おまけの俺、竜人の父に認められる
「追放されたので……
リュミナを故郷へ連れていくことにしました。
王都にいても危険でしたし……
何より、リュミナ自身が帰りたいと言ったので」
リュミナが俺の方を見て、
嬉しそうに微笑む。
「シュウイチが一緒に来てくれたから、
わたし……怖くなかったよ」
ガルドはその言葉を聞き、
ゆっくりと頷いた。
「……修一。
お前がいなければ、
リュミナは今ここにいなかっただろう」
その声には、
先ほどまでの怒りではなく、
深い感謝が滲んでいた。
俺は姿勢を正し、改めて頭を下げる。
「いえ……
俺はただ、できることをしただけです」
ガルドは静かに言った。
「それでもだ。
娘を救ってくれた恩は、決して忘れん」
リュミナは誇らしげに、俺の方を見て微笑んでいた。
王都での出来事を語り終えると、
ガルド辺境伯は腕を組み、重々しく頷く。
「……修一。
まだ続きがあるのだろう?」
その一言に、俺は息を飲んだ。
(……ここからが本題だ)
覚悟を決め、
“最も言いにくい真実”を口にする。
「……はい。
実は、勇者召喚には“裏”があります」
ガルドの視線が鋭くなる。
リュミナは不安そうに、
俺の袖をぎゅっと握った。
「勇者召喚で一緒に来た仲間──
聖女、聖騎士、賢者。
彼らは……“勇者の生贄”にされる運命なんです」
ガルドの目が大きく見開かれた。
「……生贄、だと?」
声が低く震えている。
怒りを必死に押し殺しているのが分かった。
「はい。これは推測ではありません。
リュミナにルミナス様が降りた時、
直接知らされました」
ガルドは深く息を吸い、ゆっくり吐き出す。
「……リュミナがルミナス様の巫女であることも、知っているのだな」
「はい。その時に知りました。
そして──
勇者の力を増幅させ、カイトリアが受肉するためには、
“勇者を支え、尽くす命”が必要になる。
……そういう仕組みだと聞いています」
リュミナが小さく震えた。
「そんな……ひどい……」
ガルドの拳が強く握られ、
机の端がきしむ。
「王国は……そこまで堕ちたのか……!」
怒りが爆発しそうな気配。
だが、リュミナが袖を引くと、
ガルドはゆっくりと息を吐き、怒りを抑えた。
「……すまん。続けてくれ」
「だから俺は──
彼らを救うために動くつもりです」
ガルドが目を細める。
「救う……?
どうやってだ?」
「ルミナス様の神殿に行けば、
“カイトリアの加護を断ち切る力”を授けられると聞いています」
ガルドはしばらく黙り込んだ。
やがて目を開き、
まっすぐ俺を見据える。
「……修一。
お前は勇者でもないのに、そこまで背負うつもりか?」
俺は迷わず答えた。
「はい。
巻き込まれただけの俺ですが……
同じ世界から来た仲間を見捨てることはできません。
それに──聖騎士は、俺の姪です。
身内は絶対に助けて、元の世界に返したい」
リュミナが俺の手をぎゅっと握る。
「シュウイチ……」
ガルドはその様子を見て、
静かに頷いた。
「……分かった。
お前の覚悟、確かに聞いた」
そして──
重々しい声で続ける。
「修一。お前は“ただの巻き込まれた者”ではない」
一歩、こちらへ歩み寄る。
「娘を救い、仲間を救おうとするその意志──」
ガルドの目が、まっすぐ俺を射抜いた。
「……立派な男だ」
胸の奥が、熱くなる。
ガルドはゆっくりと立ち上がり、
俺に向かって深く頭を下げた。
「娘を救ってくれた恩人であり、
この世界の未来に関わる者でもある。
修一──
お前の旅、わしも全力で支援しよう」
その言葉に、俺は思わず息を呑んだ。
(……この人、本当に“父親”であり、“領主”なんだ)
俺は姿勢を正し、深く頭を下げる。
「ありがとうございます。
必ず……仲間を救います」




