おまけの俺、王女の涙を見る
(この呪い……カイトリア神の力だ)
(もしくは、その眷属の仕業)
確信が走る。
(やっぱり……この国を動かしてるのは“王家”じゃない)
王は眠り。
妃も眠る。
玉座は――
すでに空席だ。
(じゃあ……今の王女アリアは?)
(本物か?)
(それとも――操られている?)
思考が深まる。
その時。
――気配。
(……誰か来る!?)
咄嗟に《遮断の外套》を強める。
影へ沈む。
足音。
コツ……コツ……コツ……
静かな部屋に、やけに響く。
(……まずい)
この部屋に入ってくる。
見つかれば――終わりだ。
扉が、ゆっくりと開いた。
現れたのは――
黒いローブの人物。
フードで顔を隠し、
闇そのもののような存在感。
(……この気配、どこかで……)
ローブの人物は、
ゆっくりと寝台へ歩み寄る。
そして――
立ち止まる。
「…………」
言葉はない。
ただ、四人を見つめている。
その肩が、わずかに震えた。
(……泣いてる?)
袖で目元を押さえる。
その一瞬。
フードの隙間から――
金色の髪がこぼれた。
(……アリア!?)
間違いない。
第1王女、アリア。
彼女は寝台に手を伸ばす。
そっと、触れる。
「……変わりない、ですね……」
その声は、
祈るように弱かった。
(……見に来てる?)
(じゃあ……眠らせたのはアリアじゃない?)
だが――
アリアは、何も言わない。
ただ、順に顔を見つめる。
唇を噛みしめながら。
涙が、一筋落ちた。
(……本気で悲しんでる)
《虚無視界》が反応する。
アリアの周囲に――
薄い黄色の靄。
(……これも神の力か)
(本人の意思じゃない)
(縛られてる……)
アリアは涙を拭う。
そして、小さく頭を下げた。
「……また来ます」
それだけ言って、
踵を返す。
その背中は――
王女ではなかった。
ただの、少女だった。
迷子のような。
弱い背中。
扉が閉まる。
静寂。
(……整理する)
王と妃は眠らされている。
神の呪いで。
アリアはそれを知っている。
だが、止められない。
本人もまた――
神の力に縛られている。
残りの王族は不明。
そして――
(犯人は、まだ城の中にいる)
全てが繋がる。
(美琴たちは、戦争に使われる)
(リュミナも危ない)
拳を握る。
(……逃がす)
(全員だ)
アリアが去った後。
俺はしばらく、その場を動けなかった。
(……敵じゃないのかもしれない)
胸の奥に、重いものが沈む。
(でも、放置すれば――)
(全員死ぬ)
思考がまとまらない。
(……もっと調べる)
(全部、暴く)
「……救えるのか、あいつも」
俺は静かにその場を離れた。




