おまけの俺、巫女と共に再び旅立つ
カレンナを救出してから、二日。
その間、リュミナはルミナス様のもとで、
“巫女として自分の身を守れるように”修行を積んでいた。
(……本当に強くなったな、リュミナ)
そして今日。
俺たちは再び、エルディア王国へ向かう。
美琴たちの呪い──いや、“加護”を断ち切るために。
その手段は、もう手に入れている。
ロウガたちと出発の準備を整え、
朝、城門前に集合すると──
そこに、リュミナが立っていた。
「リュミナ、見送りありがとうな。
ちょっと美琴たちを救って、連れ帰ってくるわ」
「……うん。じゃあ行こっ」
「いや、“じゃあ”じゃないだろ」
思わずツッコミが出る。
「今回は危険かもしれない。
俺としては、ここで待っててほしいんだけど」
そう言うと、リュミナはぶんぶんと首を振った。
「イヤ!」
即答だった。
「私がいかないと、シュウイチが死んじゃうって
ルミナス様が言ってたもん。絶対ついてく!」
「……俺が死ぬ?」
思わず聞き返すと、
リュミナは真剣な顔で頷いた。
「“暗闇に気をつけろ”って。
私がいないと、気をつけても死んじゃうんだって」
(……暗闇?)
その言葉に、背筋がわずかに冷える。
「そうだよ。そう言ってるじゃん」
背後から声がした。
振り返ると、いつの間にかルミナス様が立っていた。
「ルミナス様……リュミナは必要なんですか?」
「必要だね」
あっさりと断言された。
「リュミナも最低限は戦えるようになった。
連れていきな。そして──」
一拍置いて、こちらを見る。
「必ず帰ってきな」
その言葉に、自然と背筋が伸びた。
「……はい。リュミナは、必ず守ります」
次の瞬間、コツン、と額を弾かれる。
「お前が死んでもダメなんだよ」
「……はい」
「二人で帰ってきな」
「……はい」
「それと」
ルミナス様が続ける。
「勇者の“贄”たちも連れてきな。
カイトの縁を断ったあと、私が加護を与える」
「わかりました。全員、連れて帰ります」
その言葉に、リュミナが嬉しそうに腕にしがみついた。
「シュウイチと一緒なら、どこでも行くよ」
(……ほんと、この子は)
少しだけ笑ってしまう。
ロウガたちも頷き、馬車の準備を終える。
こうして──
俺たちは再び王国へ向かう。
今度こそ、美琴たちを救うために。
そして──
“暗闇”と呼ばれる何かと向き合うために。
馬車で廃坑まで戻り、
前と同じ詰所で一泊。
翌朝、俺たちは再び廃坑へと入った。
中は相変わらずの暗闇。
(……ここか?)
ルミナス様の言葉を思い出し、警戒を強める。
だが──
何も起こらないまま、通り抜けた。
(……違うのか。じゃあ“暗闇”って何だ?)
廃坑を抜けると、王国側の兵士が警備していたが──
見張りは酒盛り中だった。
(……緊張感ゼロだな)
念のため《遮断の外套》を発動し、
そのまま監視の隙をすり抜ける。
こうして、再び王国へ侵入した。
その日の夜。
野営の準備をしながら、魔道具で美琴に連絡を入れる。
「こんばんは、美琴」
『こんばんは、叔父さん』
「そっちはどうだ?」
『イリア様をライルさんに預けたあとは、あまり変化なし。
神谷くんは……別の貴族の娘をもらったみたいで、訓練にも来てないよ』
(……あいつ、本当に何してんだ)
「お前たちは?」
『悠真くんが上級魔術の本を持ってきてくれて、
三人で夜に練習してる。結構楽しいよ』
「それは……いいのか?」
苦笑するしかない。
「それより──」
本題に入る。
「お前たちの加護、切れるようになった。
今、王国に向かってる。明日にはアジトに着く」
『ほんとに!?』
「着いたらまた連絡する。
城を抜ける準備をしておいてくれ」
『わかった。ひよりと悠真くんにも伝えるね』
「頼んだ」
通信を切る。
(……よし)
焚き火の火が、ぱちりと弾けた。
明日には、美琴たちを救える。
そのはずだ。
隣を見ると──
リュミナが、俺の袖をそっとつまんでいた。
不安そうで。
でも、どこか嬉しそうに。
(……絶対、守る)
そう心の中で誓いながら、
俺は静かに炎を見つめた。




