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おまけの俺、影で潜入を始める

影が揺れる。


足元から伸びた闇が、

ゆっくりと俺の身体を包み込んだ。


(影魔術……)

(これは、当たりだな)


視界が沈む。

音が遠のく。


そのまま――

影の中へと溶け込む。


次の瞬間には、

自室の影から静かに浮かび上がっていた。


(……使える)


気配はほぼ消失。

移動も自由。


(これなら、城の中枢にも入り込める)


小さく息を吐く。


(よし……今日はここまでだ)



翌日。


俺は《遮断の外套》を発動しながら、

森の奥へと向かっていた。


目指すのは、獣人たちのアジト。


(影魔術……まだ慣れてないが)

(気配を消すには十分すぎる)


森を抜け、

隠された入口へ。


静かに扉を開けた――その瞬間。


「しゅういちっ!」


小さな影が、一直線に飛び込んできた。


「うおっ!?」


受け止める。

リュミナだった。


「おはよう、リュミナ。よく分かったな」


リュミナは満面の笑みで、

尻尾をぱたぱた揺らす。


「うん! シュウイチが来たってすぐ分かったよ!」

「……遮断してたんだけどな」

「でも見えたもん。シュウイチが入ってくるところ」


(……マジかよ)


《遮断の外套》すら無効。


(獣人の感覚、バグってるな……)


思わず苦笑する。


(……まあ、いいか)


リュミナを抱き上げたまま、奥へ進む。



奥では、ライルとエルドが待っていた。


「来たか、シュウイチ」

「さて、続報を聞こうか」


ライルが腕を組む。

俺は一つ息を整えた。


「……結論から言う」

「王城は、かなりヤバい」


空気が変わる。


「まず一つ目――王と妃を見つけた」

「塔の最上階だ。全員、眠らされている」

「しかも……神の呪いだ」


ライルの目が細くなる。


「神の呪い? 断言できるのか」

「スキルで見た」

「ルミナス様由来の力だ」

「だから分かる。あれは別の神のものだ」

「……なるほどな」

「状態としては“時間停止”に近い」

「時間が進まない限り、起きない」


エルドが低く呟く。


「……完全に封じられてるってわけか」


俺は頷く。


「次に――王女アリア」

「……あいつ、多分操られてる」


ライルの眉がぴくりと動いた。


「操られてる?」

「言動が不自然すぎる」

「それに、黒衣の神官が常に張り付いてる」

「あれは“監視”だ」

「……あの女、昔は違った」


ライルが小さく吐き捨てる。

俺は続ける。


「それと――王族の子供」

「第2王女イリア、第3王女、王子」

「全員、行方不明扱いだ」

「……崩壊寸前だな」


空気が重くなる。


「で、ここからが本題だ」


ライルが視線を上げる。

俺は静かに言った。


「“魔法”と“魔術”は別物だ」

「魔法は神の加護」

「魔術は、世界の理を使う技術」

「……神に依存しない力、か」

「そうだ」

「つまり、神が敵でも使える」


沈黙。

ライルが小さく笑う。


「そうか、あれはそういう力だったのか」


俺はさらに踏み込む。


「王は、それに気づいてた」

「カイトリア神の危険性を、前からな」


ライルの目が見開かれる。


「王が……?」

「証拠がなくて動けなかった」

「神への反逆になるからな」

「だから、知識だけを残した」

「隠し図書館だ」

「……そんなものが」

「そこに、全部あった」


そして――


「影魔術も、そこで手に入れた」


ライルが息を吐く。


「……修一」

「お前、本当にとんでもないとこに踏み込んだな」

「まあな」


肩をすくめる。


「でも、やるしかないだろ」

「美琴たちを助けるために」


一瞬の沈黙。


そして――

ライルが笑った。


「それで十分だ」

「理由なんて、それでいい」


軽く肩を叩かれる。


「お前、いい奴だな」


(……なんだよ、それ)


少し照れくさくなる。


だが――


(悪くない)


確かに、そう思えた。


「――次は、もっと奥まで潜る」


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