おまけの俺、神のもとへ帰る
翌日。
俺たちは全員そろって、ルミナス様の神殿へ向かうため馬車に乗り込んだ。
車内は――
俺の隣にリュミナがぴったりと寄り添い、
向かいにはイリアと悠真。
二人の距離は、昨日よりも明らかに近い。
自然に笑い合い、言葉を交わしている。
(……青春してるな、あっちは)
そんな様子を横目に見ていると、
後ろで美琴がひよりに小声で話しかけていた。
「叔父さんとリュミナちゃんは今さらとして……
イリア様と悠真くん、なんかずるくない?」
ひよりがくすっと笑う。
「美琴ちゃん、悠真くん気になってたの?」
「違う違う。そんなことないって。
むしろ減点中だし」
(減点されてるのかよ……)
「それに、どっちかって言えば叔父さんの方が――
……あ、今のなし!」
「美琴ちゃんって、おじ専だっけ?」
「なにそれ!
年上なら誰でもいいわけじゃないからね!」
二人がじゃれ合い始める。
(……平和だな)
思わず口元が緩む。
その瞬間――
「む~~……」
耳元で、低い唸り声。
(はい来ました)
リュミナが、じとっとした目でこちらを見ている。
「……別に、美琴たちが楽しそうだなって思っただけだよ」
そう言って頭を撫でると、
リュミナは満足そうに腕にしがみついてきた。
(……ほんと分かりやすいな、この子)
向かい側では、
イリアと悠真が楽しそうに話している。
もう、ぎこちなさはない。
自然に隣にいるのが当たり前のような距離感だ。
(……あっちはあっちで、いい感じだな)
ふと、隣を見る。
リュミナは俺の腕に寄りかかり、
穏やかな表情で外を眺めている。
この子も、いつか――
「好きな人ができた」なんて言う日が来るのかもしれない。
そのときは、
笑って送り出してやるべきなんだろう。
(……まあ、今はまだ俺の隣だけどな)
そんなことを考えながら、
俺はリュミナの頭をそっと撫で続けた。
馬車はゆっくりと、
神殿へ向かって進んでいく。
神殿に到着すると――
入口には、ルミナス様が立っていた。
(……出迎えか)
神に迎えられる、なんて経験は日本じゃまずない。
馬車を降り、歩み寄る。
その隣には――
人の姿になったダルガスが腕を組んで立っていた。
(……でかくなってるな)
「ただいま戻りました」
軽く頭を下げる。
そのままダルガスを見る。
「随分と立派になったな」
「お前らがやってくれたおかげだ」
にやりと笑う。
「廃坑で戦った狼、覚えてるな?」
「ああ。カイトリアの眷属だろ。
あと一歩で仕留めきれなかったやつ」
「そいつは、俺が食った」
「……は?」
思わず聞き返す。
ダルガスは肩をすくめた。
「逃げたあとを追ってな。
弱りきってたところで、神力を全部吸い取った」
「神力……」
「あの力は元々ルミナス様のものだ。
回収しただけだな」
そのとき、
ルミナス様が静かに口を開いた。
「よくやってくれた、ダルガス」
穏やかな声。
「カイトの眷属から力を取り戻したことで、
わしも力を取り戻した」
その視線が、俺たちへ向く。
「これで――あの三人にも加護を与えられる」
(……美琴、ひより、悠真)
胸の奥が、ふっと軽くなる。
あの黒狼の脅威は、もうない。
リュミナを狙う“影”が、一つ消えた。
俺は隣を見る。
リュミナがこちらに気づき、
小さく微笑んだ。
(……よかったな)
その笑顔を見て、
心の底から安堵する。
戦いは、まだ終わっていない。
だが――
確実に、こちらが優勢に傾いている。
(ここからだ)
俺は静かに息を吐いた。




