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おまけの俺、巫女に甘えられる

廃坑を抜けた俺たちは、外の小屋を拠点に一泊することにした。

女性陣は小屋へ、男組は外でテントを張る。

火を囲んでの簡単な夕食。

そこで、今後の動きを確認する。


「まずはファルドラへ戻る。

ドラグニア辺境伯に報告して、その後――神殿でルミナス様と話す」


頷く一同。

イリア様には城で休んでもらう案も出たが、本人が首を振った。


「……私も、ご一緒させてください」


迷いのない声。

その言葉に、美琴とひよりがやわらかく笑う。


(……変わったな)


少し前まで“守られる側”だった王女は、今は自分で歩こうとしている。

いい変化だ。

夕食を終え、各々が休む準備に入る。

俺と悠真は同じテントに入り、寝床を整えていた。


そのとき――


「シュウイチ、いる?」


リュミナの声。


「いるぞ」


返事をした瞬間、

ばさっとテントが開いた。

そのまま、リュミナが勢いよく飛び込んでくる。


「今日は、こっちで寝るね」


当然のように言いながら、俺の毛布に潜り込み――

ぎゅっと抱きついてきた。


「……どうした」

「みんなひどいの」


頬をふくらませる。


「シュウイチとの年の差がどうとか、そういう話ばっかりで……」


(……ああ)


「だから、今日はここ」


拗ねたように言い切る。


(まあ……今日くらいはいいか)


俺は軽くため息をつきつつ、リュミナの頭を撫でた。


すぐに、力が抜ける。

安心したように目を細めて、胸元に顔を埋めてきた。


――そのとき。


「シュウイチさん、起きてますか?」


今度はイリア様の声。


「起きてますよ」

「リュミナさん、そちらに行っていませんか?」

「来てます」


そう答えると、ほっとした気配が伝わってきた。


「よかった……急にいなくなったので、森にでも行ってしまったのかと……」


少し間があって、


「……それと、先ほどは申し訳ありません」

「え?」

「リュミナさんのお気持ちを、軽く扱うようなことを言ってしまって」


声音は真剣だった。


「ですが……」


ほんの少し、ためらってから。


「一番年下の方が、一番進んでいるというのは……その……少しだけ、ずるいなと」


(……なるほど)


思わず、口元が緩む。


(この人も、ちゃんと年相応なんだな)


その瞬間。


胸元で「むぅ……」と小さな唸り声。


(……あ、火がついた)


リュミナが服をぎゅっと掴み、顔を埋めたまま動かない。

これはまずい。

俺は即座に外へ声をかけた。


「イリアさん。

そこにいる悠真と、少し散歩してきたらどうですか」

「えっ……?」

「悠真、聞いてるだろ」

「……え、なんでバレてるんですか」

「イリア様の相談、聞いてやれ」

「ちょ、ちょっと修一さん!?」

「行ってこい」


半ば強引に、二人をテントから追い出した。

外から、戸惑った声とぎこちない会話が聞こえてくる。


(……まあ、あとは任せた)


テントの中に視線を戻す。


リュミナは、まだ顔を埋めたままだ。


「……シュウイチ」

「ん?」

「イリアさんのこと、可愛いって思った?」


(直球だな……)


少し考えて、正直に答える。


「王女なのに、そういうことで悩むんだなって思っただけだよ」

「……ほんと?」

「ほんと」


間。


それから、ぎゅっと力が強くなる。


「……じゃあいい」


ようやく顔を上げて、小さく笑った。


「今日はここで寝る」

「はいはい」


俺は毛布をかけ直し、リュミナの頭を軽く撫でる。

すぐに、静かな寝息が聞こえてきた。

外ではまだ、ぎこちない会話が続いている。


(……頑張れ、悠真)


そう思いながら、目を閉じた。

戦いの熱が去ったあとの夜は、

不思議なくらい、穏やかだった。


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