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おまけの俺、影魔術に目覚める

魔術の基礎本を読み終えた俺は、

美琴の部屋を訪れた。


「美琴。この本を預かってくれ」


差し出したのは、魔術の基礎書。


「ひよりちゃんと悠真くんの訓練は、ここでまとめてやってほしい」

「わかった。叔父さん、任せて」


迷いのない返事。

頼もしい。


「修一さん、私も頑張ります」


ひよりが一歩前に出る。


「僕も……魔術、理解したいです」


悠真も続いた。


(……やっぱり、この三人は強いな)


飲み込みが早い。

覚悟もある。


「無理はするなよ」


それだけ言い残し、俺は部屋を後にした。


向かう先は――

隠し図書館。



図書館は、相変わらず静かだった。

古い紙の匂い。

閉ざされた空気。


(魔術の基礎は……試してみたが)


手のひらに熱を集める。

そこまではできる。


だが――


(火、水、風、土……)

(どうやっても発動しない)


理屈は分かる。

だが、形にならない。


(向いてないのか……?)


その時だった。


視界の端に、“違和感”。

黒い背表紙。

他の本と違う。

まるで――影が染みついたような黒。


(……なんだ、これ)


手に取る。


《影魔術──闇に潜む者の技》


(影魔術?)


開いた瞬間――


(っ!?)


頭の中に、黒い情報が流れ込む。

霧のような、濃い何か。

視界が揺れる。

だが――


(……嫌じゃない)


むしろ。


(しっくりくる)


理解が、染み込む。


影に潜む。

影と影を繋ぐ。

影で気配を断つ。

影を操る。


(……なんだこれ)

(完全に俺向きじゃねえか)


思わず苦笑する。


(斥候から逃げられない運命か)


だが――

ページをめくるほどに、

確信に変わる。


(これなら、いける)


足元の影を見る。

意識を落とす。

影が――揺れた。


(……動いた!?)


さらに意識を沈める。

影が広がる。

絡みつく。


そして――

沈む。

自分の身体が、影へと溶けた。


(……これ、すごいな)


音が遠くなる。

気配が消える。

世界から切り離された感覚。


そして――

別の影から、浮かび上がる。


(移動……できるのか)


心臓が高鳴る。


(これなら……)


王城の奥。

誰にも見つからずに入れる。


王族の部屋。

隠された通路。

アリアの行動。

神の眷属の気配。


(全部、探れる)


拳を握る。


(使える……いや)

(これは武器だ)


本を閉じる。

だが、思考は止まらない。


(悠真を……ここに連れてくるべきか)


悠真は賢者。

魔法を使える。

理解力もある。


(魔術と魔法、両方扱えたら……)


カイトリア神の支配から、

抜け出せる可能性がある。

ひよりも、美琴も。

すでに魔術を使い始めている。


(あとは、繋げるだけだ)


だが――


(ここは“禁書庫”だ)


見つかれば、終わり。


(慎重にやるしかない)


影魔術の本を抱える。

そして、決意する。


(美琴たちは魔術を鍛える)

(俺は影で潜る)

(悠真をここに連れてくる)

(そして――)

(全部、暴く)


静かに、図書館を後にした。


「これで、誰にも止められない」


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