おまけの俺、何かに見られる
正座した悠真を中心に、
俺、美琴、ひより、リュミナ、イリア様が円を描くように座る。
その少し離れた場所では、
ライルたちが酒を片手に“完全に観客”として見物していた。
(……お前ら、ほんと自由だな)
美琴が一歩前に出る。
目を吊り上げ、悠真を睨みつけた。
「イリア様の裸を見たって、どういうこと?
まさか覗いたの?」
「ち、違います!」
悠真は慌てて手を振り、そのまま深く頭を下げる。
「入れ替え転移の仕様を完全に把握できてなくて……!
説明のために部屋で実験したら、
“印をつけた対象しか転移しない”ってことがそこで初めて分かって……!」
「具体的には?」
「……転移した瞬間、イリア様が裸になりました。
申し訳ありませんでした!」
土下座。
(……まあ、不可抗力だな)
だが、ひよりが静かに追撃する。
「悠真くん。
ってことは、私たちが部屋で待ってた時……
“裸で転移してくる”って分かってたよね?」
「うっ……」
「なんで言わなかったの?」
「言ったら“なんで知ってるの”ってなると思って……
ごめんなさい……」
(……気持ちは分かる)
その時。
「み、みなさん!」
イリア様が慌てて手を振った。
「ユウマ様がいなければ、私は勇者の手にかかっていました。
その場合……これだけで済んだとは思えません」
空気が、ぴたりと止まる。
イリア様は顔を赤くしながら続けた。
「ですから……責めないでください。
私は……ユウマ様でよかったと……
あっ、い、今のは忘れてください!」
(……爆弾投下したな)
その瞬間。
「「「ギルティ」」」
三人の声が揃った。
美琴が指を突きつける。
「悠真くん、正座!」
「もうしてます!!」
リュミナがぽつりと呟く。
「でも……好きな人なら見せてもいいよね。
私もシュウイチには――」
「「ダメ」」
即答。
リュミナはむぅっと頬を膨らませた。
ライルたちは遠巻きに拍手している。
(……完全に酒の肴だな)
アジトの広間は、
緊張と笑いが入り混じった空気に包まれた。
翌朝。
広間に、ぞろぞろと皆が集まってくる。
眠たげな悠真に声をかけた。
「おはよう。よく寝れたか?」
「おはようございます……
昨日は散々でした……」
苦笑しながら頭をかく。
「でも……イリア様に嫌われてなくてよかったです」
「おっ、タイプか?」
「きれいな方だとは思いますけど……
嫌われたら行動に支障が出るので……」
「おー、大人だな」
リュミナがぱんっと手を叩く。
「さぁ、朝ごはん食べて出発しよ!」
「そうだな。行くか」
朝食を済ませ、準備を整える。
今回のメンバーは――
俺、リュミナ、美琴、ひより、悠真、イリア様、
ライル、エルド、ロウガ、そしてロウガ隊三名。
総勢十二名。
(……完全にパーティだな)
アジトを出て、夕方前。
廃坑まであと少しという地点で足を止めた。
ここで、“加護切り”を行う。
「まずは悠真からだ」
理由は単純だ。
・加護を切った時の影響が未知数
・俺の消耗も不明
どちらかが倒れても対応できるよう、
配置もすでに決めてある。
「じゃあ……始めるぞ」
俺は悠真の前に立ち、《虚無視界》を発動する。
視界が反転し――
見えた。
悠真の頭から伸びる、
無数の“黄色い光の糸”
それが王都の方向へと繋がっている。
「……これが、加護か」
息を呑む。
次に、《神威の滅剣》を発動。
身体の奥から、力が引き剥がされるような感覚。
(……重いな、これ)
「悠真。やるぞ」
「……お願いします」
俺は剣を構え、
光の束へ横薙ぎに振り抜いた。
──ガンッ
衝撃。
(……硬い!)
まるで金属を叩いたような手応え。
歯を食いしばり、さらに力を込める。
「……っ、くそ……!」
その瞬間。
ぶつっ
一本、切れた。
続けて――
ぶつっ、ぶつっ
糸が、弾けるように断ち切れていく。
周囲が息を呑む。
誰も声を出さない。
ただ――見守っている。
(……いける)
全身に力を込める。
残った束へ、一気に刃を叩き込む。
「――はああああっ!!」
光が弾けた。
最後の糸が、断ち切れる。
その瞬間。
ぞわり、と。
背筋をなぞるような“冷たい何か”が走った。
(……今のは――?)
空気が、わずかに歪む。
まるで、
“何かに気づかれた”ような――
そんな気がした。




