おまけの俺、賢者を影に連れていく
城へ戻った俺は、
部屋に入るなり魔道具を起動した。
淡い光が灯り――
すぐに美琴の声が響く。
『叔父さん、こんばんは』
続いて、ひよりと悠真。
『修一さん、こんばんは』
『こんばんは、修一さん』
(よし、全員いるな)
「訓練の調子はどうだ?」
美琴が少し誇らしげに言う。
『魔術をやり始めてから……なんか、魔法まで上達した気がするんだよね』
ひよりも続く。
『私も……回復魔法の精度が上がった気がします』
悠真は、明らかに興奮していた。
『僕は……4元素魔術、全部使えるようになりました』
『魔法よりも“理屈”がある分、理解しやすいです』
(……やっぱりこいつは別格だな)
「無理はするなよ」
「魔術は便利だが、消耗も大きい」
『はい』
俺は少し声を落とす。
「悠真……一つ提案がある」
『僕に……ですか?』
「図書館に行かないか?」
一瞬の沈黙。
そして――
『……行きます』
即答だった。
美琴とひよりが慌てる。
『え、私も行きたい!』
『わ、私も……!』
「気持ちはわかる」
「でも……王の寝室を越える必要がある」
「危険すぎる」
二人は黙り込む。
そして、静かに言った。
『……わかった。待ってる』
『悠真くん、気をつけてね』
「夜が更けたら迎えに行く」
光が消え、部屋に静寂が戻る。
(……準備はできたな)
◆
深夜。
城は完全に眠っていた。
俺は《遮断の外套》を発動し、
悠真の部屋へ向かう。
扉を軽く叩く。
「修一さん……?」
「行くぞ」
悠真は緊張した面持ちで頷いた。
「手を出せ」
差し出された手を握り――
影に意識を沈める。
――すっ。
二人の身体が影に溶けた。
(……問題なし)
だが。
「……っ」
悠真が小さく息を詰まらせる。
「大丈夫か?」
「は、はい……少し息苦しいですが……大丈夫です」
(リュミナは平気だったのに……)
(やっぱり種族差か)
影の中を滑るように進む。
そして――
隠し図書館の影から浮かび上がる。
悠真が息を呑んだ。
「……ここが……」
「王が隠した禁書庫だ」
「魔術、世界の成り立ち、神の裏側……全部ここにある」
悠真は震える手で本棚に触れる。
「……こんな場所が……本当に……」
「時間は限られてる」
「魔術体系、魔法との差、神の力の構造――」
「お前なら理解できるはずだ」
悠真は強く頷いた。
「……やります」
「任せてください」
「二時間ほど外を探る」
「何かあればすぐ連絡しろ」
悠真は魔道具を握る。
「はい」
「頼んだ」
俺は再び影に沈んだ。
◆
城の闇の中を滑る。
(カレンナ……)
(黒い神官……)
(どこにいる)
影が揺れる。
俺の身体を包み込み――
王城のさらに奥へと潜っていく。
(……必ず見つける)
(全部だ)
「影の中でしか進めない戦いが始まる」




