第2王女は想いを胸に王都へ向かう
Side:イリア
王であるお父様の指示を受け、
私は王都にいるユウマ様と連絡を取る任務につくことになった。
敵地である王都へ向かう緊張よりも──
久しぶりにユウマ様に会うことへの緊張の方が、ずっと大きい。
(……私、浮ついているのかな)
胸の奥が、落ち着かない。
ユウマ様のそばには、いつもミコト様とヒヨリ様がいる。
あの二人と楽しそうに話している姿を見ると、
どうしても胸がちくりと痛んでしまう。
(……私なんて、ただの王女で……
ユウマ様の隣に立てるのかな)
そんなことを考えていた、そのとき──
「イリア姫様。前を見て馬に乗らないと、落ちてしまいますわよ?」
オフィーリア様が、くすっと楽しげに笑った。
「にやけたり、落ち込んだり……本当に忙しいお顔ですこと。
見ていて飽きませんわ」
「えっ……あ……う……っ」
顔が一気に熱くなる。
「でも、ユウマ様の前に出るときは、
王女としてしゃんとしていた方がよろしいですわよ?」
「は、はいっ……!
ちゃんとします……!」
慌てて手綱を握り直す私を見て、
オフィーリア様は満足そうに微笑んだ。
「急ぎでなければ、馬車の中でゆっくりお話を伺いたかったのですが……
こうして見る“姫様の百面相”も、なかなか楽しいものですわ」
「ひ、ひどいです……!」
思わず頬を膨らませると──
前を走るライルさんが、振り返りもせずに声を張った。
「王女様、オフィーリア様。
そろそろ王都の警戒範囲に入ります」
空気が、ぴんと張り詰める。
「この先は街道を外れて森を迂回します。
はぐれないよう、しっかりついてきてください」
「は、はい……!」
思わず背筋が伸びる。
ライルさんは軽く笑った。
「さっきまでと顔つきが違いますね、王女様」
「もう……!
ちゃんとしています!」
思わず言い返してしまうけれど──
そのやり取りに、
胸の奥が少しだけ軽くなった気がした。
(……不思議)
王都へ向かうはずなのに、
怖さよりも──温かさの方が強い。
ユウマ様に、会える。
その想いが、私の背中を押していた。
(ユウマ様……
どうか、ご無事で)
私は手綱を握り直し、
王都へと続く道を、まっすぐに進んだ。




