おまけの俺、巫女と朝を迎える
ぼんやりと目を開ける。
朝の光。
そして――
目の前いっぱいに広がる、リュミナの寝顔。
(……相変わらず可愛いな)
そう思いながら身体を起こそうとした瞬間――
「……っつ……」
頭に鋭い痛み。
(昨日……飲みすぎたか)
断片的な記憶が浮かぶ。
親父殿と酒を飲んで――
笑って――
そのあと……リュミナに……?
(……ここから先が思い出せない)
嫌な予感しかしない。
「うぅ……」
思い出そうとすると、頭痛がひどくなる。
唸っていると――
リュミナが目を覚ました。
「おはよう、シュウイチ」
「ああ……おはよう」
少し躊躇ってから聞く。
「なあ……俺、昨日変なことしてないよな?」
一瞬、きょとんとしたあと――
リュミナの顔がみるみる赤くなる。
「へ、変なこと……?」
両手で頬を押さえ、
視線を泳がせる。
「シュウイチは……その……あんなに激しく……(ぽっ)」
(え?)
(え??)
「ちょっと待て、俺なにした!?」
思わず身を乗り出す。
「す、すまん!!」
頭を下げようとすると――
リュミナが慌てて抱き止めた。
「ち、違うの!」
くすっと笑う。
「酔っぱらったシュウイチ、初めて見たの」
優しく頭を撫でてくる。
「すっごく嬉しそうで……可愛かった」
(……なんだ、それだけか)
一気に力が抜ける。
「とうさまと飲んだんでしょ?」
にこっと笑う。
「楽しかった?」
「ああ」
俺は息を吐いて答える。
「……楽しかったよ」
少しだけ間を置いて。
「“息子”って言われた」
リュミナの目がぱちぱちと瞬く。
「そっか……」
ふわっと笑う。
「とうさま、嬉しかったと思うよ」
その言葉を聞いて、
胸の奥がじんわりと温かくなる。
「もし元の世界に戻れても――」
自然と口に出ていた。
「俺はこっちで生きたい」
リュミナが息を呑む。
「リュミナと一緒に」
一歩近づく。
「親父殿も支えたい」
そして――
そっと抱きしめた。
「……出会ってくれて、ありがとう」
「し、シュウイチ……!」
顔を真っ赤にしてじたばたする。
「嬉しいけど……」
くん、と鼻を動かす。
「お酒くさい!」
(あ、そこか)
「きもちわるいの、とんでけ~!」
リュミナが両手をかざす。
ふわっと光が広がる。
「……おお、楽になった」
「えへへ」
満足そうな顔。
(二日酔いまで癒すとか、ほんとすごいなこの子)
支度を整え、食堂へ向かう。
扉を開けると――
全員が揃っていた。
親父殿、レネオス王、王妃たち、イリア。
美琴、ひより、悠真。
どうやら俺たちが最後らしい。
その瞬間。
美琴がにやりと笑った。
「叔父さん、昨晩はお楽しみだったみたいで?」
(なんで知ってる)
言い返す前に――
リュミナが腕にぎゅっと抱きつく。
「朝まで楽しかったよ!」
「「「えっ」」」
美琴、ひより、悠真が同時に固まる。
(言い方!!)
親父殿が豪快に笑う。
「まだ終わってないからほどほどにな」
(親父、乗るな)
その一方で――
王妃たちはイリアを囲んでいた。
「イリア、あれくらい積極的でもよろしいのでは?」
「若いのですから、攻めるのも大切ですわ」
イリアが真っ赤になる。
ちらっと悠真を見る。
すぐ逸らす。
(……分かりやすいな)
「今、ユウマ殿を見ましたわね?」
「ええ、あの反応……」
「これはもう……」
(やめてあげて)
悠真はというと――
まったく気づいていない顔で、
普通に会話している。
(この空間、情報量が多すぎる)
パン、と手が鳴る。
「はいはい、そこまでだ」
親父殿が場を締める。
「飯にするぞ」
メイドたちが動き、
料理が並んでいく。
リュミナは相変わらず腕にくっついたまま、
楽しそうに笑っていた。
(……戦いの前の、こういう時間も悪くないな)
だが――
次に進めば、もう戻れない。
(だからこそ)
この温もりは、絶対に守る。
そう心に刻みながら、
俺は席についた。




