王は動き出す
Side:レネオス
仮設の砦に案内され、
レネオス王と三人の妃、そしてイリアは、
ようやく人心地つける部屋へと通された。
扉が閉まる。
――その瞬間。
張り詰めていた空気が、わずかに緩む。
だが。
レネオス王の胸に残るものは、重かった。
「……城は、すでに落ちていると見た方がいいな」
低く、絞り出すような声。
王としての冷静な判断。
そして――父としての悔恨。
フィオナが静かに頭を下げる。
「……気づくのが、遅すぎましたわ」
唇を噛む。
「あなた……申し訳ありません」
レネオスは首を振った。
「違う」
きっぱりと否定する。
「お前のせいではない」
一拍。
「……あれは、我ら全員が欺かれていた」
ロザリアが、静かに言葉を添える。
「ですが……救われたのも事実ですわ」
視線を落とす。
「あのままでしたら……目覚めたときには、すべてが終わっていたかもしれません」
ティアナも頷く。
「ガルド殿をはじめ、あの者たちは誠実です」
穏やかだが、確信のこもった声。
「彼らと手を組めたことは――僥倖と言えるでしょう」
レネオスは小さく息を吐く。
(……ああ)
(敵ではなかった)
(それだけでも、救いだ)
そのとき。
イリアが一歩前に出た。
「お父様」
真っ直ぐな声。
震えはある。
だが――揺るがない。
「これから、どうされますか?」
家族を見渡す。
「まずは……お姉さまを止めなければなりません」
拳を握る。
「戦争も……終わらせないといけません」
その言葉には、
王女としての責任と、
姉を想う妹の願いが込められていた。
「わたしは――ユウマさんたちと動きます」
はっきりと言い切る。
「この問題に、一番近いのは……あの方たちです」
レネオスは目を細める。
しばしの沈黙。
やがて――
ゆっくりと頷いた。
「……そうだな」
静かな決意。
「我らも動くべきだ」
フィオナが視線を上げる。
「城へ……戻るのですか?」
「いや」
即答だった。
「今戻れば、捕らえられるだけだ」
一拍。
「……外から動く」
ティアナが静かに言う。
「心当たりが……あるのですね」
レネオスは頷く。
「ある」
フィオナがすぐに理解したように口を開いた。
「ファルドラ近郊に隠居している――ヴァルハイン夫妻ですわね」
ロザリアが頷く。
「元騎士団長と、元宮廷魔導士……」
ティアナが続ける。
「今の状況でも、動ける数少ない戦力ですわ」
レネオスは深く息を吐いた。
「……あやつらなら、力を貸してくれるはずだ」
そして、顔を上げる。
「明日、ガルド殿に馬車と御者を借りる」
「その足で向かうぞ」
決断だった。
イリアは胸に手を当て、
静かに頷いた。
「……はい」
目を閉じる。
そして――開く。
「必ず……お姉さまを取り戻します」
その言葉に、
フィオナ、ロザリア、ティアナも頷く。
失われかけた家族。
崩れかけた国。
だが――
今、再び繋がり始めていた。
(……まだ、終わってはいない)
レネオスは静かに拳を握った




