おまけの俺、みんなを連れて出発を決める
その時――
「しゅういち……どう?」
リュミナが着替えて戻ってきた。
白と青を基調にしたワンピース。
角を隠せるフード付きのマント。
(……似合いすぎるだろ)
思わず見とれてしまう。
「おっ、サイズもぴったりだな。
よく似合ってる。俺の見立て通りだ」
リュミナは顔を真っ赤にして、
勢いよく抱きついてきた。
「しゅういち……!」
その反応が可愛すぎて、
自然と手が頭に伸びる。
「その服を着て……
ファルドラに一緒に行こう」
リュミナは目を見開き、
ゆっくりと俺を見上げた。
「……ほんとに?」
「ああ。本当だ」
その瞬間、
リュミナの瞳が潤む。
こぼれそうな涙を隠すように――
俺は少し乱暴に、ぐしゃぐしゃと頭を撫でた。
「しゅういち……ありがとう……!」
その声は、静かに胸へ染み込んでくる。
(絶対に守る。
リュミナも、カレンナさんも……
そして美琴たちも)
俺は静かに決意を固めた。
アジトを後にし、城へ戻る。
部屋に入るなり、
俺はすぐに魔道具を手に取った。
淡い光が灯り、
美琴の声が響く。
『こんばんは、叔父さん。
そっちはどう?』
「こんばんは、美琴。
こっちは色々探ってるところだ。そっちは?」
少し間を置いて、
美琴が答える。
『……ついに遠征が決まったよ。
叔父さん、大丈夫?』
(やっぱり心配してるか)
「美琴たちが出たあとに追放されるらしい。
だからもう城には戻れないな」
『……!』
「でも大丈夫だ。
前に言ってた場所で、かくまってもらえる」
『それは聞いてるけど……
やっぱり心配だよ』
「俺のことより、美琴たちの方が心配だ。
勇者くんはどうなんだ?」
美琴は小さくため息をつく。
『騎士団は付くけど……
神谷は全然訓練してない。
私がフォローして、ひよりを守る』
「ひよりちゃんのことは頼んだぞ。
でも、美琴も無理はするな。命大事に、だ」
『……うん』
その声は、少しだけ震えていた。
「この魔道具は持っていく。
何かあったらすぐ連絡しろ」
『わかった』
「悠真は?」
『悠真くんは……魔術が楽しいみたいで、
ねずみ使って夜な夜な図書館にこもってるって』
(……完全に研究者だな)
「何かわかったことがあったら教えてくれって伝えておいてくれ」
『うん』
しばらく沈黙が流れ――
『……叔父さんも気をつけてね。
一緒に帰るんだから』
「もちろんだ。絶対に全員で帰る」
『うん……またね』
「じゃあな」
光が消え、
部屋に静寂が戻る。
(……いよいよ動く時だな)
胸の奥で、決意が固まっていく。
その時――
カサッ……と、
部屋の隅で小さな音がした。
(……ねずみ?)
影から小さなねずみが現れ、
俺の足元まで駆け寄ってくる。
「なんだ……?」
ねずみはピタリと止まり――
――パンッ!
「うおっ!?」
突然弾けた。
煙の中から、
ひょっこりと現れたのは――
「こんばんは、修一さん」
「悠真……なんだそれは?」
悠真は得意げに胸を張る。
「図書館の魔術書、すごいですよ。
いろいろ応用できて、面白いんです」
(……完全に使いこなしてるな)
「だいぶ仕上がってるな。
これなら美琴たちも任せられる」
「えっ?」
悠真は目を丸くする。
俺はゆっくりと言った。
「今の悠真なら大丈夫だ。自信を持て」
悠真は少し照れながら、
それでもしっかりと頷いた。
「……頑張ってみます」
(本当に、伸びるなこの子は)
「悠真に、俺の仲間を紹介したい。
獣人だけど……いいやつらだ」
悠真の目が輝く。
「会ってみたいです。
ここにいたら戦うことになりますけど……
正直、戦いたくないです」
「安心しろ。いい連中だ」
「今から行けるか?」
「行けます」
「よし、行くぞ」
俺は悠真の肩に手を置き、
影魔術を発動する。
――すっ。
二人の身体が影に沈み、
アジトへ続く“影道”を滑るように進んでいく。
(悠真……)
(お前も、もう立派な仲間だ)
影の中で、
俺は静かにそう思った。
「――俺が、連れて帰る」




