おまけの俺、全員揃う
朝、美琴から連絡が入った。
『おはよう、叔父さん。聞いて!
悠真くん、大事な日なのに寝坊したんだよ。もぅ……!』
いきなり愚痴だった。
『ひよりと二人で待っても来ないから、何かあったのかと思って部屋に行ったら、
荷物は全部なくなってるのに、本人だけベッドで寝てるの。信じられない……』
「おはよう、美琴。
……まあ、起こしたんだろ?」
『起こしたよ! ちゃんと起きたけど……なんかぼーっとしてて』
(ああ……やっぱり徹夜だな)
「ぼちぼちでいい。焦らず来い。
着いてから追及すればいいだろ」
『……うん、そうする。
ひより、悠真くん出発できそう?』
向こうで小さくやり取りが聞こえる。
『おじさん、行けるって。
いったん切るね。またあとで』
「了解。気をつけて来いよ。
……あんまり責めすぎるなよ?」
『わかってるよ。じゃあまたあとで』
通信が切れた。
(悠真……絶対図書室で徹夜してたな)
ため息をひとつついてから、広間へ戻る。
「今から出るそうだ」
ロウガたちはすでに装備を整えていた。
「外出か?」
と聞くと、ロウガが首を振る。
「いや。俺たちは途中で張る。
尾行がないか確認してから、あいつらの後ろを取る」
「頼んだ」
ロウガたちは静かに外へ消えていった。
(……あいつらなら問題ない)
迎える準備をしようとしたところで、
袖を引かれる。
「シュウイチ……」
リュミナが不安そうに見上げていた。
「美琴さんたち……もうすぐ来る?」
「ああ。来る」
一度、はっきりと言い切る。
「今日で全部変わる。
みんなで帰るぞ」
リュミナはほっとしたように笑い、
小さく頷いた。
アジトの空気が、
少しずつ緊張と期待で満ちていく。
それからしばらくして──
眠たげな悠真を先頭に、
美琴、ひよりの三人がアジトに入ってきた。
「おつかれ。無事でよかった」
「ありがとう、おじさん」
美琴はため息をつきながら肩を落とす。
「悠真くんが寝坊しなければ、もっと早く着いたのに……」
横で悠真がぼそっと言う。
「……すみません」
「でもね」
美琴が続けた。
「“アイテムボックス魔術”を開発してくれたから、
荷物はほとんど持ってもらえたの。そこは感謝してる」
「……それ、僕が荷物持ちってことですよね」
「まあ、そうなるな」
即答した。
悠真はうなだれる。
「昨日、夜遅くまで頑張ったのに……報われない……」
「寝坊の原因はそれか」
苦笑しつつ、状況を整理する。
「今から出ると、廃坑前の王国陣地に着くのは深夜だな……」
俺は胸元に声をかけた。
「ダルガス。いるんだろ? ちょっと出てきてくれ」
「呼んだか?」
ひょこっと、妖精サイズのダルガスが現れる。
「加護を切ったら、神や眷属にバレるか?」
「与えた本人は違和感くらいは感じるな。
ただ、勇者以外の三人に与えた程度なら……“あれ?”って思うくらいだろう」
「なるほどな」
少し考える。
「じゃあ加護を切るのは、明日の出発直前にしよう」
ライルが頷いた。
「今日は休んだ方がいい。
このまま出たら、そこの賢者が途中で倒れるぞ」
「ひどい……」
「事実だろ?」
「……はい」
「「「「異議なし」」」」
全員一致だった。
「よし、明日の朝出発だ」
方針が決まる。
──で。
俺は腕を組んで、悠真を見る。
「でだ。悠真」
「はい……?」
「白状しろ。イリア様に何した?」
「えっ!? 今ここでですか!?」
「移動中にギクシャクされたら困る。
やらかしたなら、今のうちに謝っとけ」
その瞬間。
「ち、違います!」
イリアが慌てて手を振った。
「私はユウマさんに対して、何も思うことはありません!
裸を見られたのは不可抗力ですし……!」
その一言で、空気が固まる。
そして──
「「「ギルティ」」」
美琴、ひより、リュミナが同時に宣告した。
「悠真くん、正座」
「なんで僕だけこんな目に……!?」
その場に崩れ落ちる悠真。
(まあ……自業自得だな)
アジトの広間に、
久しぶりに笑い声が広がった。
──その奥で。
誰にも気づかれないほど、ほんのわずかに。
空気が“揺れた”気がした。




