おまけの俺、王族の異常を発見する
その日の夜。
俺は魔道具を起動した。
「美琴、聞こえるか?」
『聞こえるよ、叔父さん』
一呼吸置く。
「今日、城の中を調べた」
「結論から言う」
「この国は――完全に侵略側だ」
沈黙。
『……やっぱり』
美琴の声が小さく震える。
「勇者たちは戦争の道具にされる」
「戦う相手は“邪神”じゃない」
「普通の獣人だ」
『そんな……』
「だから、逃げる準備をする」
「俺が合図したら、すぐ動け」
『……わかった』
別の声が入る。
『修一さん……私、怖いです』
ひよりだった。
「怖くていい」
「怖いと思えるなら、まだ間に合う」
「俺が守る」
短く、はっきり言う。
『……はい』
『僕も準備しておきます』
悠真の声。
「頼もしいな」
魔道具を握りしめる。
(全員、連れて逃げる)
(絶対にだ)
魔道具の光が消える。
静寂。
巻き込まれたはずの人生は――
もう、完全に変わっていた。
◆
夜の王城。
昼とは別世界だった。
静まり返った廊下。
揺れる灯り。
長く伸びる影。
(……今なら動ける)
《遮断の外套》を発動。
気配を消し、歩き出す。
(この国の“本当”を知らないと、逃げられない)
中央階段へ向かう。
(……誰もいない?)
本来なら衛兵が立つ場所。
だが――
一人もいない。
(おかしい)
嫌な予感が背中をなぞる。
そのまま奥へ進む。
やがて――
異様に豪華な階段が現れた。
金の装飾。
赤い絨毯。
螺旋階段。
(塔か……)
“特別な場所”だと一目で分かる。
足音を殺し、上る。
◆
最上階。
重厚な扉が一つ。
(……ここだな)
だが――
ここにも衛兵はいない。
(不自然すぎる)
《虚無視界》を発動。
扉の向こうを覗く。
――その瞬間。
(……なんだ、これ)
豪華な寝室。
中央に並ぶ四つの寝台。
そこにいたのは――
大人が四人。
(……王と、妃か?)
だが様子がおかしい。
(動いてない)
呼吸の気配がない。
まるで――
時間が止まっているような静止。
(……生きてるのか?)
扉を開ける。
冷たい空気。
“死”に近い静けさ。
ゆっくり近づく。
(……いや、違う)
完全な死ではない。
四人の身体を覆う――
薄い光の膜。
(繭……?)
触れずとも分かる。
(これは……)
(神の呪いか)
ダルガスの力が反応する。
(しかも、かなり強力だ)
時間を止める呪い。
王族そのものを封じるような――
異常な力。
(じゃあ……)
(今、表に出てる王女は?)
(本物か?)
寝台には四人だけ。
他の王女。
王子。
どこにもいない。
(入れ替わってる?)
(それとも……)
(どこかに閉じ込められてる?)
背筋が冷える。
その時――
無意識に、光の膜へ触れた。
(……っ!)
視界が歪む。
黒い光が、脳裏を焼いた。




