おまけの俺、祝福の宴に迎えられる
ガルド辺境伯との会談を終え、
部屋で少し休んでいると──
コン、コン。
ノックと同時に、メイドの声がした。
「シュウイチ様、パーティの準備が整いました。
広間へご案内いたします」
「すぐ行きます」
靴を履き、部屋を出る。
メイドの後について歩くと、やがて──
百人は優に収容できそうな大広間へと到着した。
すでに、メイド、執事、兵士、文官……
城で働く人々がずらりと集まっている。
(……すごい人数だな)
隅に下がろうとした瞬間、
案内役のメイドがそっと俺の袖を引いた。
「シュウイチ様、お席はこちらでございます」
「え、あ、はい……?」
連れて行かれた先は──ひな壇の上。
席は三つ。
ガルド辺境伯、リュミナ、そして……俺。
(……いやいやいや、なんで俺がここ!?)
メイドが椅子を引き、優雅に一礼する。
「どうぞ、おかけください」
逃げ場はない。
観念して腰を下ろすと、
すぐに人々が次々と挨拶に来た。
老齢の執事、軍の幹部、文官、メイド長──
「お嬢様を救っていただき、ありがとうございます」
「あなたのおかげで……本当に……」
「リュミナ様はこの城の宝です。その命を救ってくださった恩、決して忘れません」
(……どれだけ愛されてるんだ、この子)
胸の奥がじんわりと温かくなる。
やがて──
ひな壇奥の扉が開いた。
ガルド辺境伯と、ドレス姿のリュミナが入場する。
大歓声と拍手。
慌てて立ち上がり、俺もそれに加わる。
(……リュミナ、めちゃくちゃ可愛いな)
中央まで進んだところで、ガルドが声を張り上げた。
「今日はリュミナが帰還した、めでたい日だ。
全員で祝いたいと思い、この場を設けた!」
歓声がさらに大きくなる。
「なお、勤務中の者には、後ほど食堂にて特別食と酒を用意する。
遠慮なく楽しんでくれ!」
「おおおおおお!!」
広間が揺れるほどの歓声。
そして──
ガルドが俺の方へ視線を向けた。
「リュミナの挨拶の前に──紹介したい者がいる。
リュミナ救出の立役者、シュウイチだ」
(……え、俺!?)
完全に不意打ちだった。
だが、ここで黙るわけにもいかない。
俺は立ち上がり、腹をくくる。
「修一です。リュミナさ──」
「うーーー!」
リュミナが頬を膨らませて抗議してくる。
(……“さん”禁止だったな)
軽く咳払いして言い直す。
「えっと……リュミナをここまで連れて来られて、本当に良かったと思っています。
今日は──帰ってきた可愛いリュミナを、
みんなで思いきり祝ってやってください!」
「おおおおおおお!!」
一斉に歓声が爆発する。
(……すごいな、人気)
リュミナを見ると──
「か、可愛いって……」
もじもじと頬を赤くしている。
(……やっぱり可愛いな)
思わず、自然と笑みがこぼれた。
パーティを通して、
この城におけるリュミナの存在の大きさを、嫌というほど思い知らされた。
(……そりゃ狙われるよな)
奴隷商人。襲撃者。
(絶対に、許さない)
ふと、ガルドに言われた“番”の話を思い出す。
(竜人と人間じゃ寿命が違う……
いずれ俺なんて、ただの通り過ぎた人になるんだろうな)
それでも──
(それでも、近くで成長を見守れるなら……それでいいか)
そんなことを考えながら、自室へ戻ると──
魔道具が反応した。
(……美琴か?)
急いで接続する。
「こんばんは、美琴」
『こんばんは、叔父さん』
声は落ち着いているが、わずかに焦りが混じっている。
「何かあったのか?」
『ちょっと問題があって……
悠真に第2王女イリアさんの件、頼んだでしょ?
あの子、もう連れ出してきたの』
「……早くないか?」
『うん。で、この後どうするかが決まってなくて……』
(……やっぱり行き当たりばったりか)
「脱出はどうやった?」
『悠真の魔術で、誰にも気づかれずに抜け出せたみたい』
「王城なのに、ザルだな……」
『で、今は悠真の部屋にイリア様がいるの。
二人きりにはできないから、ひよりちゃんも一緒』
(……ひよりちゃん、ごくろうさまです)
「王女が消えたとバレる前に脱出する必要があるな。
部屋に定期的な監視があるか聞いてくれ」
『わかった』
「昼まで持つなら外出に紛れて出る。
無理なら夜中の強行突破だ」
『逃げ先は獣人のアジトで大丈夫かな?
叔父さんが連れていった場所』
「……それも決まってなかったのか」
思わずため息が漏れる。
「まぁ、ライルなら受け入れてくれるはずだ。
もしダメなら俺から話を通す」
『ありがとう。
昼まで持つならメイドに扮して連れ出すね』
「それが一番安全だな。
あと、悠真には“無茶するな”って伝えとけ」
『うん。叔父さんもありがとう』
「気をつけろよ」
『うん。またね』
通信が切れる。
(……悠真、もう少し相談しながら動けよ)
苦笑しながらベッドに倒れ込む。
そのまま──
気づけば、意識は眠りに落ちていた。




