おまけの俺、神をも断つ力を得る
ルミナス様の前に進み、静かに膝をつく。
その瞬間──
ルミナス様が、俺の頭にそっと手を置いた。
次の瞬間。
ぐっ……!
何かが“押し込まれる”ような感覚が走る。
頭の奥に、光が流れ込んできた。
(……うわ、これ完全に脳に直接くるやつだ)
情報でも、力でもない。
“何かそのもの”が刻み込まれていく感覚。
やがて光が収まり──
ルミナス様が満足そうに頷いた。
「修一、あたしの加護を書き換えたよ」
指を一本立てる。
「まず《遮断の外套》。
こいつは──“神すら欺く”」
(……さらっと言うけど、とんでもないな)
「次に《虚無視界》。
“神の加護や呪いの源”が見えるようにした」
(黒衣の神官に対抗するための鍵だな)
そして──
ルミナス様は、にやりと笑った。
「最後に《神威の滅剣》」
空気が、わずかに震える。
「これは“神の力そのものを断ち切る”力だ。
加護も呪いも消せるし──神にだってダメージを与えられる」
(……きたな)
「……まあ、あたしには効かないけどね。はっはっは」
(自分で無効化してるの、ずるいな)
でも──
これでいい。
美琴たちを救える。
王や王妃の呪いも断てる。
黒衣の神官にも届く。
胸の奥が、熱くなる。
「ありがとうございます。
これで、仲間を救えます」
ルミナス様は軽く手を振った。
「あー、聖女ちゃんたちも連れておいで。
カイトの加護を断った後なら、あたしが加護を与えてやるよ」
「分かりました。必ず連れてきます」
ルミナス様は、ふっと表情を和らげると、
リュミナの頭を優しく撫でた。
「それにしても、リュミナも大変だったね」
リュミナは首を振る。
「シュウイチに会えましたし……大丈夫でした。
でも……カレンナが……」
その言葉に、ルミナス様はあっさりと言った。
「あー、あの子ならこの先の陣地にいるよ」
「……え?」
「修一。ちょうどいい。
加護の試しも兼ねて、助けてきな」
「軽く言うなあ……」
「もう“あたしの眷属”みたいなもんだろ?
さ、行った行った」
「へいへい──」
「“はい”だろ、“はい”」
「……はい」
でも──
カレンナが生きている。
それだけで、全部が変わる。
「……助けに行こう」
俺は立ち上がり、神殿の外へ向かった。
外に出る前、リュミナに向き直る。
そっと頭を撫でる。
「ちょっと助けに行ってくる。
リュミナはここで待っててくれ」
「シュウイチ、一人で行くの?」
「ロウガたちと合流する。大丈夫だ」
リュミナは不安そうに俺の手を握る。
「……気をつけてね」
「もちろん」
ルミナス様に頭を下げる。
「リュミナをお願いします」
「任せな。あたしの巫女だ」
その一言で、リュミナの表情が少し和らいだ。
神殿の外に出ると、ロウガたちが待機していた。
「カレンナの居場所が分かった。
この先の陣地に囚われている」
ロウガは即座に頷く。
「なら、行くぞ」
「陣地の近くまででいい。
そこからは俺のスキルで潜入する」
その時──
「偵察は先に済ませておいてやるよ」
上から声が降ってきた。
ダルガスが、木の枝からひょいと降りてくる。
「俺の姿は見えないようにできる。
人族の陣地なら問題ない」
「頼めるか?」
「任せろ、相棒」
(……相棒、か)
悪くない響きだ。
「ロウガ、カレンナを乗せる馬車を準備してくれ」
「途中合流でいいな」
「ああ、任せた」
◆
森を駆ける。
身体が軽い。
地面を蹴るたびに、
信じられないほど前に進む。
(……これ、完全に人間の動きじゃないな)
ロウガたちの全力に、余裕でついていける。
いや──
むしろ、まだ余力がある。
夜。
陣地の近くに到着した。
通常なら五日はかかる距離。
完全に規格外だ。
森の中から、陣地を見下ろす。
「来たか」
ダルガスが降りてきた。
「どうだった?」
「竜人の少女が一人。檻に入れられてる」
小さな地図を広げ、位置を指す。
「ここだ」
俺は頷いた。
「……よし。行ってくる」
ロウガたちを見る。
「ここを押さえてくれ」
「任せろ」
「気をつけろよ」
「了解」
俺は一歩、影の中へ踏み出した。
(ここからは──俺の仕事だ)




