おまけの俺、真実を語る
俺は一度、静かに息を整えた。
そして──
もうひとつの“重大な事実”を口にする。
「……それと、もうひとつ。
俺がこの世界に来た理由についてです」
ガルドの視線が、さらに鋭くなる。
リュミナは不安そうに、
そっと俺の袖をつまんだ。
「俺は……勇者召喚に巻き込まれて、この世界に来ました」
ガルドの目が大きく見開かれる。
「……巻き込まれただと?」
「はい。本来召喚されたのは“勇者たち”だけでした。
俺はその場に居合わせただけで……
気づいたら召喚陣の中にいたんです」
ガルドは腕を組み、低く唸った。
「異世界召喚……
王国がそのような禁術に手を出していたとはな」
「俺自身も、何が起きたのか分からないまま召喚されました。
ただ──」
俺は拳を軽く握りしめる。
「召喚の時、ルミナス様の“眷属”から力を授かりました」
ガルドの表情が、一瞬で変わる。
「……ルミナス様の、眷属だと?」
「はい。召喚陣の中で、声をかけられました。
“この勇者召喚は、ルミナス様の世界を乗っ取った神によるものだ。
世界からルミナス様の力を排除するための儀式でもある。
巻き込まれたついでに、ルミナス様のために働いてくれないか”
──そう言われて、俺は承諾しました」
一瞬、室内の空気が重くなる。
「その代わりに、《遮断の外套》と《虚無視界》という力を授かりました。
《遮断の外套》は気配を遮断し、見つかりにくくなる力。
《虚無視界》は隠されたものや真実を見抜く力です。
……その後、気づいたら王国の城にいました」
ガルドはしばらく沈黙した。
目を閉じ、深く思考に沈む。
リュミナが心配そうに声をかける。
「お父様……?」
やがてガルドはゆっくりと目を開き、
まっすぐ俺を見据えた。
「……修一。
お前は勇者ではないのだな?」
「はい。
俺は“巻き込まれただけ”の一般人です。
ただ、力を授かったおかげで……無力ではありません」
ガルドは大きく息を吐いた。
「……なるほど。
勇者ではないからこそ──
リュミナを守れたのかもしれんな」
その言葉に、リュミナが嬉しそうに俺の手を握る。
「シュウイチはね、すっごく強いんだよ!」
「いや……強いってほどじゃない。
ただ、必死だっただけだよ」
ガルドはそのやり取りを見て、
わずかに口元を緩めた。
「……ふむ。異世界から来た者、か」
そして、静かに頷く。
「……続けてくれ」
その言葉に背中を押され、
俺は王都での出来事を語り始めた。
「リュミナと出会ったのは……王都の裏路地でした」
ガルドの眉がぴくりと動く。
「裏路地……?
まさか、奴隷商人どもか」
「はい。
奴隷商人がリュミナに乱暴しようとしていて……
俺は、止めに入りました」
リュミナが小さく俺の袖を握る。
「シュウイチが来てくれなかったら……
わたし……」
ガルドは拳を強く握りしめ、低く唸った。
「……よくぞ止めてくれた。
あのような連中に娘が触れられていたら……
わしは王都を焼き払っていたかもしれん」
(……この人、本気だな)
内心でそう思いながら、俺は続ける。
「その後、獣人のアジトに匿ってもらいました。
彼らは……本当に親切でした」
「獣人族が……?
王国では迫害されているはずだが」
「はい。だからこそです。
彼らはリュミナを守るために、危険を承知で匿ってくれました」
ガルドは静かに目を閉じ、深く頷く。
「……恩義があるな。
後で必ず礼をせねばならん」
そして──
俺は“あの出来事”を口にした。
「それで……勇者一行に合流したんですが」
一瞬、間を置く。
「勇者から“おまけはいらない”と言われて、追放されました」
空気が凍る。
ガルドの目が鋭く光った。
「……おまけ、だと?」
「はい。
巻き込まれただけの俺は、勇者にとって邪魔だったんでしょう」
ガルドは勢いよく立ち上がりかけた。
「王国の勇者とやらは……!
恩人を“おまけ”呼ばわりするのか……!」
リュミナが慌てて父の袖を引く。
「お父様、落ち着いて……!」
ガルドは深く息を吐き、
なんとか怒りを抑え込んだ。
「……すまん。続けてくれ」




