミナス様からの依頼。
元凶であるカイトリアを排除すること。
それが、美琴たちを元の世界へ帰すための──
“俺の責任”だ。
「さて、王様たちも出発したし……
俺たちも動くか。アジトに戻って、王都の偵察と作戦立てだな」
リュミナが小さく頷く。
「うん」
俺は少し言いづらそうに口を開いた。
「……その、リュミナ。
ここで親父殿と待つ、って選択肢は──」
言い終わる前に、リュミナの動きが止まった。
そして、しゅんと肩を落とす。
「……シュウイチ、私のこと嫌いなの?」
「違う」
即答だった。
「危ない目に遭わせたくないだけだ。
……それでも一緒に来たいか?」
リュミナは迷いなく、俺の腕に抱きついた。
「うん。私はシュウイチと一緒に行く」
その答えに、美琴がくすっと笑う。
「ほら、答え出てるじゃん。
叔父さんが守るんでしょ?」
ひよりも柔らかく続ける。
「私も同じ意見かな」
ふと見ると──
悠真はまだ王様たちが去った方向を見ていた。
「……イリア様……大丈夫かな……」
ぽつりと漏らす。
美琴が呆れたようにため息をつく。
「ほんと、うちの男どもは一途だよね」
「私は美琴ちゃんと一緒が楽しいよ?」
「ふふ、私も」
そんな空気を断ち切るように──
「そろそろ行くぞ!」
シロガネの声が響いた。
「はーい!」
こうして俺たちもまた、王都へ向けて動き出した。
アジトまでの道は、もう慣れたものだ。
問題なく到着する。
「一度、街の様子を見てくる」
女性陣にはアジトで待機してもらい、
俺と悠真の二人で王都へ向かった。
門はあっさり通れた。
だが──
(……ん?)
門をくぐった瞬間、
胸の奥に“引っかかるような違和感”が走る。
「悠真、今なにか感じたか?」
悠真も眉をひそめていた。
「はい……通りを越えた瞬間、何かに触れたような……」
「やっぱりか」
俺はすぐにステータスを開く。
ルミナス様のスキルは問題なし。
だが──
影魔術に、×印。
(……ビンゴだな)
「悠真、路地に入るぞ」
人気のない場所へ移動し、小声で言う。
「ステータス確認してみろ」
「……あっ」
悠真の顔色が変わった。
「魔術欄に×が……全部使えない……!」
「俺も同じだ。
一度、さっきの通りまで戻るぞ」
二人で境界線を越える。
再びステータスを確認すると──
×は消えていた。
「……あの通りから向こう、
王城まで“魔術封じ”の結界が張られてるな」
悠真が真剣な顔で頷く。
「誰かが……救出の手段に気づいて、対策した可能性が高いです」
「だろうな」
悠真はさらに続ける。
「ただ、ルミナス様から頂いた“四元素魔法”は使えそうです。
完全封鎖ではないですね」
「なら、突破はできる。
……けど、ステルスは厳しいな」
悠真が小さく息を吐く。
「入れ替わり魔術も……使えなさそうです」
「……厄介だな」
だが──
「今気づけたのはデカい。
戻って共有するぞ」
「はい」
アジトへ戻る道すがら、
胸の奥に重い感覚が残り続けていた。
(……王都はもう、完全に敵の支配下だ)
それでも──
やるしかない




