おまけの俺、神から真実を告げられる
影の中を滑るように進みながら、俺と悠真は森の奥にある朽ちた
見張り小屋へと到着した。
ここが獣人アジトの入口だ。
小屋の前にはロウガが腕を組んで立っている。
「シュウイチ、そいつは誰だ」
「前に言ってた賢者、悠真くんだ。まだ王国側には染まってない。俺が追放されたあと、勇者チームとの連絡役を任せるつもりだ」
ロウガは悠真をじっと見つめ、短く言った。
「……そうか。ついてこい」
アジトの中に入ると、ライルが待っていた。
「夜遅くに悪いな。紹介したい奴がいてな」
悠真が一歩前に出て、丁寧に頭を下げる。
「白石悠真です。賢者と呼ばれていますが……最近は魔術の方が得意になってきました。修一さんの仲間と聞いて来ました。よろしくお願いします」
ライルは口元を緩めた。
「ライルだ。そっちの犬耳はロウガ。……俺たちを見ても態度が変わらないあたり、シュウイチと同じ匂いがするな。いいだろう、仲間として認める」
その時――
「……しゅういち……?」
眠たげな声とともに、目をこすりながらリュミナが姿を見せた。
「シュウイチの気配がする……あ、シュウイチだ!」
次の瞬間、勢いよく飛びついてくる。
「おっと……」
俺は苦笑しながら受け止め、優しく頭を撫でた。
だが――
リュミナの視線が悠真に向いた瞬間、空気が変わった。
『……カイトリアの眷属か?』
「え?」
悠真の身体が固まる。
リュミナはじっと悠真を見つめ、鼻をひくつかせるように言った。
『あの者の匂いがする……だが、完全ではない』
(……匂い? 悠真に“神の気配”があるってことか?)
俺は慌ててフォローに入る。
「悠真くん、この子はリュミナ。街で助けてから一緒にいる。
俺が追放されたら、この子の故郷――ファルドラに連れていく予定だ」
悠真はしゃがみ込み、目線を合わせた。
「リュミナちゃん。僕は悠真です。修一さんと同じ世界から来ました。賢者です」
リュミナはしばらく悠真を見つめ――ぽつりと呟いた。
『賢者か……勇者の餌だな』
「……え?」
場の空気が凍る。
『ほかにも聖女と聖騎士がいるだろう。それらはすべて“餌”。
勇者を強化するための贄だ』
「リュミナ、何を――」
その瞬間だった。
リュミナの瞳が、金色に輝いた。
空気が変わる。
声の響きが、明らかに別のものへと変質する。
『――シュウイチよ』
(……誰だ?)
『我が神殿へ来い。賢者らに刻まれた呪いを断ち切る力……お前なら扱える』
「呪い……?」
悠真が息を呑む。
『呪いを断てば、賢者たちが贄となることはなくなる』
低く、しかし確信に満ちた声が続く。
『勇者が未熟な今はまだ猶予がある。
だが――勇者と賢者たちが一定以上に成長した時』
一瞬、空気が凍りついた。
『賢者たちの力は吸収され、勇者は器となる。
カイトリアがその身を乗っ取り、この世界を掌握するだろう』
背筋に冷たいものが走る。
(……最悪のシナリオじゃないか)
俺は問いかける。
「お前は……誰だ? リュミナじゃないな?」
リュミナの口が、ゆっくりと動いた。
『我はルミナス』
その名に、場の全員が息を呑む。
『我が巫女の身体を借りている』
(ルミナス……この世界の“創世の神”)
『賢者たちを救いたくば、早く我が神殿へ――』
言い終わる前に、リュミナの身体がぐらりと揺れた。
「リュミナ!」
俺は咄嗟に抱きとめる。
リュミナはそのまま力を失い、静かに意識を手放した。
「……大丈夫だ。気を失ってるだけだ」
悠真が震える声で言う。
「修一さん……今の……本物の……?」
俺はリュミナを抱きしめながら、小さく頷いた。
「……ああ。“神”だ」
アジトの空気が、一気に張り詰めた。
「――真実は、あまりにも残酷だった」




