おまけの俺、少女の正体を知る
話を終えると、
ライルは腕を組んで低く唸った。
「……やはり、王家は乗っ取られているな」
エルドが静かに続ける。
「黒幕は……カイトリア神の神官だろう」
「神官?」
エルドは頷いた。
「この街にも教会があったが……最近、ルミナス神殿が追い出された」
「そのまま、カイトリア側が乗っ取ったらしい」
「乗っ取った……?」
「黒ずくめの服に、指先の出た手袋をした若い男だ」
「妙に不気味でな。街の連中も近づきたがらない」
(黒ずくめ……手袋……)
脳裏に、あの光景がよぎる。
(召喚の時、王女の横にいたやつ……)
確信に変わる。
(あいつか)
「城に戻ったら、そいつを探る」
ライルが頷いた。
「気をつけろよ」
「“眷属”の可能性が高い」
(……だろうな)
◆
話が一区切りついたところで、
リュミナが俺の袖を引いた。
「ねぇ、シュウイチ」
「さっきの影のやつ……見せて?」
(影魔術か)
「いいぞ。見てろ」
足元の影に意識を落とす。
影が揺れ――
身体が沈む。
そして次の瞬間。
部屋の隅の影から、ひょいと現れる。
「わぁ……!」
リュミナの目が輝いた。
「すごい! 影の中に入ったの?」
「まあ、そんなところだな」
リュミナは勢いよく手を握ってきた。
「私も……入ってみたい!」
(……できるのか?)
少し迷う。
だが――
「やってみるか」
手を繋いだまま、影へ沈む。
――すっ。
(……入れた!?)
二人とも、影の中にいた。
静寂。
外の気配が、遠い。
「……すごい」
リュミナが小さく呟く。
「ここ、落ち着く……」
(適性あるのか……?)
影から出る。
リュミナは満面の笑みだった。
「また一緒に入ろうね!」
「お、おう……」
(これで確定だな)
影魔術は――
“他人も連れていける”。
(悠真も、いける)
図書館に連れて行けば、
解析は一気に進む。
(次は悠真だな)
◆
アジトを後にし、
森の出口へ向かう。
その時だった。
「シュウイチ、待って!」
リュミナが袖を掴む。
「どうした?」
「……ちょっと、こっち来て」
手を引かれるまま、森の奥へ。
静かな場所。
木漏れ日が差し込む。
リュミナは足を止めた。
そして――
小さく息を吸う。
「シュウイチ……」
「私、隠してたことがあるの」
(……隠し事?)
胸の前で手を握りしめる。
少し震えている。
「私の本当の名前は――」
一瞬、間を置く。
「リュミナフィア=ドラグニア」
「ファルドラ自治連邦国……ドラグニア辺境領の領主の娘」
(……は?)
思考が止まる。
(領主の娘……?)
(ってことは……)
「……お姫様?」
思わず口に出た。
リュミナは慌てて首を振る。
「ち、違うよ!」
「やめて……“お姫様”とか呼ばないで」
「シュウイチにそう呼ばれると……」
一瞬、言葉が詰まる。
「……さみしくなるから」
その笑顔は――
いつもの無邪気なものじゃなかった。
少しだけ、弱い。
少しだけ、怖がっている。
(……俺が守る相手は、ただの少女じゃなかった)




