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おまけの俺、王を取り戻す

翌朝。


目を覚ますと、周囲には四十名ほどの兵が控えていた。

司令官直属の部隊――精鋭だ。


他の小隊はすでに廃鉱を抜け、

出口にいた王国兵を拘束。

向こう側に陣地を築き始めているらしい。


(……相変わらず仕事が早いな、獣人軍)


俺たちは第二小隊の護衛に囲まれ、

廃鉱の中へと足を踏み入れた。


薄暗い坑道。

前回は――ここで死にかけた。

だが今回は違う。

警戒しながら進むが、

何も起こらない。


(……静かすぎる)


足音だけが、やけに響く。


(本当に“何もない”のか?)


あの黒狼。

あの圧。

あれが偶然だったとは思えない。


(……気持ち悪いな)


違和感を胸に抱えたまま進むと、

やがて――出口が見えた。

外へ出ると、

そこにはすでに“砦”が出来上がっていた。


木材の組み上げられる音。

獣人たちの掛け声。

飛び交う指示。


(……一晩でここまでやるか)


小屋を基礎に、簡易ながらも防衛線が完成している。

グラン率いる工兵隊の手際は、もはや職人芸だった。


(頼もしすぎるだろ)


その日は砦で一泊。

明日、アジトへ向かう。

そして――

アジトに入るのは、

俺たち十二人だけ。


(……やっと“いつもの戦い”に戻るな)


軍に守られる戦いはここまで。


ここから先は――

俺たちの役目だ。


焚き火の火が、静かに揺れていた。


翌日。


アジトまでは何事もなく到着した。

そして決まった。

王城へ向かうのは――

俺、悠真、イリア。

この三人。


リュミナは当然のように「行く」と言ったが、

今回は却下した。


危険すぎる。


(……あとで絶対拗ねるな)


日が落ちる。


俺たちは王城へ向けて動き出した。


夜の闇に紛れ、門前へ到達する。


「……行くぞ」


小さく呟き、

《遮断の外套》を発動。

三人の気配が、闇に溶ける。

そのまま、

誰にも気づかれず――

城門をすり抜けた。


王城の中は、静まり返っていた。

不自然なほどに。


(……警備が薄い)


いや、“いない”に近い。


(……おかしい)


生きている城の気配がない。


まるで――

何かに支配されたような静けさ。

王の塔へ向かう途中。


前方に、人影。

俺は即座に影へ潜る。


降りてきたのは――


(……アリア王女)


第一王女アリア。

ゆっくりと歩いてくる。

俺たちには気づかない。

そのまま、すれ違う。


その瞬間――

見えた。


(……泣いてる?)


アリアの目に、涙が溜まっていた。

イリアも気づいたらしい。

息を呑む気配。


(……今は動けない)


俺は目で制する。

悠真も理解し、

静かにイリアの肩に触れた。


三人は、音もなく塔へ向かう。

王の寝室前。

ドアに手をかける。


(……鍵がかかっていない)


一瞬、止まる。


(罠か?)


だが――違う。


ゆっくりと開ける。


中には、

四つのベッド。

王、正妃、第一側妃、第二側妃。

全員が眠っていた。


(……変わってない)


時間が止まったように。

静かに扉を閉める。


そして――

《虚無視界》を発動。


視界が反転する。

世界が“糸”で満ちる。


(……これは)


王たちの身体に巻き付く、

無数の光の糸。


(完全に操られてるな)


悠真たちの時とは比べものにならない。

全身を縛り付ける、

支配の構造。


「王様からいく」


小声で告げる。


《神威の滅剣》を発動。


今回は――極小。


ナイフサイズ。


(これなら持つ)


消耗は最小限。

長時間の作業が可能だ。

俺は糸に刃を当てる。


――ぶつっ

一本。

また一本。


慎重に、確実に。

糸が震え、消えていく。


そして――

最後の一本。

断つ。


ふっと、光が消えた。


(……よし)


「あと三人」


作業は順調だ。

このペースなら、

十五分もかからない。

王の様子は悠真とイリアに任せ、

俺は次へ移る。


(絶対に――全員助ける)


順番は、

王 → 正妃 → 第一側妃 → 第二側妃。


途中、

悠真が《遮音結界》を展開した。


(……ナイス判断)


もし目覚めて騒がれたら終わりだ。

そして――

最後の糸。


第二側妃の糸を切っている時だった。


「……お父様が」


イリアの声が震える。

最後の糸を断つ。

同時に――


「……ううん……」


王が、目を開けた。

ゆっくりと。

意識が戻る。

イリアが駆け寄る。


「お父様……!」


声を押し殺しながら。


「私です……分かりますか?」

「……イリア?」


王はぼんやりと呟く。


「おはよう……どうしたんだ、こんな朝早くに」

「よかった……!」


イリアが抱きつく。

王も、自然に抱き返す。


だが――

次の瞬間。

周囲を見回す。

眉をひそめる。


「……ここは、どこだ」


そして――

俺たちを見る。


「……お前たちは、誰だ」


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